1 マミ 登場

 

 

 

***

 

 

 「…か……可愛い……!!!!!」

 

 鏡に映っている正美自身の姿に、思わず叫んでしまい、

その、正美自身の声音の、この上ない可愛らしさに、

呆然としてしまう正美であった。

 

 全身が映る大鏡に映し出されているのは、この上無く可愛らしい

一糸纏わぬ美少女である。

二つの乳房の丸みも尻の丸みも太股も十二分に発育していてとても優美で、

ウェストは思い切り細くくびれていて、

生命力あふれる澄み切った血色を刷いたたおやかな柔肌が可愛らしく美しく、

身長は145センチぐらいで小柄なのに、両脚が長くてきれいで、

プロポーション全体が、全てが、完璧以上に優れていて、悩ましく可愛らしく、

対照的に面差しは幼女の様に幼い。

円らで大きな可憐な瞳は、蒼く、

豊かなストレートの蒼い髪は、乳房の丸みの下の裾野辺りまで届いている。

それは、紛れも無く、今の正美自身の姿である。

 

 水野正美(ミズノ マサミ)、30歳。地球人であり日本人であり男であり、

いわゆる「美少女満載萌えアニメ」好きの底辺の労働者である、はずである。

だが、今の正美は、どこからどう観ても、

性転換を完了して完全に年齢12歳相当の美少女に変化してしまっている。

 

 ワンルームマンションで「そろそろ寝るか」と思い始めて、

不意に、足元から迸る虹の七色の光の柱に飲み込まれて、

気が付けば、大理石の巨大建築の内部らしい大浴場の大鏡の前だった。

 

 (…これが、異世界転生、って奴か……、

…それにしてもここまで俺好みの可愛い女の子に俺自身が、って、

…何なんだよこれ……)

 

 正美自身の二つの乳房の膨らみに視線を向けてしまい、

正美自身の可愛らしい臍に、可愛らしいお腹のなまめかしい柔肌に、

色々な所に視線を彷徨わせてしまい、

思わず頬を染めてしまっていて、

その紅潮した正美自身の頬の可愛らしさに、

また戸惑ってしまう正美でもある。

 

(……!!!!?)

 

 不意に、正美の脳内に、直接、情報が流れ込んでくる。

例えて言うなら、脳に直接インターネットが接続されていて、

一々検索しなくても欲しい情報が瞬時に流れ込んでくる状態、といった所か。

 

 (…ここは異世界で、惑星エルクヴェリア……、おれは神界の勇者として

性転換と肉体変化を完了した上でここに転移させられた……。

今のおれの頭脳はあらゆる情報を瞬時に得られる特殊頭脳

『ガッディスブレイン』……、そして今のおれの肉体は

全ての細胞が神界波動の発生源になっている『ガッディスバディ』……)

 

 (……いきなり超駆け足で脳内に直接状況説明されても困るんだけど。)

 

 思わずため息をついて苦笑する今の正美自身の表情すらも

むちゃくちゃ可愛かったりして、

 

 (……どうしたもんかなあ、これ。)さらにため息が出てしまう。

 

 (……普通いきなり情報が脳に流れ込んだら頭痛になったり

しそうなもんだけど、特にどうって事も無いな……)

 

 (…大体何で、おれこんなに落ち着いてるんだろ……?

おれこんなに腹据わった奴じゃないだろ……?)

 

 (いきなり身体が女の子になっちゃってちょっと現実感無いって感じも

あるけど……、うーん、何なんだろなあ……?)

 

 ふと、肉体で感じるものがある。

 

 30歳の男だった頃の正美の身体には、

常に疲れとだるさがのしかかっていた。

 

 今、12歳相当の美少女になってしまっている正美の肉体には、

はち切れそうな程の心地良過ぎる生命力が満ちあふれている。

 

 自分で自分の肉体が、この上なく気持ち良い、

そんな感覚が、今の正美の全身に満ちている。

 

 (…身体がこんなだから、心もなんか、今までと違っちゃってる……?)

 

 (……今のおれは、俺で、だけど、俺じゃない……)

 

 (……だけど、今、おれは、俺が俺でないのに、

その事を怖いとも思ってない……)

 

 (……俺、壊れちゃったのか……?)

 

 思わず、哲学的な懐疑を抱いてしまう正美である。

 

 (……今までの俺が壊れて、…新しいおれになったんなら…、

……なんかもうかえってその方がいいんじゃないか……?

…なんかもうそんな気分がしてる……)

 

 ふと、鏡に映る正美自身のとてつもなく可愛い女の子の面差しを、

見つめてしまい、

 

 (……せっかく異世界で女の子になったんだから、正美じゃなくて、

何か別の名前にした方がいいかなあ……って、

何考えてるんだよ、おれ……)また、苦笑してしまう。

 

 (……うーん……、なんかいい名前ないかなあ……。…何かこう、

異世界らしく、勇者っぽく、もっと女の子らしく……、

そりゃま確かに正美も女の子に聞こえるけどさあ…、

…うーん、何かこう、ほら……)

 

 「……マミ、

って、なんだよそれ全然異世界らしくないー!!!!、

何でそこまでネーミングセンス無いんだおれーー!!!!」と、

思わず声に出してしまっている正美、否、マミであった。

 

 

 「…あら?」

 そこへ、一人の一糸纏わぬ美少女が入って来る。









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