第9話 雨の日

放課後、窓から外の天気を見てため息を吐く。


梅雨に入り、最近はずっと雨。なんかいやな感じ、気分も乗らない。


下駄箱から出ると、さっきより雨脚は強くなっていた。


ちゃんと傘は持って来ている。

雨の中ダッシュで帰るなんてアホなことはしないさ。


1人そう思いながら傘を広げ、校門を出た。


土砂降りの雨の中1人の少女が傘をささずに信号が変わるのを待っていた。


小柄な体型に長い銀髪、そしてうちの制服。



銀髪の時点で察したけど見るからにさやだよな。


さやのもとへと小走りで近づいて傘の中にいれる。


「なーにやってんだよ」


びしょ濡れのさやに問いかける。


「傘忘れた」


突然雨が止んだのが不思議そうにこっちを見上げて答えた。


「言ってくれればよかったのに」


「迷惑はかけたくない」


毎日うちに来てご飯を食べに来る子がもうしております。


「別に迷惑なんかじゃねーよ。風邪引かれた方が困るっての」


「ん。じゃあ入れて」


まあ、もう入ってるんですけどね

ん?待てよ。この状況って…


相合い傘だよな…


と、言うかなんだ。濡れてるいろいろ透けてエロいな。うん。やばいね。


「そんなにジロジロみたれると恥ずかしい」


さやの顔が赤くしながら腕で隠す。


「え、あ、ちが…ごめん」


「ん」


やっぱ女子って見られてるの気づくもんなのなのかね。

くだらないことを考えてる間に家へと着いた。


「傘ありがと」


「ああ、風邪引かないようにさっさと風呂入れよ」


「ん。そーする」


そう言ってさやは両腕をさすりながら家に入って行った。


さてと、俺も少し濡れたから風呂入ろうか。

お風呂の準備をしてお湯がたまるのを待っていると


ピンポーーン


なんだろ?


ドアを開けるとびしょ濡れのままのさやがいた。


「ど、どーした?」


驚きながらもさやを家に入れる。


「お風呂壊れた」


なんでや…


ちょうどお風呂のお湯が溜まり切ったことを

知らせる音がなった。


「先入ってきていーぞ、タオルと着替えは用意しとくから」


「ん。ありがと」


さやは普通に脱衣所に向かった。


なんも、抵抗ないのかね?なんか心配になってきたわ。


とりあえず、着替えとタオルを用意か。

タオルはバスタオルが何枚かあるから。

それで大丈夫。問題は着替えか、ジャージとかでいいかな、洗ったばっかだし。


「さやー。着替え俺のジャージでもいい?」


風呂に入ってるさやに大きめの声で聞く。


「ふぇ?あ、うん。大丈夫。下着ある?」


「…あ、生憎。うちの家に女ものの下着はございませんよ…」


「んー」


なぜ聞いた、それに実際あったらいやだろ。


脱衣所にバスタオルと着替えを置いてリビングへ戻る。


「落ち着かねえ」


さっきからシャワーの音が聞こえてきて落ち着かない。

気を紛らわせようとパソコンの電源を入れて仕事をして始める。

しばらくすると後ろからツンツンっとほっぺたを突かれる。


「ん?」


「上がった」


濡れた髪は照明の光をキラキラと反射させて、お風呂直後のさやの頬は赤く染まっている。

俺が貸した、ジャージは大きすぎてズボンは裾を踏んでいて袖は萌え袖を超えてお化けみたいになってる。


さやの手を取り、袖をまくってやる。


「ジャージでかすぎたな」


「んーん、周の匂いがするからこれがいい。落ち着く」


さやは口元に手を当て照れ隠しをする。


「…あ、俺も風呂入ってくる」


あのままでいると理性と保てそうになかった。


「あれ、天然なのか?あんなん惚れない男いないっての」


そんなことを言いながら風呂へと向かった。



お風呂から上がり自分の部屋のドアを開けると

さやは俺の仕事用のゲーミングチェアに座っていた。


「ちゃんと髪、乾かさなくていいのか?うち、ドライヤーあるぞ?」


「ん?勝手に乾くから大丈夫」


何言ってるんだ、みたいに見ないで


「せっかく綺麗な髪してんのにもったいないなー」


ボソッと周が呟くとさやは椅子を下りて洗面所の方に

テクテク歩いていく。何かと思うとドライヤーを持って渡してくる。


「やって」


そう言って椅子に座る俺の膝に座る、



ふー仕方ない、仕方ないのだ。別にやりたいわけっじゃない



とりあえず、まだ水気があるので水分をタオルで拭き取る。

髪を擦らないように気をつける。

櫛で絡んだ髪をとかす。


「痛かったら言ってね」


「ん、気持ちぃ」


本来ならヘアオイルが欲しいところだけど

流石にない。


この後はドライヤーで乾かしていく

近づけすぎないように気をつけて乾かしていく。


「ほんと綺麗な髪してるよなー」


さやの耳がほんのり赤くなる。


「ありがと。周好きなの?」


この男、髪フェチである。


「え、ああ、まあな」


「ふーん、そっかー」


しばらく乾かすと言う名目で髪を触っていたのは内緒だ。


「はい、乾かし終わったよ」


「ん。いつもよりサラサラ」


自分の髪を触って感触を確かめる。


「だろ?」


すると真剣な顔でさやがこっちを向く

何か大切なことを言いたげな顔だ。

俺も心を一旦落ち着かせ、さやの方へと向く


「周…」


「な、なんだ?」


なんかドキドキがやばい心臓が高鳴る。




「お腹すいた」


「…え?…あ、ああ。そうだな」


別に期待してねーし!


さやを椅子から下ろし俺も立ち上がる。


時計を見るともう、7:30 だいぶ時間が経っていた。

キッチンへ向かって今日の献立を考える。

手軽に早くて美味しい…チーズパスタにしよか


牛乳にチーズが絡むようにチーズに小麦を少量ふりかける。

フライパンで温めた牛乳の中にチーズを入れる。

後は茹でたパスタを入れて混ぜて塩コショウで味付けをすれば…


はい完成


後は、好みでブラックペッパー入れたりすればオッケ


10分もかからずできる


流石、パスタは偉大だ。


ソファでゴロゴロする。さやを呼びフォーク、スプーンを用意する。


「「いただきます」」


牛乳とチーズがしっかりと絡んでてトロトロでうまい。

さやも気に入ってくれたようでパクパク食べていく。

ブラックペッパーを入れると味にキレが出てこれもいい。


チーズと牛乳とパスタたったこれだけで出来ちゃうとは一人暮らしとしてはありがたい。2人だけど


あっという間に食べ終わる。


「ん。美味しかった。」


「おそまつさまでした」


さやはいつもとても美味しそうにご飯を食べてくれるから、こっちとしても

作ったかいがある。


「そろそろ帰る」


妙に顔が赤いさやは珍しく早めに帰る。


「はいよ」


さやを玄関まで送っていく。


「ジャージは明日にでも返してくれればいいから。風邪引かないようにな」


ちゃんと聞いてるか微妙な感じだったさやがいきなり抱きついてくる。


「ん、わかった。おやすみ」


優しく抱き返す。しばらくすると腕を緩めたので俺も手を離す。


「おやすみ」


少しフラフラしながらさやは自分の家へと帰った。


玄関の鍵を閉め

自分の部屋へと戻る。宿題をパパッと片付けて


寝床に着く。


「風邪ひかないといいけど…」


そんなことを思いつつも、重たくなるまぶたに耐えきれず

目を閉じた。

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