第10話 雨の日(sideさや)

ーside さやー


朝は晴れていたのに放課後になると雨が降り出した。


「むー傘持ってきてないのに…」


他の生徒が帰っていく中どーするか悩む。


「ん。走って帰る」


バックの中に濡れると困るものを入れて雨の中走り出す。

雨足はどんどん強くなってきた。

もうすでに服もびちょびちょだった。


交差点を渡ろうとした時。信号が赤に変わる。



ついてない。



唐突に雨がやんだ。上を見上げると傘がある。


「おい、何やってんだ?」


傘の主は周だった。


「傘忘れた」


「言ってくれれば良かったのに」


やっぱり周は優しい


「迷惑かけたくない」


なんだか周が苦笑いしている。なんでだろ。


「別に迷惑なんかじゃねーよ。風邪引かれた方が困るっての」


いつも周に甘えてばっかりな気がする。


「ん、じゃあ入れて」


これって相合傘だよね


ちょっとドキドキする。


周がさっきからチラチラ見てくる。


「そんなにジロジロ見られると恥ずかしい」


「え、あ、ごめん」


ふふ、周の顔赤くなってる。


「ん」


そんなことを言ってる間に家についた。

濡れた服が体温をどんどんと奪っていく。


「傘ありがと」


「ああ、風邪引かないようにさっさと風呂入っちゃえよ」


「ん、そーする」


自分の家の鍵を開けて入る。


「寒い」


冷えた体を温めようとお風呂の準備をする。


「あれ、お湯が出てこない」


待っても待ってもお湯が出てこない。


「むーー壊れた」


仕方ないから家を出て


ピンポーン


周の家のチャイムを鳴らす。


「ど、どーした?」


「お風呂壊れた」


体が冷えていくのを我慢しながら答える。


周の家に上がるとちょうどお風呂が沸いた音がなった。


「入ってきていーぞ。タオルと着替え用意しとくから」


「ん、ありがと」


体をさすりながら、お風呂へと向かう。

脱衣所で制服を脱ぎシャワーを浴びる


「あったかい」


そういえば、これから周と同じシャンプーとか使うのか

変に意識すると顔が熱くなる。


「さやー着替えジャージでもいい?」


そんなこと考えてたら、周の声が聞こえた。


「ふぇ!!あ、ん。大丈夫。下着はある?」


びっくりして声が上ずってしまった。


「んな!?」


びっくりしてる、びっくりしてる。ふふ


「あ、あいにくうちに女物の下着はございません」


「んー」


まあ、本当にあったらちょっと嫌だな

シャンプーを手にとり頭を洗う。


んー周の髪と同じ匂いー


頭と体を洗い湯船に浸かる。

肩までしっかりと浸かって体を温める。


「んーきもちいー」


湯船で手足を伸ばす。


しばらくお湯に浸かってから上がる


脱衣所に置いてあるタオルで体を拭き

周のジャージをきる。


「むー大きい」


とは言っても借り物だから文句は言えない。


おー周の匂いがするー


リビングに出ても周はいない。

周の部屋からキーボードを叩く音が聞こえる。

ドアを開けても気がついた様子がないので周のほっぺたをつつく。


「ん?」


あまり驚いた様子もなく、振り返る。


「上がった」


なんだか周にじっと見つめられる。


「ジャージでかすぎたな」


確かに大きいけど周の匂いがして落ち着くからいい。


「んーん。周の匂いがするから落ち着く」


顔が赤くなるのを感じ口元を隠す。


「えっと俺もお風呂入ってくるわ」


そう言って周はお風呂へ向かった。


1人部屋に残ったさやはさっきまで周の座っていた。


イスに座り、スマホをいじる。


ピロン


花音から電話がきた。


『今ひまー?』

「ひまだよ?どーしたの?」

『さやちゃん今、周の家にいるでしょ』


ん?なんでわかるんだろ


「なんでわかったの?」

『いや、本当にいるとは思わなかったんだけど…』

「む、カマかけられた」

『こんな時間に何してんの?』

「今日お泊まり」

『え?ほんとに!?』

「嘘」

『周に襲われちゃうぞぉ?』

「周はそんなことしない」

『ちぇーおもしろくないなー』


花音の愚痴を聞きながしてから電話を切るとちょうど周が部屋に入ってきた。


周がこっちをじーっと見て言った。


「ちゃんと髪乾かさなくていいの?ドライヤーあるけど」


周は不思議なことを言う


「ん?勝手に乾くから大丈夫」


そう言うと周がボソッと呟いた。


「せっかく綺麗な髪してんのにもったいないねーな」


むー、あ。いいこと思いついた。

椅子を降りて洗面所へドライヤーを取りに行く。


「やって」


周にドライヤーを押しつけ膝に座る。


なんだかんだやってくれる、周は優しい。


「ほんと綺麗な髪しているよなー」


周は恥ずかしいことをすぐ言ってくる。


「ありがと、周好きなの?」


後ろを向くと自分の赤くなった顔が見られるので

前を向いたまま聞く。


「え、ああ、まあな」


「ふーん、そっかー」


きっと今頃周も赤くなってる。


「はい、乾かし終わったよ」


きもち良くて少しウトウトしていた。


髪を触ってみる。


「ん。いつもよりサラサラ」


「だろ?」


あ…そう言えば周に伝えないといけないことがある。

周の方へと向き直る。


「周…」


「な、なんだ?」


そう、伝えなきゃいけないこと、

それは大切なこと


そう


「お腹すいた」


「…え?…ああ、そーだな」


なんか、周が驚いている。なんでだろう?

夕飯を作っている周の姿を見るのが最近の日課になってる。


じーっと眺めているうちに完成した。


「「いただきます」」


今日はチーズパスタ。

チーズのコクが美味しい。

やっぱ周のご飯は美味しい


「ん。美味しかった」


「お粗末さまでした」


料理を作るのは周

私はお皿を洗う係


ササっとお皿を洗う


なんだか、さっきから頭がポワポワするので

早めに帰ることにする。


「そろそろ帰る」


少し驚いたように周が反応する。


「はいよ」


玄関まで周は送ってくれる。


「ジャージは明日にでも返してくれればいいから、風邪引かないようにな」


頭がポケーっとする中。周をギューっと抱きしめる。


「ん。わかった。おやすみ」


周も優しく抱き返してくれる。


んーあったかい


なごり惜しくも腕を緩める


「おやすみ」


自分の家へ戻ると一気に眠気と気怠さがやって来た。

最低限のことを済ましベットへ倒れ込んだ。

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