2 マミ フレナと出会う
***
光り輝く豊かな黄金の髪は、ポニーテールに纏められて、
悩ましく細いウェストのくびれ辺りまで伸ばしてある。
美しい瞳は深い紅。
正美改めマミにはわずかに及んではいないが、要所要所が豊満で美しい、
素晴らしいプロポーションの年齢13歳相当の美少女が、
一糸纏わぬ裸身をさらけ出して大浴場に入って来て、
「…あら?」と、ふと、マミを、
悠然とも無垢ともつかない落ち着いた雰囲気の眼差しで、見つめる。
「…!!!!っ、うわぁああっ!!!!」
人間うろたえると何をするか分からないと言うが、
瞬時に幼い面差しを真紅に染めたマミは、
咄嗟に両手で自身の股間を隠していた。
乳房はさらけ出したままである。
金髪の美少女が、表情を変えずにマミの方へ歩み寄ってくる。
「!!!!」マミが、震える。
間近に迫った金髪の美少女が、暫し、マミを見つめ回して、
「…神界の勇者は前触れも無く現れる、か……、
…伝説の通りなのね……」と、
無垢の様な落ち着いた様な声音で、独白する。
「…解るのか!?」思わず、驚愕混じりに叫ぶマミの脳内に、
「…っ!」また、新たな情報が伝わってくる。「…君は、
竜族なんだな…?」
マミの眼の前の金髪の美少女は、今は人間の形態に
自己を変化させているが、本来の姿は竜であり、
その事がマミには感覚と知識の両面で理解出来る。
「…神界の勇者は全てを見通す、…これも伝説の通りね……、
…あなた、元々は男の人なのね……?」
「!!っ、それも解るのか!!!?」
「竜族の認識能力はその位見通せるわよ。」
「!!!!っ、ごめんっ!!!!!」大いにあわてて、一層頬を染め、
両手で股間を隠したまま横向きに視線を逸らそうとしつつ、
金髪の美少女があまりにも堂々として自身の裸身を隠そうともしないせいか、
ついそちらに視線を向けてしまってもいるマミである。
「何で謝るの?」
「いやその、中身男のおれが、君の裸、見ちゃって…」
「…わたしは別に気にしないわよ?」
「気にしないの!!!?」
「…竜を描いた絵だって、服着た絵なんて描かないでしょ?。
確かにわたしは今は人間の姿にしてるけど本質は竜だもの。
竜は自分の肉体を風にさらすのが好きなのよ。」と、
金髪の美少女が、無垢に微笑む。
「あー、いや、でも、その、今は人間の姿な訳だし…」と、
頬を染めたままうろたえ戸惑うマミに、また、微笑みつつ、
「わたし、フレナ・グラストっていうの。」と、金髪の美少女が名乗る。
「…フレナか…。」
「…あなたのお名前は?」
「!!、あー、えーと、…取り敢えず、
マミとでも呼んどいて!」(…何でこうセンスの無い名前しか
思いつかないかなあおれ……)
「…マミ、か…。転生してきた異界の勇者っぽくもあるわね…。」
「!、あ、そう…?」(…そうか、こっちの世界じゃ、
マミの方が異界の名前っぽくなるんだ……)
ふと、フレナの表情に、陰が過ぎる。
「!、…どうしたの…?」思わず、マミが心配する。
フレナが、少しうつむく。「…あなたが勇者なら、
聞いて欲しい話があって…」
不意に、
13体の人影が、上から、フレナとマミ目掛けて、降ってくる。
殺意、ではなく、殺傷プログラム。
さらけ出されたマミの素肌が、殺傷プログラムを人影から感じ取るのと、
マミが身を翻して、直立した右脚の親指の付け根で肢体を支えつつ、
高くほぼ直上に瞬時に振りかざした左脚の爪先で、一体の人影を
撃ち砕いて縦に両断するのが、同時であった。
「メタルアンデッド!!?」フレナが、愕然と叫ぶ。
エルクヴェリアでは、死後の世界である冥界から生者の世界へと
侵攻してくる邪悪なモンスターをアンデッドと呼称している。
「…魔法科学でサイボーグ化されたゾンビ、か、…!」と、
鋭くマミが周囲に視線を走らせる。
残り12体と砕かれた1体を含む全機が、
身長約2メートルで、細身の人型で漆黒の甲冑で全身を覆っており、
漆黒の粘液に濡れた剣を手にしている。
その12体が一斉にフレナに襲い掛かり、咄嗟にフレナが
両手から放った竜族のオーラの光球が1体を粉砕するが、
残り11体の剣がフレナの優美な柔肌目掛けて撃ち込まれて、
瞬時に、フレナの周囲に円を描く様に、マミが身を躍らせて、
どことなくフィギュアスケートにも似て優美な裸身を旋回させつつ、
手刀で2体、膝蹴りで1体、何気無くジャンプしつつ
水平後方回転蹴りで3体、正拳突きで吹き飛ばした1体を
もう1体に激突させてまとめて粉砕し、
ハイキックの勢いで1体の上半身を吹き飛ばし、次の瞬間
身の捻りを加えた踵落しでもう1体、その次の瞬間には
鞭の様にしならせた蹴りで1体を横に両断し、
11体全てを剣ごと全て撃ち砕いてしまう。
フレナにはかすり傷一つ付いていない。
剣を濡らしていた漆黒の粘液が、マミの手足に付着し、
マミの白い柔肌にも細かく散っているが、
光粒子に変換され浄化されて、消えていく。
「…ディクトグラス…、竜族を殺す為の毒かよ…!!」漆黒の粘液の正体が
情報として脳に流れ込んできて、思わず、怒りがマミの口から洩れる。
「!!!!っ、大丈夫なのっ!!!!?」フレナが、悲鳴混じりに叫ぶ。
「え?、別に、かすり傷も…」
「ディクトグラスは竜族だけじゃない!!、人間や他の種族にとっても
猛毒なの!!!!。ほんのわずか触れただけでも命に関わるくらいで、
いくら神界の勇者でも身体は人間族なんだから……!!!!?」
ある事に気付いてフレナが愕然とする。
「…全く毒の影響を受けてる形跡が無い……。そんな、
いくら勇者だからって、ディクトグラスが全く効かないなんて……!!!!?」
「…そんなに凄い事なのか?」知識がどうとかよりも感覚的に解からなくて、
マミが、何気無く。
暫し、沈黙が流れて。
「…あなたに、聞いて欲しい事があるの…。」フレナが、口を開く。
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