夏休み

第15話 海に行きたい

ついに夏休みが始まった。

終業式を終えて学校から帰ると俺の家の前に数人が溜まっている。


なんでなん?


花音と優とさやが俺の家の前に立っている。


「お、やっと帰ってきたか」


「「おかえりー」」


「…ただいま」


元気いっぱい挨拶してくる花音とさやに

ちょっと呆れながらも返事する。


「なんで、お前らうちの家にいるの?」


「まぁまぁ、早く鍵開けてくれよ。暑くてかなわん」


優は花音の手持ち扇風機を持って暑そうにしている。


くっそこいつら図々しい。


鍵を開けると遠慮なしに俺よりも先に3人とも入っていく。


はぁ…何回も言うけどここ俺の家なんですけど。


暑くなった部屋にエアコンを付ける。


「「「おー涼しいー」」」


3人はエアコンの前を陣取りエアコンの冷たい風を全力で受けに行っている。


めっちゃ涼んでるな。


「それで、何しに来たん?」


3人も落ち着いてきたところで声をかける。


「夏休み一緒にどっかでかけよーぜ」


ハッと思い出したように、優が答えた。


「それで、どこ出かけよーかって考えるためにここに来たってわけ」


それに続いて花音が答えた。


それで、なんで俺の家来たんだよ。


「お出かけ楽しみ」


さやも結構楽しみそうにしてるらしい。


「そんで、どこいくの?」


自然と会議が始まった。


「やっぱ、海行きたいよねー」


まぁ、夏と言えばだよな。


「それは分かるけど日帰りだとキツイよなー」


俺らには足がない。車の免許ほしいな。


「でも、泊まりだとお金がねー」


俺は行くとは一言も言ってないのに花音と優との間でどんどん話は進んでいく。


いや、行くけどさ。


「お金な…」


高校生的には1番の問題だ。


ピンポーン


みんなで悩んでいるとふと家のチャイムをが鳴った。


「さやちゃーんーいるー?」


大人の女の人の声でさやが呼ばれる。


誰かと思ったら雫さんか。


さやは、玄関へトテトテと歩いていき玄関を開ける。


「雫さん。どーしたの」


さやは不思議そうに聞くと面白そうに答えた。


「もう、普通に周くんの家にいるんだね」


「むーだめ?」


「いや、いいと思うよ!大切な人が出来たみたいで」


いつもより嬉しいそうな雫さん。


「ん、それでどーしたの?」


少し照れながら聞く。


「んー?ひまだったんだよー仕事終わったしー」


そう言って普通に上がってきた。


「お、今日は他にも人がいるんだねー」


珍しものを見るように優と花音の事をじーっと見る。


「「こんにちはー」」


花音と優は元気いっぱい挨拶する


「えっと、私は成瀬雫、さやちゃんの保護者でーす」


雫さんの自己紹介に続き優と花音も自己紹介をした。


「若いですね。おいくつなんですかー?」


優、それはもうナンパする人の顔なのよ。


「ちょ、ちょっと優!女性に年齢聞くのは失礼だよ!」


慌てた花音が優を止める。


「いーよいーよ。特別にお姉さんの年齢を教えてあげよう」


お姉さんって歳でもないだろうに、見た目は別として…ゾワゾワ


なんか、雫さんに睨まれた気がする…こわ。


「え、いいんですか?」


自分で聞いておきながら驚く優。


「私はね…100、いや200?あれ?いくつだっけ私」


知らないですけど…


「またまたー教えたくないんじゃないですかー。ねー?」


冗談だと思って、俺に振ってくる優。


「まじ」


「「え?」」


2人がめっちゃ驚いてる。


「この人吸血鬼だから」


雫さんの事を指さして伝える。


「きゆ、吸血鬼ってそんなに長寿なんだ」


「まぁ、簡単には死なないかなー」


楽しそうにいつもは隠してる吸血鬼の牙を見せてくる。


うんうんとさやも頷いてる。

経験者は語るってやつか。


「それで?みんな集まって何してたの?お姉さんも混ぜてよー」


「お姉さんって歳じゃ…」


優が言いかけた瞬間、見事に花音にカットされる。


カットというか頭叩かれてる。


「夏休み海行きたいなーって」


頭を擦りながら優も話す。


「でも、お金かかるから泊まりだときついなーって」


「え、じゃあうちの別荘くる?伊豆にあるんだけど、海まで徒歩3分!」


雫さんにこのこと相談した所で…って、え?


「「「雫さんまじ、パネェっす」」」


「伊達に、100年以上生きてないからね!ふふ、みんな来ーい」


と、言うことで3泊4日で海行くことになった。


「食事も私が奢って上げるから」


羽振り良すぎません?まぁ、甘えとこう。


「「「ありがとうございます!」」」


「雫さん。ありがと」


「任せなさい!最高の思い出にしてあげるわ!」


なんというか、雫さんすごいな。

なんでも他にも別荘持ってるらしい。

もしかしたら100.200歳どころじゃないかもしれない。


「ほんとに、いいんですか?」


高揚感が抜けてから急に申し訳無くなってくる。


「大丈夫よ、電話だけあれば仕事できるし」


かっけー


速攻で決まった伊豆の旅は3日後の昼に出発する予定だ。


その後俺らは、別れ各々、明後日の準備をすることにした。


準備が終わるとさやがうちにきた。

うしろには、雫さんもてへぺろみたいな顔してる。


その顔に少しイラッとくるも別荘の事を思い出すとそんな顔してられない。


「ごめんねー。2人の愛の巣を邪魔しちゃって」


「別に愛の巣じゃないです。」


「ん、別に愛の巣じゃない」


この人、いつものことながらテンションたっかい。


「別荘ってどんなとこなんですか?」


結構気になる所だったので聞いてみることにした。


「んーっとね。伊豆の別荘はね。二階建てで結構広いよ。あ、あとね。いろいろ倉庫にはいってるかな、サーフィンとかボディーボードとか色々チャレンジしてみたんだけどうまくできなかったんだよねー」


倉庫あるんかい。別荘がどんなとこか詳しくは分からなかったが結構面白そう。


「周はサーフィン出来る?」


唐突に質問してくる。


「え、ああできるよ。なんで?」


「すごい」


めっちゃ目キラキラしてるし。そこまで褒められると照れる。


「たしか、優もできるはずだよ」


確かできるって言ってた気がする。


「むー周の見たい」


なんか、不満そう。


「お、おう」


「ふーん。見せつけてくれるね」


ニヤニヤしながらこっちを見てくる。


「お姉さんもいれてほしいなぁ」


雫さんがおれの腕に抱きついてくる。

さやにはない柔らかい物体に俺の腕が挟まれる。


「むー周、鼻が伸びてる」


そういわれてとっさにもう片方の手で顔を隠す。


「周くん。何気に君もうぶだねー」


楽しそうなに見てくる雫さんから手を手を引き抜こうとする。


「と、とりあえず離してください」


「もーしかたないなー」


気づいたら今度は俺の腕をさやが抱きついてくる。

雫さんみたいにはさみこんでは来ないもののちょっとやらかい。

それが逆に意識させられる。


「ちょ、さや離せって」


って何考えてるんだ。俺は


「い、や、だ」


クツクツと雫さんは笑っている。

どーやら変にさやに火をつけちゃったらしい。


「え、っと。夕飯つくるから離して?」


「まだそんな時間じゃない」


時計を見るも17時。そりゃそーだ。


「なんか、二人の世界に入り始めてるみたいだし、私、買い物行ってくるね」


「いや、そんなことは「いってらっしゃい」


なんか割りこまれた。


そそくさと雫さんは出ていく。


「えっとー成瀬さん?」


下を向いてるせいで顔色がわからん。


「血」


ボソッとさやが呟いた。


「なんて?」


上手く聞き取れなかったので聞き返す。


「周の血飲ませて」


さっきとは違ってハッキリとした言葉で言ってくる。


「ア、ハイ」


なんか、拒否したらダメな気がした。


がぶぅ


ッツ!


「痛い。さやさん!?ちょっと痛いんですけど!?」


今までとは違った純粋な痛みが走る。


「さっきの罰」


許さんとばかりに歯を食い込ませてくる。


ちゅぅーー


「めっちゃ吸うじゃん」


流石に力が抜けたのかただ血が抜けていく感覚。


さすがに頭くらくらしてきた。


「あの、そろそろ。ね?」


倒れるよ?


「妥協」


「ありがと」


俺の首元からさやの牙が離される。

立ち上がろうとするも力が入らず。前のさやの方へ倒れる。


「ごめん。ちょっと力はいらない」


あーボーッとする。


「ん、大丈夫」


なし崩しに膝枕の形になる。

やば、至福。膝枕って思ってたよりいいな。なんで膝枕されに来るか分かった気がする。


「周大丈夫?顔青い」


うん。それは君のせい。


「大丈夫…だと思う」


「ごめん。血吸いすぎた」


それなりに反省してるらしい。


「いいって。俺も悪かった。ちょっと寝ていい?」


血が足りないせいか、強い眠気に襲われる。


「ん。大丈夫。おやすみ」


「ああ、おやすm」


声を返そうとするも口も動かない。

抗うことも出来ずそのまま意識を手放した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る