6 マミ ミーユと話す

 

 

 

***

 

 

 マミが、厳しい眼差しで、神聖騎士団の野営地の方を、

見据える。「…ここに来て、嫌な雰囲気をますます強く感じる。

洗脳波動みたいなものの気配を、感じるんだ。」ふと、

マミが、つらそうな表情を浮かべる。「…神聖騎士団の方から、

洗脳波動の気配が、してる…」

 

 「…!!!?っ、洗脳波動…っ!!!!?」ミーユが、愕然と。「…そんな、

わたし達神聖騎士団が、洗脳されて、

戦争しようとしてる、なんて…!!!!?。…でも、でもでも、

騎士団のみんなだって、戦争なんてほんとは嫌だって…!!!!?、

洗脳されてるなら、そんな事言うはず無いんじゃ…!!!!?」

 

 マミが、苦い表情で。「…洗脳だと簡単には気付かせない様な、

巧妙で、悪質な洗脳の気配が、してるんだ……。

…君達ヴァルテ神聖騎士団は、おかしいと思わなかったか…?。

…なんで総大主教が臨戦態勢に入る様に騎士団に命令を下したのか…?」

 

 「…勇者様……」ミーユが茫然として、

フレナが、その様子を見つめつつ、

マミの言葉を噛み締める様に、聴き入っている。

 

 ちなみに、

ヴァルテ神殿の総大主教は、弱冠20歳相当の絶世の美女であり、

可愛らしさと愛嬌と年齢不相応の穏やかな威厳を兼ね備えていて、

要所要所が危うい程に豊満過ぎてそのくせ全体としてのバランスが

絶妙で優美過ぎるプロポーションは、マミも敵わない。

その事をマミはネット上の多くの画像で知ってはいる。

 

 「…戦いの女神ヴァルテは、この惑星エルクヴェリアを創造した

女神ヴェリアの妹にあたる女神で、ヴェリアと同じ様に平和を重んじる女神だ。

戦いと言っても、凶悪犯罪を懲らしめたり、

心の無いモンスターや冥界の魔獣や、そういった存在と戦って

平和が破壊されるのを防ぐ事を良しとされる女神だ。

決して戦争を良しとされる女神じゃない…!!。」

 

 「……!!!!」マミの言葉を理解していくのにつれて、

ミーユの肢体が、震え始める。

 

 「…竜族を相手に臨戦態勢に入る様に命じた総大主教の言葉は、

ヴァルテの意志に反しているんだ…!。

 …ヴァルテは信者に盲信を強制する様な女神じゃない。疑いが有るなら

何度でも訊ね、言葉を交わし、その上で何が正しいのかを見極めていく様に

心ある者を導く女神だ。そのヴァルテの教えを伝えるべき総大主教が

戦争準備を頭ごなしに騎士団に命じて、

騎士団は疑う事無くその命令に従った。

その事自体が、本来ならあり得ない事じゃないのか……?」 

 

 ミーユにとっては信じがたい言葉である。しかし、

その言葉を発したマミは、女神ヴェリアに選ばれた神界の勇者である。

そして何よりも、マミの言葉は、ヴァルテの教えの本来あるべき姿に

完全に合致している。

だからこそ、ミーユは、戦争へと向かう総大主教の今の在り様と

それに疑う事無く従ってしまったミーユ自身の在り様が、

異常であった事に、気付かされずにはいられないのである。

 

 「…じゃあ、なんで、総大主教様は、戦争準備をお命じに……?」

ミーユの幼い面差しが、蒼白に。

 

 マミが、心持ち言いづらそうに。「…総大主教が何者かに洗脳されてて、

神聖騎士団に、ヴァルテ神殿全体に、人間族全体に、

洗脳波動を拡散させていく起点として、利用されているとしか……」

 

 「!!!!っ、そんなっ!!!!、ヴァルテ神殿の総大主教様が

洗脳されるなんて…!!!!?、信徒の中で最も強い神聖波動を司る

あの総大主教様が…!!!!?、…そんな……!!!!?」マミの言葉を

信じざるを得ないのに、どうしても信じられなくて、ミーユの言葉が震える。

 

 マミが、つらそうに。「…君が信じられないのも無理は無いとは思うけど、

でも、君達に影響を及ぼしてる洗脳波動の発生源をガッディスブレインで

探っていくと、どうしても、ヴァルテ神殿そのものの中枢の方へ、

辿り着いてしまうんだ……。」

 

 「……そんな………」茫然と、両膝を突いていたミーユの上体が、くずおれて、

かろうじて両手で上体を支えて、四つん這いになる。

 

 その、四つん這いのミーユが四肢を突いている地面が、

まるで黒紫のガラスの様に砕けて、次元断層が発生し、

「ぅあ…っ!!!!?」落ちてゆくミーユの白い柔肌目掛けて、

3頭の、翼長約2メートルの黒紫に赤い筋の入った

ワイバーン(大型の羽根が有って両腕が無い飛行型の竜種)が、

両脚の黒紫の粘液まみれの大型の鉤爪を撃ち込もうとして、

 

 「危ないっ!!!!」咄嗟にマミが、

マントを外して消滅させ、重力制御での飛翔能力を発動させて、

ミーユに飛び付いてミーユのウェストのくびれより少し上辺りに右腕を回して

ミーユを小脇に抱え、素早く飛んで、

ワイバーンの鉤爪をミーユとマミ自身に触れさせない様に、

寸前で回避し、同時に、

一瞬で発生させた、

刃が虹色の光粒子を凝集して両刃剣の刃状に形成されている大型剣、

「レインボーブレード」を左手で、一閃、翻し、

その刃がワイバーンには触れていない様に見えたのに、

3頭のワイバーンの肉体にごく薄い虹色の光の筋が走ったかと思うと、

3頭とも鋭く両断されてしまい、

その切断面が鏡面となって黒紫の光を反射させ、

 

 (…凄い…!!!)思わず、見つめているフレナが、心の中で叫ぶ。

 

 (…うわなんかすごく気持ちいい感触……!!!!)パーツアーマーを

装着した腕なのに、素肌の様な感覚で触れたものを感じ取る事が出来て、

小脇に抱えたミーユのウェストのなまめかしい柔肌が、

なめらかであまりにも心地良くて、思わずマミがほのかに頬を染めてしまい、

 

 (……!!!!)マミの右腕に抱かれて、なぜか、

心臓の鼓動が高鳴ってしまって、

ミーユの可愛らしい頬が、真紅に染まる。

 

 さらに激しく地面が砕けて次元断層の黒紫のガラスの破片が無数に飛び散り、

次元重力で深淵へと飲み込もうと、フレナを含めた3人を落下させていき、

その3人の周囲の黒紫の空間に、

39体の、翼長2メートルの黒紫のワイバーンが展開し、包囲態勢に入る。












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