第4話 処女の味じゃない。


~放課後~


家のチャイムが鳴った。


あれ?Amazonとか頼んでたっけ?


不思議に思いつつドアを開けると成瀬がいた。


「どしたの?」


「ごはん食べる」


あーそーいえば毎日ごはん作るって話だったな。


うちの夕飯は基本的に19時だ。

まだ3時間ある。


そのことを成瀬に伝えると頷いてうちの家に入ってきた。


えぇ、なんでぇ?


「おーい成瀬さんや、うちの夕飯は19時だから19時に来てくれればいいよ」


もう一度伝えておく


「ん、いちゃダメ?」


首をかしげながらの上目遣い


く、まぶしい


「別にいいけど、俺かまってやれねーよ?」


「なんで?」


不思議そうに頭を傾けるさやに答える。


「仕事あるからさ」


「ん、見てる」


なんか緊張するわ!


俺はバイトの代わりに仕事の引き受けをやっている。


主にプログラム関係の

今日の仕事はデバックだ。

プログラムのバグを洗い出し修正する


「なぁ、成瀬」


「ん?」


動かす手は止めずに聞いた。


「こんなの見てて楽しいか?」


「楽しくない」


デスヨネー  


しばらくすると成瀬は俺のベットに寝っ転がってスマホをいじり始めた。


ブーブー


俺のスマホがなりだした。


画面を見ると優から電話が来ていた。


「もしもしー?」

『もしもしー』

「どしたの?」

『いまからお前ん家じゃまするわー』

『じゃまするわー』


花音もいるらしい


「俺の家をリア充の遊び場にするな。あと今仕事中」

『いいじゃん、いいいじゃん。邪魔しないし』


邪魔するゆーてたやん。


「こーさか、喉かわいたー」


ベットで寝転がる成瀬が呼んできた。


アッ…


『ん?今女の子の声したよな?』

「キノセイジャナイカナ?」

『よし、花音突撃だ』『いえっさー!』


すんごく楽しそうな口調でとんでもないことを言ってくる。


顔が引き攣ってる気がする。


やばいやばい!どーする!?


「こーさかどしたの?」


成瀬がベットから起き上がりこっちに来た。


「優と花音がうちに来る」


「え…?」


さすがにこの状況はまずい


「とりあえず帰れ」


「ん」


玄関に向かう途中…


ピンポーン


oh…時すでに遅しか…


「鍵はしまってる。とりあえず…」


「ん、隠れる」


成瀬は俺の部屋の押し入れに隠れた。


ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン


「あけなさーい」


ドンドンとドアを叩き。チャイムを連打してくる。


「ちょっと待てって」


花音ドアを叩くな。


ドアを開けるとニヤニヤした二人組が立っていた。


「「どーもー」」


そのニヤニヤ顔嫌い。


「帰れ」


一言それだけ伝えドアを閉めようとする。


「いいじゃーん。ちょっとだけーだって

ちょっとだけーよ」


ニヤニヤと笑いながら閉じようとするドアを優が止める。


どっから出てきてんだよその力。


「なにを隠している!?」


花音もテンション最高潮って感じだし。


「隠してない」


こいつらグイグイと来やがる。


「ちょっと耳」


優が手をこまねいてくる。


「なに?」


優のほうに耳を近づける。


「よし花音突撃!!」


「よっしゃー」


やられた!


あと耳元で大声出すな耳痛い。


すぐに花音のあとを追う。


「はよ出てけ」


少しイライラしながら2人に声をかける。


「周くんやずいぶんと必死ですな?」


優の顔面潰してぇ


「どーせ。さやちゃんとかでしょ?」


ガン!


俺の部屋から物音がした。


あーあ


「花音!周の部屋だ!」


「おっけー!」


花音が押し入れを開けると涙目で頭をおさえる成瀬がいた。


「見ーつけた!」


花音が襖を開けてしまった。


「さてさて、周君これはどう説明するのかね?」


現在おれと成瀬は自分の家なのに正座させられている。


「ふーん。なるほどそーゆーことだったのか」


結局、事情をすべて話すことになった。


「ねーねーさやちゃん、私の血飲んでみない?」


興味本位か花音が成瀬にそんな提案をする。


「お、おい」


「いいじゃん、それとも自分以外の血飲ませたくないとか?」


「ちげーよ」


「じゃあ、えっと…どこから飲むの?」


「指」


少量でいいときは指でいいらしい。

さすがにここで花音に脱がれても困ります。


花音の人差し指を咥える。


チュー


「ど、どーかな?おいしい?」


「この味は…処女の味じゃない」


キリッとした顔で味の感想を伝えた。


花音さん顔赤いですよ。あと後ろの優君も


「あっれれー?二人とも顔が赤いぞー?どーしたんだーい?」


「うっさい周!」


花音叩くな痛い。


今度は優が吸われている。


「ど、どう?」


「このままだと早死にする」


「ウェ!?」


なんか死の宣告されてるんだけど。


「栄養が偏ってる。野菜食べたほうがいい」


そんなことまで分かるのか


「ふぁい」


花音に慰められながら帰りに野菜ジュースを買う予定を立てていた。


そういえば優、野菜嫌いだったな。


「高坂の血飲みたい」


「え、あ、おう」


めっちゃ不味い血飲んだんだもんな。

口直しにはいいだろう。


二人と同じように俺も人差し指を出す


「くーび」


イヤイヤ期の子供のように顔を顰める。


「え、いやこいつらいるし」


優と花音を指さす


「あー俺たちのことは気にすんな」


またもニヤニヤしだす2人。


「空気だと思ってね!」


めっちゃガン見しながらほざいてやがる。


「ちょっとだけ」


「はあ。わーったよ」


周もちょろかった。


あぐらをかく俺の上に座って首を噛んで血を吸ってくる。


チューーーー


けっこう飲みますね!?


「キャーなんかエッチぃ!」


花音は目を片手で隠すが薬指と中指の間に大きなスキマが空いている。


それ隠れてないから。


ぷはぁ


「ん。美味しかった」


「お、おう」


がんばれ、俺の理性!


「わー花音さやちゃんに惚れそうになっちゃったよ」


「えっろ」


「ゆぅーくぅーん?」


おお怖いこれが修羅場なのか?


「夕飯食べてく?」


「うーん今回は遠慮しとくわ」(邪魔しちゃ悪いしね)


次回はあるのかよ。


「はいよ」


「じゃあ、花音達は帰るよー」


俺と成瀬は玄関まで二人を送った。


「じゃあ、また明日」「ん。明日」


「「お邪魔しました〜」」


そう言って二人は帰っていった。

ほんとに邪魔しかしねーな。


成瀬は部屋に戻るとソファにごろーんと寝転んだ。

疲れたんかな?


ふと時計を見ると19:30をすぎていた

夕飯さっさと作るかね。


今日の夕飯は豚しゃぶをサラダに乗せるだけの手抜き料理にするとして。


「成瀬って嫌いな食べ物ある?」


「んーない、と思う」


「はいよ」


「高坂の料理は美味しいから問題ない」


どーやら成瀬の胃袋を掴んでしまったらしい

とりあえず作りますか。


レタスを破ってきゅうりを一口サイズに乱切りする。

あとは豚をしゃぶしゃぶして乗せるただそれだけ。


10分弱で完成


「成瀬できたぞー」


「んー」


「「いただきまーす」」


野菜は生が一番とはよく言ったものだ


うん。いい感じにできてるね。


「おいしい、野菜シャキシャキ」


「だろ?」


成瀬はパクパクよく食べてくれる。

やっぱおいしいって言ってくれると嬉しい。


なによりご飯を食べてる成瀬は小動物みたいでかわいい


「「ごちそうさま」」


皿を洗おうとすると成瀬が俺の手を止める


「私がやる。高坂は仕事の続きしてていい」


「お、おうありがと」


正直、今日中にデバックを終わらせたかったから助かる。

将来成瀬はいい奥さんになりそうだな。


さてと今日中に終わらせますか。




「終わったぁぁ」


手を上げ背を伸ばす。

疲れた体を椅子に預ける


時計を見るとすでに深夜1時

部屋を出てリビングを見渡す

どうやら成瀬はすでに帰ったらしい


集中しすぎると周りの音聞こえなくなるんだよなあ


飲み物を取りに冷蔵庫へ向かうと机の上に

オニギリと書き置きがあった。


『お疲れ様』


周の顔が綻ぶ


「やっぱいい奥さんになるよ。ほんと」


オニギリを手にとりかぶりつく

ん?甘酸っぱい?


具はいちごだった。具はいちごだった。

大事なので二回言った。


「これは。。。ウケ狙いなのか?」


成瀬は吸血鬼で料理なんかしない。

あぁ、これは


「ただの天然だな」


梅干しかなんかとまちがえたのかな

確かに赤いけど


「ふぁあああ。ん、寝よう」


ありがと成瀬

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