一学期

第1話 出会い

「ふぁーぁ」


カーテンの隙間から明るい光が零れている。朝だ。

ボーッとしながらスマホの画面を覗く


『8:03』


うちの学校は8:25着席である。


眠気が飛んだ。


「えぇぇぇぇ。やっべやっべなんで?なんで?目覚まし鳴れよ!」


大急ぎで飛び起きた俺は寝癖を秒でなおし歯を磨き、最低限の身だしなみを整えて制服を着ては大急ぎで家を飛び出した。


ちょうど隣の部屋の住人であろう銀髪の少女にぶつかりかけた。


「あ、すいません」


パッと一言だけ伝えて学校へと急ぐ。


「銀髪?珍しってそれどころじゃねー」


俺は高坂周(こうさか しゅう)高校生。学校までは近いとは言えないがこれ以上遅刻を増やすわけにはいかない。


 走れ!


ギリギリ鐘が鳴る直前には間に合った。


「はーい、じゃあHR始めるよー」


うちのクラスの担任の櫻井先生だ。まだ若く生徒からの人気も高い。



「きりーつ、きょうつけーれーい」


「「「おはようございます」」」



「あれ?今日成瀬さん休み? だれかなんか聞いてる人いる?」


クラスがざわざわし始めた。なぜって、うちの学年…いや学校単位で有名な美少女。特に特徴的なきれいな銀色の髪。そんな子がいなければザワザワもするだろう。


「うーん。だれも知らないかー」


いきなり前の扉が開いた。


何かとみんなが驚いていると、成瀬がはいってきた。


「成瀬さん、おはよーどーしたの?遅延とか?」


驚きながらも先生は少し髪のはねた成瀬に声をかける。


「ごめんなさい。朝は苦手でボーとしてました」


 えぇ…それで許されるわけないじゃん。


「気をつけてくださいねー」


怒るのかと思いきや実際は全く怒られることはなかった。


「はい、頑張ります」


朝のHRが終わると俺の元に優が来た。


「おいおい周くんや。溜息ついてどーしたの?」


特に心配した様子は無くどちらかと言うとからかい口調で聞いてきた。


小西優(コニシ ユウ)。こいつは腐れ縁で中学から高2のいままで

ずーーーっとクラスが同じなのだ。


「俺さ…今日寝坊したから走ってきたんだけど?」


「そいつぁ、どんまい。それより一限目移動じゃん。いこーぜ?」


優は俺の肩をポンポンとたたきながら言った。


クラスのみんなが移動し始めたのを見て俺らも移動することにした。


「ああ、いこーか」


今日もめんどくさい学校がはじまった。




≪キーンコーンカーンコーン≫


「ヤットオワッタ」


「おーい優生きてテルー?」


机に突っ伏して今にも死にそうな優に声をかける。


「アア、ハヤク昼飯タベヨーゼ」


4限目を終えた俺らはすでに限界を迎えていた。


 学校キッツ


「おー食べよ」


「ユーーーウーーー!」


大きな声と共に1人の女子が突撃してきた。

目標は俺では無く優の方。


「うわ!花音か、どーしたん?」


優の彼女である花音がニヨニヨしながら優に抱きついた。


「どーしたもなにも今日、委員会の集まりあるの忘れたの?」


優は抱きついてきた花音をそっと剥がしながら答えた。


「あ。忘れてた」


 リア充爆発しろ。


「俺の前でいちゃつくな。バカップル」


「うらやましいか。そーかそーか」


その笑顔がまたうざいこと。


「んなこと言ってねーよ」


この二人。学校でも有名なバカップル。

大事だからもう一回言う。


 リア充爆発しろ


「周も彼女つくりなよ~」


花音と楽しそうにジャレ合いながら言ってくる。


「作れるなら作るわ」


「素材は悪くないと思うんだけどなー」


こいつも何気にお世辞がうまい。べ、別に嬉しくなんてないんだからね!


いや別にうらやましいとか思ってないし…


「んじゃ、周すまん!俺ら行くわ」


花音に急かされおもいだしたのか急いで教室を出て行った。


「へいへい。いってこい、いってこい」


出て行く2人を見送りながらどうするかを考える。


さてとどーしよーかな。生憎、俺に

ほかの一緒にごはんを食べる相手はいない。


クラスでボッチ飯はなんかやだ。


「あ。久しぶりにあそこ行くか」


購買に寄ってパンを買ってから階段を上った。

うちの高校には屋上がある。ふつうは鍵がかかってて入れないが。

実はドア横の窓からめっちゃ簡単に出れる。

完全に設計ミス。対策もしてないから。気づいてないのか放置してるのか…そのわりに知ってる人はあんまりいない。

まあそんなことはどうでもいい。こっちとしては嬉しい限りだ。



「ここ来るのも久しぶりだな」


ここからさらにハシゴを上ると俺のサボりスポットがある。


ハシゴをのぼるとそこには壁に背を預け日陰でぼーっとした、先客がいた。


「成瀬…か」


彼女の肌は真っ白、髪は銀っぽい白、瞳はきれいな紅色。


それにしても、ほんとに天使かと思うくらいにはきれいな子だな。


ウトウトしていた。成瀬の目が開いた。


「なに…?」


目を擦りながら成瀬がそう小さくつぶやいた。


「昼飯食べに来た。邪魔か?」


「ん?問題ない」


昼めしは購買で買った、パンが3個だ。

いつもは弁当を作ってくるんだが。


今日は寝坊したから…ね?


ふと成瀬の方を見ると成瀬は昼ごはんらしき物を何も持っていなかった。


「成瀬、おまえ昼食べないのか?」


「いらない」


俺は三食しっかり食べるのは大切だと思ってる。

食事は健康の基本だからな。


「ちゃんと食べないと倒れるぞ?ただでさえ成瀬細いんだからさ」


「私、『吸血鬼』だから必要ない」


そっかー成瀬は吸血鬼なのかー。

そーか、そーかって


「え?」


「あ。このことは秘密。言っちゃいけないこと」


はっと気づいたように人差し指を立ててシーってやってくる。


普通に言ってますけどー?


ああ。もしかして成瀬って中二病なのか?

と、とりあえずこういう時は流そう。


「へ、へぇー成瀬って吸血鬼ダッタノカー」


我ながらなかなかの棒読みだった。


「む、その顔は信じてない。」


頬を膨らませながらそう言った。


かわいいな、おい。


「ちょっと高坂こっち来て」


手招いてくる。


「俺の名前知ってたのか」


「ん」


さすが、マドンナはみんなの名前も完璧らしい。


成瀬に日陰に連れてこられた。


「吸血鬼は日に当たるとやばい」


日陰の外のじーっと見ながら説明してくる。


「やばいってさっき当たってたけど…」


ああ、もう設定に綻びが…


「それはこのリングのおかげ」


そう言って成瀬は両腕につけた銀のリングをはずした。


「外していいのか?やばいんだろ?」


「結構きつい。体に力が入らない。でも吸血鬼なの証明する」


よろける成瀬をそっと受け止める。これマジなのか?


「この状態で日に当たるすごくやばくなる」


いや、語彙力よ…


「と、いいますと?」


「燃える」


「what?」


「燃える」


成瀬はそーっと人差し指を日陰の外に出した。

その瞬間。



ボッ!



っと成瀬の指が燃え始めた。


(えぇぇぇぇぇぇ、まじかよ)


驚くと声って出ないものだな…


「あ」


手を日陰に戻すと成瀬の指が炭になってポロっと落ちた。


「おいおいおい。指なくなっちゃったぞ。どーすんだよ」


「大丈夫すぐ治るはず…?」


一向に変わらない第二関節から先がなくなった人差し指。


「治ってないですけど」


やっべやっべ。これマジでやばくね?俺のせいで成瀬の人差し指なくなっちゃったよ?

どーすればいいのこの状況。


「血」


少しぼーっとしながら一言発した。


「え?」


「血が足りない」


えっと貧血か?いやちげーわ

こいつ吸血鬼だった。


「お、俺の血飲むか?」


「いいの?」


驚いた様子で成瀬が答えた。


まあ、ここに俺以外人いないし。


「血飲めば治るんだろ?」


「ん」


うわーこえー初めて血飲まれるわー


「ちなみに痛い?」


「んー多分だいじょぶ」


えーたぶんってなんだよー。怖いんですけど。


飲みやすいように第二ボタンを開け

首元を開ける


「さあ、こい!」


「ん。いく」


成瀬が抱きついてきた。


驚く暇もなく首元に歯を立ててカプッっと噛んできた


ズキッ


「くっ」


噛まれた一瞬痛みが走ったが痛いのはその一瞬だけだった。


(オォ血が抜けていくー)


すげぇ体から血が抜けてるのが

すんごくわかる。


不思議と痛みは感じないしなんか悪い気はしない。

それに成瀬のいい匂いが!


あ、あれ視界がボヤけて焦点があわない。あ、あれ?


「な、るせストッ…」



意識が…


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