5 マミ ミーユと出会う

 

 

 

***

 

 

 夜の森の中の少し開けた空き地に、フレナと共に転移したマミが、

月明りの下で、闇の中の山脈の方へ、視線を投げ掛ける。

「…この山脈の中の資源の奪い合いで、戦争寸前になってるのか…。」と、

マミが、何気無く、マントの前面を開いて、

 

 右腕を、空を薙ぎ払う様に振るい、左腕を、薙ぎ払う様に振るい、

 

 神界波動が、密かに響いて、消える。

 

 「…何をしたの!?」マミが何かをした事は感じられても、それが何か

まるで解らなくて、フレナが、思わず。

 「…超次元感覚で観てみて。」と、マミが応える。

 

 通常の感覚が三次元に存在するものを感じ取る能力なら、

三次元を超える超次元に存在するものを感じ取るのが、超次元感覚であり、

高位の竜族や他の種族でも高レベルの魔術能力等を有する者達のみに

備わっている能力である。

 

 「…超次元結界…!?。

山脈全体を不可視の結界で覆ったの…!!?」フレナが、愕然と。

 「…結界に入ろうとすると精神的な拒否感が強く働いて

肉体が結界内に入るという行動を拒否してしまう、そういう結界で

誰も山脈に入れなくしてしまえば、取り敢えず、

人間族と竜族の直接戦闘は防げるんじゃないかって、思ってさ。

いきなり気付かれる様に結界張るのもどうかと思って超次元結界に

してみたんだけど…」と、少し苦い眼差しで何気無く言うマミに、

 

 「…これが、神界の勇者の、力…。…桁が違い過ぎる…。」フレナが、

茫然と。

 

 「…さてと、問題はどうやってミーユちゃんに会うか、なんだけど…」

 「!、それはわたしに任せて…!」と、どこからともなくフレナが、

2センチ程の大きさのハート形のアイテムを二つ取り出す。「…これ、

ミーユとこっそり連絡取る時の為に二人で分けて持ってるアイテムなの。」

 

 フレナが、二つのハートを横に並べて接続すると、

ハートがほのかな虹色の光を放つ。

 「…こうすれば、ミーユの持ってる方に音を立てずに極秘の波動で

シグナルが届くの。

これでミーユが『わたしが近くに来てる』って気付くはずだから…!」

 

 息をひそめて30分程過ぎた頃。

 

 息をあえがせて、胸元と腰周りに

純白に淡く水色を刷いたハイレグビキニアーマーを纏った

年齢12歳相当の美少女が、森の木々の合間から、現れる。

首元と、両の太股の半ばから両足の爪先にかけて、

両の二の腕の半ばから両手の指先にかけての、計5か所にも、

純白に淡く水色を刷いたパーツアーマーを装着している。

濃い茶色の瞳で髪も濃い茶色でほんの少し長めのショートボブは

肩のラインに届くか届かないか。

フレナより些か華奢で優美な肢体で、

優美な血色のたおやかな柔肌が思い切り良く露わで、

要所要所はなまめかしく大胆に豊満に育っている。

おとなしい印象の面差しが、愛らしい。

 

 (うっわ、可愛い…!!)思わずマミが頬を染める。

夜の闇の中なのでさほど目立たないが。

 

 「…フレナ…!!!」ショートボブの髪型の美少女が、

急いで接続した二つのハートを取り出し、

即座にフレナが差し出したフレナ側の二つのハートと接続すると、

四葉のクローバーの形になって、穏やかな虹色の光が放たれる。

 

 「…ミーユ…!」思わず瞳に涙を浮かべるフレナに、

 「…フレナ…!、フレナァッ!!、…会いたかった…!!!」と、

ショートボブの美少女が、ミーユが、思わず泣いてしまいながら

飛び付いて、二人、強く抱き合う。

 

 「こんな時に呼び出してごめんなさい。抜け出して、だいじょぶ…!?」

 「隊長には偵察行動に出るって言って出て来たの。だから、だいじょぶ!」

 「…ごめんなさい…!」

 「いいの!、わたしも、フレナに会いたかったから…!!」

 

 ミーユが、酷く肩を震わせる。「…神聖騎士団のみんなだって、

戦争なんて、望んでない…!!!。…でも、総大司教様の御命令が出れば、

神聖騎士として従わない訳に行かないから…!!!。

…でも、それでも…!!、わたしやっぱり、

竜族の方達を傷付けるなんて、出来ない…!!!。

フレナと戦うなんて、出来ない……!!!!。

…騎士団のみんなにも、戦争なんかで傷付いて欲しくない…!!!。

……わたし、もう、どうしたら……!!!!。

…もし、戦場でフレナと会ったら、どうしようって、

そればっかり考えてて……!!!!」

 

 「…ミーユ……」フレナの頬を、涙が伝い続ける。

 

 ミーユが、唇を噛み締めて。「…フレナ、もし、

戦場で会う事になっちゃったら、

その時は、わたしを殺して……!!!!」

 

 「…!!!!」マミが、肩を震わせる。

 

 「!!!!っ、そんな事言っちゃだめ…っ!!!!」フレナが、

思わず。「…わたしにミーユが殺せる訳ないじゃない…!!!!」

 「…でも…でも…っ…!!!!、…わたし…もう…どうして…いいか…

…分からな……っ…!!!!」ミーユが、泣き崩れる。

 

 「…許せないな…!!」マミが、抑えた声音で。

 「!、ほら、マミちゃんだって命を粗末にしちゃいけないって…!!」と、

フレナが何とかミーユを励まそうとして、

 「…!!!!」ミーユが酷く肩を震わせて泣きじゃくり、

 

 「あ!、ごめん!!、その、『許せない』って言ったのは、

君を悪く言うつもりじゃ、なくて…!!!」と、

マミが、ミーユに、少し慌てながら。

 

 「…フレナ、この人は…?」と、訊ねるミーユに、

 「そっか、気配消してるから波動で感知出来ないんだ…。」と、

フレナが。「…この人は、神界の勇者様なの。名前は、マミっていうの。」

 

 「!!っ、勇者様っ!!!?」慌てて、うろたえながら、ミーユが、

マミの方に、片膝を突いてひざまずく。「…お初にお目に掛かります!、

ヴァルテ神聖騎士団のミーユ・ストリンガルと申します…!!」

 

 「あ!、いや!、そんな!、かしこまってもらう必要なんて、ないから!、

別にその、普通にしてもらえれば…!!」マミが、あせりながら。

 「…勇者様…?」思わず見上げるミーユに、

 「…マミでいいよ。」と、マミが、苦笑気味に、微笑み、

その微笑みを消して、厳しい表情で、「…おれが、

『許せない』って言ったのは、君をそこまで追い込んだ、

人間族と竜族に戦争させようとしてる、何者かの事なんだ…!!!」











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