9 マミ ヴァルテ神殿へ

 

 

 

***

 

 

 「…それに…?」思わず、フレナとミーユが、同時に、マミにたずねる。

 

 マミが、唇を噛み締める。「…フレナも、ミーユも、

戦争を起そうとしてる奴に、命を狙われてる…!。…フレナを襲った

奴らは、昔の戦争時代に人間族が対竜族用に使ったディクトグラスを

使ってた。…今、ミーユを襲ってきたのは、戦争時代に竜族が対人間族用に

魔法科学で開発した生物兵器、カオスワイバーンの

アンデッドバージョンだ…。

フレナを殺して、それをどうにかして人間族の仕業に見せかける、

ミーユを殺して、それをどうにかして竜族の仕業に見せかける、

それを、開戦の切っ掛けにする、そういう意図が有って襲撃してきてる様にも

思えるんだよ、おれには…!」

 

 「…!!」フレナも、ミーユも、少し青ざめて、身を震わせる。

 

 「…そばにいてくれれば、二人とも護れる!、だから、

その為にも、二人にはおれのそばにいて欲しいんだ…!!」と、マミが。

 

 ふと、ミーユが、愕然と、「……そういえばわたし、マミ様に命を

救って頂いたのに、お礼も言ってなくって…、

すみませんっ!!、本当に、ありがとうございました…っ!!」

慌てながら、股間辺りで両手を重ね合わせて、深くお辞儀する。

フレナも、「…そういえばわたしも、マミちゃんに命を救ってもらってて、

何のお礼も……!」と、何だか申し訳無さそうな表情に。

 

 「!!っ、お礼なんていいって!!、…おれは、おれ自身の為に、

したい事してるだけなんだから……!」と、マミが、

心持ちうろたえながら。

 

 「…ご自分の、為に…?」思わずなんだか不思議そうに、ミーユが。

 

 はにかみつつ、少しばかり情けなさそうな表情で、マミが、「…おれ、

今は女の子の身体になってるけどさ、…この世界に転生する前は、

30歳の男だったんだよ…、可愛い女の子が大好きな。」と、ふと、

真摯な瞳になり、「…この世界に来て、フレナっていう友達思いの可愛くて

素敵な女の子に出会って、その子の、友達と戦いたくないって想いに触れて、

その友達のミーユっていう可愛くて素敵な女の子に出会って、その子の、

友達を想う気持ちに触れて…、

この子達を友達同士で戦わせちゃいけないって、心底思ったんだ…!!」

 

 「……!!!?」ミーユの頬が、すごい勢いで真紅に染まっていく。(…ぇ、

ええええっ!!?、マミ様って…、殿方だったの…!!!?)思わず、先程、

マミの小脇に抱きかかえられた時の、ウェストより少し上辺りの肌に感じた

マミの腕の感触を、反芻してしまって、(…わたし……わたし…、命を助けて

頂いた殿方に抱きかかえられて……、あれ、でも、今はマミ様は女の子の

身体な訳で…、…でも、心は殿方な訳で……、ええええ…っ!!!?)

ミーユの鼓動がどうしようもなく激しくなってしまって、

どうしようもなく、胸が、熱く、甘く、うずいてしまって、

一層、深紅に、ミーユの頬が染まってしまう。

 

 「…あの、ミーユ…?」マミが、少し、恐る恐る。

「!!!っ、はっ、はいっ…!!!」ミーユが、思わず、びくんと震える。

マミが、思い切り気まずそうに。「…その、おれが元は男だったって

言ってなくて…、…嫌な思い、させちゃった…?」

「!!!!っ」ミーユが、思いきりうろたえて、ほのかに身をよじる。

「そっ、そんなっ!!!!、そんなこと全然ありませんっ!!!!、

マミ様には、心から感謝してますっ!!!!」

マミが、少し、安心した様に、「…なら、いいんだけど……」

 

 (…ミーユ……)傍らで、フレナが、思わずミーユを見守ってしまっている。

 

 「…あの、えと、とにかく!!、ヴァルテ神殿へ行こう…!!」と、マミが、

慌てながらというか些かうろたえながら、ミーユとフレナを巻き込んで、

転移魔術を発動させ、

「ぁ…!!?」「ふぁ…!!」ミーユとフレナが、思わず、戸惑ってしまって。

 

 

 

 黒い雲に覆われた夜空の下、ヴァルテ神殿の門前に、

不意に、転移魔術の光粒子が舞って、マミ達3人が現れる。

 

 転移魔術完了直前に、咄嗟にフレナが、

気配を消す灰色のマントを実体化させて羽織る。

 

 「!!?っ、何者っ!!?」驚愕しつつ、警護中の2人の

ハイレグビキニアーマー装備の神聖騎士の美少女が、

白銀の剣を抜いて身構える。

「緊急事態だ!!。総大主教様にお会いしなくてはならないんだ!!。

悪いけど、通らせてもらう!!」マミが、少し焦りつつ。

「通せる訳が無い!!。一体何者なんだお前達は!!?」洗脳波動の

影響下のせいか、マミが勇者だと咄嗟に認識出来ていない少女達に、

思わず、ミーユが一歩踏み出す。「!っ、この方は、畏れ多くも

神界の勇者様、マミ・レインヴェリア様にあらせられます!!。

勇者様が総大主教様に至急にお会いしなければならない御用が

おありなのです!!。お通し下さい!!」

「!!!!」咄嗟に波動照会して、思わず、

少女達の面差しが蒼白になる。「っ、勇者様っ!!!?、

しっ、失礼致しましたっ!!!!、どうか、お通り下さいっ!!!!」

少女達が大いにあせって、左右に後ずさり、ひざまずいて、道を開ける。

 

 (…水戸黄門かよ、おれ……)そんな事を考えている場合ではないのだが、

思わず、マミが、内心苦笑気味になってしまいつつ、「すまない!!」と、

軽く頭を下げて、神殿内に駆け込み、ミーユとフレナも

些か焦りつつ後を追う。

 

 (…そういえばレインヴェリアってヴェリアに選ばれた勇者が

名乗らなきゃいけない姓だっけ…、…マミ・レインヴェリア……、

うわ、なんか語呂が悪いい……)どうもそんな事を考えている場合では

ない時に限って、余計な事を考えてしまっているマミである。




















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