第5話 成瀬の過去

優と花音がうちに凸ってきてから一週間がたった。


最近わかってきたことがある。

成瀬は寝付きが悪い。


よく俺の家でウトウトして寝ることがある。

その時よくうなされている。


起きると青い顔をして帰ってく。


そうして今も俺の隣でうなされている。

正直どうしたものか…

と思ったが今回はうなされ具合はひどい気がする。


「お、お母さん。お母さん」


必死に助けを求めるさやの手を握る。


「成瀬、大丈夫か?」


必死に手を握ってくる成瀬に、声をかける。


「やだ、やめて来ないで」


俺の腕に必死にしがみついてくる。

流石にまずい気がするので起こす。


「おい!起きろ!成瀬!」


肩を譲り起こす。


「ふぇ、、、こーさか?」


やっと目を覚ました成瀬。


「ああ、俺だ大丈夫か?」


成瀬の目には涙が浮かんでいた。


「なぁ、なんかあればなんでも聞くぞ?」


少し考えた後さやは口を開いた。


「…ん。じゃぁ、ちょっと聞いて?」


成瀬は、俺の膝を枕した状態でした状態で話し始めた。



ーsideさやー



私は突然変異で吸血鬼として生まれた。



吸血鬼は通常の赤子とは違く、体の形成、成長に母体の生命力を大きく吸い取ってしまう。


このせいで吸血鬼を身篭ると生む前に亡くなる母体が多い。

母体ともに身篭った赤子が死ぬ。

元々、吸血鬼として生まれることが稀なこともあいまって吸血鬼は絶対数が少ない。


私は奇跡的に生まれてくることができた。

母は出産に全ての力を使い切り息を引き取ってしまった。


私の名前の「さや」は死ぬ前の母がつけてくれた。


私の父は母を愛していた。

だから愛してたからこそ母を間接的にも殺した私を恨んだ。


吸血鬼である私は簡単には死ななかった。

母が亡くなった後の父は荒れに荒れた。


1、2周間食べ物を与えられないこともあったが死ぬこともはなかった。


それを見てか父は私を化け物と呼んだ。


私の肌は白く髪も白く目は赤く。それが気に入らなかったのか、父は手を上げるようになった。


たまたまそれを見た、母方の祖母に私は連れられ家を出て行くことになった。


一人暮しの祖母は私を本当の子供のように大切に育ててくれた。


そんな祖母が私は大好きだった。



祖母の知り合いに吸血鬼のお姉さんがいた。


お姉さんにはよく会い吸血鬼としての生き方を教わった。

しかし、その幸せな日々も長くは続かなかった。


祖母は死んでしまった。


また、私は父の元へと戻ることになった。



父が私を憎む心は全くもって変わっていなかった。


会社もクビになり、父は鬱になっていた。

精神が不安定な父は私を殺そうとした。


「お前さえいなければ」


その言葉は私の脳に深く刻まれた。

私は生まれない方が良かったのんじゃないのか。


ただ怖かった。なにも抵抗できず父に殴られ蹴られここで私が死ねば父は救われるのか頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。


それでも何度殴られど蹴られど吸血鬼である私の体がそれを許されなかった。


何日たっただろうか。意識が朦朧とする中


チャイムが聞こえた。

父は奥で寝ている。

もう一度チャイムがなった。


「大家ですけど、回覧板でーす…開けますよ?」


鍵は空いていたのか大家さんがドアを開けて目にしたのは血が飛び散る部屋だった。


悲鳴をあげた大家さんは、急いで出て行った。


いつになったら私は死ねるのか。ただそう思っていた。


その後、警察が家に入ってきて父と私は連れて行かれた。



次に起きたのは病院だった。


父は裁判にかけられ有罪判決の実刑。

私は吸血鬼のお姉さんに引き取られて今に至る。

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