第7話 母襲撃

あの件があってから成瀬との距離が近い気がする。


そして、ずいぶん俺に甘えてくるようになった。


今日が日曜にもかかわらず朝から成瀬はうちに来てる。


「こーさかー夏服が欲しい」


ソファでゴロゴロしながら成瀬が言ってくる。


「んー買ってらー」


唐突にどしたんだろーか。


「むーこーさかもいく」


少し機嫌を悪くしたようでこっちをむーっと見てくる。


えー今日暑いし家でダラダラしたかったんだけど。


「だめ?」


く、上目遣い。はぁあ、まあいっか。


「わかった。午後からな」


「ん!」


満面の笑みで首を縦に振った。


ピロン


俺のスマホが鳴る。


「あ、母さんか」


[今からお部屋チェック行きまーす]


「え?」


驚いた顔をする俺を見て成瀬が心配いそうに見てくる。


「こーさかどーしたの?」


「成瀬今すぐ帰r…」


急いで帰らそうとするも時既に遅し。


ガチャ


鍵を開ける音と共に玄関から声が聞こえてきた。


アッ詰んだ。


「周!おっはよぉー!お?」


うっわ。めっちゃニヤニヤしてる。うっざまじうっざ。


「あらあら。どうやら愛の巣に迷い込んでしまったらしいわね」


わざとらしく意地の悪い笑みを浮かべて聞いてくる。


「え?えっえ?え?」


成瀬はめちゃくちゃ驚いて俺の手を掴んでくる。


「もう、周彼女できたなら言いなさいよー」


ベシベシと俺の頭を叩く。


「彼女じゃないし」


コレはまじ。


「またまた〜私は高坂美鈴よ、あなたは?あ、私のことはお母さんって呼んでいいいからね」


おうおう、爆弾ぶち込んでくるなや。


状況の理解が出来たのかやっと成瀬も落ち着いてきた。


「えっと私は成瀬さやです。お義母さん」


あーなんで言っちゃうかなぁ。


「キャーお義母さんだって。孫を見るのが楽しみだわ!」


妄想飛躍しすぎてません?


「どうどう。だから成瀬とは付き合ってないって」


母さんを静めるべく声かけるもこのテンションの上がりようじゃ無理。


「あら周、ちゃんと『さや』って呼んであげなさいよ」


やはり、暴走した母さんを止めるすべはないらしい。


「えっと、成瀬がいいなら?」


早く呼べと言わんばかりに母さんが凝視してくる。


「ん、問題ない」


顔を赤くしてうなずきながら答える。


「初々しいわねー。今日はデートだったかしら?」


「ん。あとでショッピングに行く」


デートなのか?え?あれデートだったのか?


「デートなら周、身だしなみをしっかり整えなさいよ」


さやが不思議そうに首を傾けると母さんが驚いたように声をあげた。


「もしかして周!!いつもそんなんなの!?」


「ま、まあそうだけど」


基本的にメガネで髪も特にいじってない寝癖なおすくらい

母さんがめっちゃ睨んでくる。


「いや、だってあれ疲れるし準備めんどいし」


はぁ、その決意の目やめて。


「さやちゃん、さやちゃん!周も身だしなみ整えるとちょっとはカッコよくなるのよ」


母さんがスマホの写真を見せる。


「どうどう?ちょっと、いや、かなり

目つき悪いけど。良くない?見たくない?」


めっちゃ圧かけるじゃん。


「ん。見たい」


結構気合入れて言うのな

メガネ外すと目つき悪かなるから避けられるんだよなぁ…


「コンタクトとワックスはあるんでしょ?」


「まぁ、あるけど」


自分をカッコ良く魅せる方法は母さんに叩き込まれたからな。


「わかってんならさっさと行ってきなさい」


「はいはい」


メガネを外してコンタクトをつけワックスをつけて、なんやかんやでかーんせい。


ワックスは手がベトベトするから嫌なんです。


「ほーらしっかりやれば、そこそこイケてんだから毎日そーしなさいよ」


母さんのニヤニヤ顔が絶妙にうざい。


「めんどい無理」


視線を感じてさやの方を見るとボーっと俺の方を見てくる。


「変か?」


「そんなことない、カッコ良すぎてびっくりした」


まさか、褒められるとは思わなかった。


「そ、そーか」


顔が熱くなるのを感じる。


なんか気まづい。


「はい、これお小遣いあげるから楽しんでらっしゃい」


母さんが諭吉を2枚渡してきた。


いや、多すぎ。


「いや、お金はあるからいいって」


「いいの、いいの。ありがたく受け取っときなさい」


「いや、でも」


「これで、さやちゃん楽しませてあげなさい」


いい人なんだけどお節介なんだよなぁ。

ニヤニヤ顔がうざいし。


「はいはい」


「それじゃあ、私は帰るわね。あ、さやちゃん連絡先交換しましょ」


「ん。わかった」


2人はパパッと連絡先を交換し早速メッセージを送り合っていた。


「送れた?」


「ん、きた」


ちゃんとできたみたいだ。


「いつでも送ってきてくれればいいからね。周のことならなんでも教えてあげるから」


怖いって。


「ん、なんでも聞く」


「聞かなくていいからね?」


「わかんない。周のこともっと知りたいから」


この子の無邪気さが怖い。


「知りたいことあったら俺に聞け。答えれることは答えるから」


「もーアツアツね、それじゃあ次は父さんも連れてくるから」


「はいよ、次来るときはもっと早く連絡しろ」


「あ、あと…」


母さんが俺の耳元まで来て言った。


「避妊はしっかりね!」


「ウルセェ」


今度はさやの方へと行き耳元で何か呟くとさやは真っ赤になった。

何言ったんだろ。あとで聞いてみるか。


「じゃーね!お楽しみのとこ邪魔しましたー」


母さんは嵐のように来て嵐のように去っていった。


「…なんかごめんな」


「ん、大丈夫」


「そーいえばさっき何言われてたんだ?」


首を傾げるさやにもう少し詳しく質問する


「ほら、さっき耳元で言われてたやつ」


さやは思い出したようで、顔を赤く染める。


「ひ、秘密。周は何言われたの?」


「ん?俺は責任取れるまでは子供作んなってさ」


自分で聞いておいてどんどん赤くなる成瀬さん。


「さやは?」


「わ、私は周は好きなおもちゃは手放さないって、あと大きいって、、、」


なんか不穏な言葉が聞こえた気がする。


「ん?後半なんて言った?」


「周のは大きいってお義母さんが…」


大きい?


「何が?」


「ナニ」


なぞの沈黙が2人の間に流れる。

母よ、何をやっている。あとなぜ知っている。

そしてなぜ伝えた。


「はぁ、とりあえず出かけるか」


「ん、行く」


はー顔あっついわぁ。


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