第14話 ありのまま今起こったことを話すぜ

「夕飯みんなで食べない?」


ショッピング帰り最寄りの駅に着いた頃にふと花音が提案した。


「俺はいいけど、さやが「周が行くなら私も行く」


従順かな?


「じゃあ、いこー!」


「あれ?俺の意見は?」


しれっと無視された優をつれて歩き出す。


「無視かよぉー」


「優も来るんだろ?」


「まあ、そーだけどさー」


知ってた。


俺らは最寄り近くのファミレスにきた。

安くてうまい。学生の財布にやさしいお店。ほら絵が飾ってある、あそこ。


席について品定めをする。

といっても。俺は、ミラノ風ドリア。安定。

ただこれだけだと高校生男子には足りない。


「ん。後はステーキにしよ」


「俺はハンバーグ。飯大盛りー」


「花音はスパゲッティ!スパゲッティ!」


花音のテンションがおかしい。


「周。どれが美味しい?」


隣に座るさやがメニューをこっちに向けてくる。


「これとかどー?ピザ」


メニューのピザの中でも王道の物を指さす。


「ん、じゃあコレにする」


決めるの早くない?


「いや、他にも色々あるよ?」


「大丈夫。ピザ食べたい」


本当にいいのだろうか。


ピンポーン


チャイムを鳴らす。

各自、自分の食べたいものと人数分のドリンクバーを頼んだ。


注文がおわり、ドリンクバーに飲み物を取りに行く。


優が色んな飲み物を混ぜて帰ってきたころ。

全員の料理が来たので食べ始める。


さやがピザの食べ方に困っていたので切る。どーやらピザは初めてらしい。

チーズを伸ばしながら美味しそうに楽しそうに食べている。

やば。めっちゃ可愛い。勧めてよかった。


前に座る2人はポケーっとしてる。


「おーい、おーい」


2人の前手を振る。


「は!今花音、天使を見てた気がする」


「あ、ありのまま今起こったことを話すぜ」


わーなんか始まったよ。


「俺はステーキを食べてたと思ったらいつの間にか天使が降りてきたんだ

 な、何をいってるのか、わからねーと思うが

 俺も何が起きたのか、わからなかった。

 頭がどうにかなりそうだった。

 かわいいとか美しいとか

 そんなチャチなもんじゃ断じてねえ

 もっと神々しいものの片鱗を味わったぜ」


「なげーよ。ばか」


この間もパクパクとさやは、食べている。


こいつ、食べることに全く興味なかったのに変わったなー。


最後の一切れを食べ終わるとさやがこっちを向いた。


「美味しかった。周の方美味しいけど」


口の周りについた。ケチャップを拭いてやる。

どうやら、さやの胃袋を完全に掴んだらしい。

あれ?もしかしてだけど。料理じゃなくて血の方?はは、まさかね…


お会計を済ませて優と花音と別れる。


「今日は楽しかったよーありがとね2人とも」


「俺も楽しかったよ」


「ん。楽しかった」


「周が奢ってくれば完璧だったのにな」


会計の時チラチラこっち見てたのはそれか。


「少なくともお前には奢らねーよ」


「ちぇーじゃあな」


「バイバーイ」


俺とさやはバイクを取りに駐輪場に向かう。


「今日は楽しめたか?」


隣を歩くさやに聞く。


「ん。楽しかった。また行きたい」


さやは満面の笑みで言った。


「そーだな、また行こ」


「ん」


4人で出かけるのも悪くない。


駐輪場につきバイクにとめてあったヘルメットを渡す。


ヘルメットをかぶるとさやが上を向いてくるので

ストラップをつける。ついでにインカムの電源を入れる。


「あー聞こえる?」


「ん。問題ない」


感度良好問題なしと。


バイクにまたがりエンジンをつけ、後ろにのるさやに一声かけてから発進する。大通りに出て家へと向かう。


「大丈夫?」


「ん、大丈夫」


「荷物落とすなよ?」


帰りは行きと違って買った荷物を持ってるせいで少し大変。


「ん」


曲がる時は毎回後ろから「おー」だとか「わー」だとか聞こえてきて楽しい。

少し遠回りして曲がり道を増やしたのは秘密だ。


マンションに着きバイクを駐車場に止める。


「はい、お疲れ様」


さやの手を取ってバイクから下ろす。


スポーツは2人乗り向いてないし実家のアメリカン引っ張り出すかね。


さやとは家の前で別れる。


「ちょっと待って。血飲みたい」


ドアに鍵を刺そうとした時さやが袖を掴んできた。


「唐突だな。どしたの?」


いきなりで驚いた俺は聞き返す。


「最近飲んでないから」


そーだっけ?まー言われてみればそーかも。


まあ、いっか。


腕を広げて待ってるとギューっと抱きしめてくるので俺も抱き返す。


カプッ


周の首筋に歯を立てて血を吸っていく。


わーめっちゃ吸われるー。


ぷはぁ


「満足?」


「ん。大満足」


血を飲んださやはほんのり頬を染める。


ポンポンとさやの頭に手を置く。


ジョージ落ち着けジョージ。


「また明日」


「ああ、おやすみ」


煩悩と戦いながら答える。


「おやすみ」


お互い自分の家のドアを開けて入る。


はあ、ジョージえらいぞー。よく耐えた。



ー次の日ー


朝学校へ行くと教室がギャーギャー騒いでいる。

教室に入るとさやが女子たちに質問攻めをうけてる。


自分の席に座ると優が寄ってくる。


「おはよ、どーしたのコレ?」


さやの方を指す。


さやの方にいた女子がこっちに来た。


「私が説明しよう」


彼女はうちの学級委員であり成瀬教信者(自称)の1員だそうだ。


何?成瀬教?怖いな。


唐突に委員長が語り出す。


「昨日、私はスーパーからの帰りふと神々しさを感じて近くにあった。駐輪場を見るとさや様が男の人とバイクに乗るとこだったんだよ」


ミーラーレーテーター

凄く変な汗が出てきた。


「しかも、しかも、めっちゃイケメンでね。その後、バイクでビューンって」


いや語彙力よ。

認識されてない悲しさとバレてない喜び?で凄く不思議な気分。


「そ、そうなんだーあははー」


必死に作り笑顔を浮かべる。


「その男の人誰だか知らない?」


知ってる。知ってまーす。

優くん?楽しそうな顔してないで?


「知らないデス」


「やっぱ、バイクってことは年上かなー?」


クラスの誰かが言った。


いいえ、同い年です。


「成瀬さんなら芸能人って可能性も…」


いえいえただの一般人ですよ。なんなら前にいるよ。


「いや、さやのお兄さんの可能性?」


俺でーす。お兄さんじゃないでーす。


「それは違う」


流石にさやが否定に入った。


「まあ、そーだよねー」


「で?さやちゃん!誰なの?」


クラスの注目がさやに集まる。


「秘密」


まぁ、それ以外言えないわな。


「えー」


その後もさやは色々質問を受けた。まあ、なんとか受け流してたが、終始笑いを耐えていた優と花音が凄くウザかった。

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