11 マミ カオスキマイラと戦う

 

 

 

***

 

 

 全長40メートルを超えるカオスキマイラの両翼を断たれた傷口から

膨大な黒紫の波動が迸り、マミを3万度の熱で焼き尽くそうと、飲み込む。

マミにはかすり傷一つ与える事が出来ない。

 

 「!!!っ、そういう事かよ…!!!」波動から、カオスキマイラの

体内状況を察知したマミが、苦い表情で、

一旦床へと飛び下りる。(…総大主教がコアみたいな状態になってるんなら

取り出して復元すりゃ済むんだけど…、…これ一体どうすりゃいいんだ…!?)

 

 カオスキマイラの、両前足の爪が、鷲の嘴が、獅子の牙が、竜の顎が、

次々にマミの優美な柔肌目掛けて撃ち込まれ続けて、

傷の痛みに酷くくねる様に悶え続ける3個の頭部の、

鷲の嘴から4億ボルトの雷光が、獅子の口から絶対零度の吹雪が、

竜の口から3万度の炎が、迸って、マミの肢体に交互に叩き付けられ続ける。

全く無傷無痛のマミだが、苦しげに、唇を噛み締めている。

 

 フレナは2本の黄金剣で、ミーユは聖銀大剣で、カオスパイソンの群れを

迎え撃ち続け、時折、1体、2体、カオスパイソンを斬り倒してはいるが、

カオスパイソンの数は増える一方で、

マミの邪魔をされない様に引き付けておくのが精一杯の状況である。

カオスキマイラの4億ボルトの雷光と絶対零度の吹雪と3万度の炎は

フレナとミーユにも撃ち込まれ続けるが、ガッディスジュエルが展開する

ガッディスフィールドに完全に防がれ続けている。

 

 (…!!!!!)マミの瞳が、光を放ち、

 

 飛翔しつつ左右の2本のレインボーブレードで斬り込もうとしたマミの、

首から下の胴体を、獅子の口が喰い千切り、

残ったマミの首に竜の口が喰い付いて、飲み込む。

 

 「!!!!っ、マミちゃんっ!!!!?」「勇者様っ!!!!?」

フレナの、ミーユの、悲鳴が響き、

 

 (おれは大丈夫!!!、心配しないで!!!)

マミの、思念が、フレナとミーユの意識に直接響く。

 

 (!!!!?)茫然と見つめるフレナとミーユの眼前で、

カオスキマイラが、激しく苦悶し始める。

 

 カオスキマイラの黒紫の獅子の巨体に、無数の亀裂が入っていく。

その無数の亀裂から、ごく細い虹色の光条が、無数に迸って、

虹色の光粒子へと舞い散り、

 

 虹色の光粒子は虹色のオーロラへと凝集していく。

 

 やがてそのオーロラから白色の光粒子が分離して、

凝集し、人影へと変化していく。

 

 白色の光粒子から総大主教へと変化が完了して、

本来の穏やかな品格を備えた絶世の美女の、総大主教の姿へと、復活し、

 

 虹色のオーロラから傷一つ無いハイレグビキニアーマー装備状態に

戻ったマミが、まだ目覚めない総大主教を、

所謂「お姫様抱っこ」の体勢で抱きかかえる。

 

 マミが放つ虹色のオーラが周囲の空間を彩り、

カオスパイソンの群れもオーラに撃たれてたじろぎ、身動き出来なくなる。

 

 「マミちゃんっ!!!?」「勇者様っ!!!」思わず、

フレナとミーユが駆け寄る。

「何であんな無茶を!!!?」思わず涙目になるフレナに、

「ごめん、驚かせて…!」済まなさそうに、マミが、

微笑みつつ、「…総大主教がただ飲み込まれてる状態でなくて、

分散融合吸収されてカオスキマイラの全身に散ってる状態だったから、

おれ自身が一旦オーロラ化してカオスキマイラの全身に散って

総大主教の遺伝子を復元回収する以外に方法が無かったんだよ…。」

 

 「…御身体、大丈夫ですか…?」ミーユが、酷く心配そうに。

「全然大丈夫!」マミが、微笑む。「…胴体喰い千切られたと見せかけて

もう実体はオーロラ化してたから、痛みも全然無かったし!」

「…済みません…、わたしの無理なお願いに応えようとして…」酷く

申し訳なさそうにうつむくミーユに、

「いや、だから、大丈夫だって!」と、マミが、

わずかにうろたえ気味に、「…心配かけてごめん…」

「…勇者様…」ミーユの瞳に、涙が。

 

 「ゴガアアアアアアッ!!!!!!!!」苛烈に再生していく

カオスキマイラが、無数の虹色の光条に全身を斬り刻まれた激痛に

狂い悶え、4億ボルトの雷光と絶対零度の吹雪と3万度の炎を

間髪入れずに連続乱射し続け、カオスパイソンの群れも荒れ狂って

マミ達4人に間断無く襲い掛かり続ける。

絶対零度の冷気と3万度の熱が相殺し合う事も無く、

むしろぶつかり合い、激しい爆裂が無数に発生して、容赦無く4人を襲う。

 

 マミが、虹色の光を全身に纏い、盾になって総大主教を護りながら、

虹色半透明の球状の光のバリアー「レインボーバリアー」を展開して、

マミ自身と総大主教とミーユとフレナを包み込んで完全に防護し、

「…総大主教を、頼む…!」と、ミーユとフレナに告げて、

軽く、後ろに翔んで、レインボーバリアーの外に出る。

 

 「勇者様…!」「マミちゃん…!」ミーユとフレナに見つめられながら、

マミが、カオスキマイラの方に振り向く。

 

 「…友達を想い、平和を願う、その心を踏み躙ろうとするのなら…、

このおれが許さん…!!!!!」マミが、カオスキマイラを見据え、

決然と告げて、

 

 左右の手の2本のレインボーブレードを頭上で重ね合わせ、

膨大な虹色のエネルギーをその刃に凝集させ、

刃の長さだけで2メートルを超える1本の虹色の光の大剣に

レインボーブレードを変化させて、右の腰脇に、両手で、

剣先でやや斜め上空を狙う様に、構える。

 

 「ギアアアアアアッ!!!!!!!!」吠えるカオスキマイラの

雷光と吹雪と炎を無数に浴びながら、傷も凍傷も火傷も一切負う事無く、

飛翔したマミが、レインボーブレードを、

カオスキマイラの胸部中央、心臓部目掛けて、撃ち込む。

 

 無尽蔵の虹色のエネルギーがレインボーブレードからカオスキマイラの

心臓部へ、全身へと、注ぎ込まれて、カオスを焼き尽くしていき、

 

 無造作に後ろに5メートル程飛んでレインボーブレードを引き抜いた

マミが、右手のみでレインボーブレードを握り締めて、

超高速で飛翔しつつ、マミ自身の左の腰脇辺りに構えた

レインボーブレードを右上へと一瞬で斜めに斬り上げ、

カオスキマイラの傍らを一瞬で通り過ぎて、

 

 ふと、振り向きながら、左下に、右下へと、くの一文字を描いて

一瞬で右手の剣を鋭く振り下ろすマミの仕草と同時に、

 

 全長40メートルを超えるカオスキマイラの巨体が、

容赦無く両断され、爆散して、虹色の光に焼き尽くされ、

黒紫の光粒子へと散りながら、消えていく。













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