10 マミ ヴァルテの総大主教に会う

 

 

 

***

 

 

 神殿内の中枢の辺りから、異様な波動が響いてくる。

(まずい!!!、余計な事考えてる場合じゃない。!!!)思わず、

マミが駆ける足を速めて、ミーユとフレナも唇を噛み締めて付き従っている。

 

 その3人の前に、5人の神官戦士が立ち塞がる。5人とも男である。

(!!!?っ、何だこの波動!!!?)5人が放つ異様な波動に、

思わず、マミが驚愕して、立ち止まる。

 

 「そこの娘!!、貴様、竜族だな!!?、竜族がなぜこの神聖なる

ヴァルテ神殿に入ってきた!!!?」男達のどこか非情な声音に、

ミーユが、「神界の勇者様が同行を望まれての事です!!。

お通し下さい!!!」と、懸命に叫ぶ。

「神界の勇者様…!!?」と、思わず、男達がたじろぎ、

それでも、「…たとえ勇者様でも、通す訳には参りません…!!!」と、

5人とも、マミに、白銀の剣の先を突き付ける。

 

 「…済まない…!!!」咄嗟に、マミが、わずかに開き気味に

右手の指を伸ばして、その5本の指から虹色の光の奔流を放ち、

5人に浴びせて、

「…っ……!!」5人とも、神殿の床に倒れる。

5人の肉体から、黒紫の光粒子の霧が立ち上って、消えていく。

 

 「勇者様…!!?」驚くミーユに、「気絶させて浄化しただけだよ。

まあしばらく、目は覚まさないだろうけど。」と、

マミが少し苦笑して、「…5人とも、ただ洗脳されてただけじゃない。

戦争を起そうとしている何者かの使徒に、

半分、乗っ取られてたみたいだ。」と、唇を噛み締める。

 

 フレナが、青ざめながら、「…神殿の奥の異様な波動が、

どんどん酷く・・・!!!」と。

「急ごう!!!」と、マミがまた駆け出し、フレナとミーユも続く。

 

 

 「!!!!?っ、こんな…っ…!!!!?」ミーユが、愕然と。

 

 ヴァルテ神殿、中央大聖堂。

 総大主教が祈りを奉げ続けているはずの、その大広間は、

黒紫の光と波動の渦に、すでに、犯され尽くしている。

そして、大広間には、純白の聖衣に身を包んだ、

純白の豊かなストレートの髪をふくらはぎの辺りまで延ばした、

絶世の美女の姿が。

纏っているワンピース状の聖衣には、鎖骨の辺りから、胸の谷間、

みぞおち、この上なく美しい臍の周囲の腹部、

そして股間より少し上の下腹にかけての部分に、

一続きの開口部が入れられていて、開口部の優美な柔肌が露で、

要所要所の大胆な豊満さがラインとして描き出されていて、

聖衣の両袖は手首辺りで大きく広がっていて、

スカート部分の裾は足首辺りで大きく広がっている。

その、聖衣の、大部分が、黒紫の波動にすでに浸食されている。

絶世の美女が、振り返る。

「…総大主教様……!!!!」蒼白になって立ち尽くすミーユに、眼もくれず、

「…今頃になって辿り着くとはな、それでも勇者か?、笑わせる…!!!」と、

穏やかな気品を備えた風貌であったはずの、絶世の美女が、総大主教が、

美しい声音を歪ませ、異様に、嘲笑う。

 

 「総大主教様!!?、何を…!!!?」思わず叫ぶミーユの、肩を押さえて、

マミが、「…もう乗っ取られてる…!!!」と。

 

 総大主教の姿が、変化し始め、巨大に、黒紫のモンスターに変わっていく。

「!!!」咄嗟にマミが右手を振りかざし、放った虹色の光の奔流が

超次元空間となって黒紫のモンスターとマミ達3人を内部に封じ込め、

巨大化し続けるモンスターの肉体が大聖堂大広間を内側から破壊するのを、

防ぐ。

 

 総大主教本来の肉体を内部に飲み込んだまま、黒紫のモンスターは、

全長40メートルを超える黒紫の巨体に変化する。

胴体は獅子、両翼は竜、鷲と獅子と竜の3個の頭部を持つ、

カオスキマイラと呼ばれる伝説の怪物に。

「…こんな手段に出るなんて……」と、マミが、厳しい表情で。

「…もの凄い悪意の波動を放ってる…!!、…わたし達も、

ガッディスジュエルに護られてなかったら、精神を乗っ取られて

殺し合うだけの戦争奴隷にされてたかも…!!」と、フレナが、

どこか怯えた様な表情で。

 

 「……」マミが、左手に、虹色の光剣レインボーブレードを、展開する。

 「!!っ、…勇者様…っ!!!」思わず、ミーユが、

苦しげに。「…総大主教様ごと…、倒すしか…、ないんでしょうか…?」

ふと、マミが微笑む。「…そんな事をしたら、ミーユが笑顔になれなくなって

しまうかも知れないから…、…そんな事は、おれには出来ないよ……。」

「!!」思わず、ミーユが頬を染める。

 

 カオスキマイラの両翼の付け根へと、別の次元から、膨大な黒紫の波動が

凝集されていき、全長約3メートルの、ニシキヘビを象った黒紫のモンスター、

カオスパイソンが、無数に生み出されて、空中をくねり飛び、

ミーユただ一人に、黒紫の粘液に濡れた大型の牙を撃ち込もうと、襲い掛かる。

「!!!!っ、このっ!!!!」瞬時にマミが、割って入ってミーユを庇い、

右手にもう一本のレインボーブレードを展開して、

フィギュアスケートの腕捌きを応用した左右の剣の円舞でカオスパイソンを

次々と斬り裂いて爆散させていくが、

カオスキマイラも苛烈な勢いでカオスパイソンを無数に生み出し続ける。

 

 「…おれの動きを封じる気かよ…!!」マミが、苛立つ様に。

 

 そこへ、マントを外したフレナが、「タアーッ!!!」と、

左右の手に握り締めた2本の大型黄金剣グラスヴァングで、縦横に、

カオスパイソンの群れに斬り込む。「…こいつらはわたしが相手するから、

マミちゃんは、総大主教様を救ってあげて…!!!」

「!!!」咄嗟に呼応して、ミーユも、聖銀大剣で、薙ぎ払う仕草で、

カオスパイソン群に斬り込む。「わたし達なら大丈夫です!!!っ、

勇者様に頂いたガッディスジュエルに護って頂いてますから!!!、

だから、総大主教様を、お願いしますっ!!!」

 

 「…でも…」咄嗟に躊躇うマミに、

「マミちゃんが生み出したガッディスジュエルを信じて!!!、

わたし達は、マミちゃんを信じるから…!!!」と、

フレナが叫ぶ。

 

 「…わかった…!!!」少し、うなずいて、

マミが、縦に空中転回しつつ、宙で逆立ちの体勢で、

捻りを加えた体捌きの勢いを込めて、

カオスキマイラの巨大な両翼を、一瞬で斬り飛ばす。










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