二章魔王軍領ディーレ編

第20話〜最弱と思われた僕が開花した能力が実は最強クラスで僕を追放した国にきっちり報復します〜

欧斗は見たことも無い街に飛ばされていた。空の色も灰色で渇ききった地獄のような貧民街だった。 その中で欧斗は怒り狂っていた。


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそぉぉおおお!!!!」


だが受けたダメージで気を失ってしまう。どうやら相当こっぴどくやられているようだった。

なんだ・・・?誰が僕を・・・?

失いそうな意識の中誰かが僕を助けたのを感じた。回復能力のようなもので自分の体が癒えていくのを実感していた。

  誰だ・・・?いない・・・?

欧斗が意識を取り戻す頃には誰も居なくなっていた。ただ一人欧斗は貧民街で残される。


「僕は王になる・・・!! そして国王の薄汚い悪意を断ち 地獄の底に送ってやるんだ・・・!!」


欧斗の手は強く握りすぎて痛めるほどだった。

だが右も左も分からない貧民街で辺りを迷う。 どうやらかなりの距離を飛ばされたということを自覚した。


「おいおい おいおいおい 君ってばもしかしてお外から来たのかい〜? 」


不気味な肌の色が青白い男が笑いながら近づいてきた。


「なんだ 君は ていうかここはどこなんだ?」


「ここは魔王軍領だよぉ? 自分のいる場所すら知らないんだなぁ」


魔王軍領… どうやらかなりの距離をワープしたみたいだ。欧斗はそう思った。もはや魔王軍領とは国ではない。 犯罪が溢れかえる世界で1番残酷な街と言ったところだ。


「とりあえず金目のものだしなよぉ  あるんでしょ」


「あはは 無いよ それにしても君に ちょっと聞きたいことがあるんだ」


欧斗がそう言った瞬間魔法の糸で首の周りを包囲する。 糸の強度を見せるように糸で首を少し切ってみせる。


「て てめぇ 変な力を持っているみてぇだな なんなんだ一体」


「君もここで生きていく上で仕方なくやってるんだろ? ボスのところに案内しなよ」


そう言われるがまま男は寂れた路地裏に着く。すると大男が数名とその中にリーダーが居る。


「なんだおめぇ?」


そう言いながら大男はこちらに向かってくる。


「君たちに取り引きしに来た」


欧斗はまた糸で全員を包囲する。


「僕は君たち程度なら一撃で殺すことができる 案内してくれないか? この街全体を統括している奴がいる筈だ そいつと直接会って話がしたい 誰か知っているものはいないか」


そう言われると大男は汗を流しながらコクリと頷いた。

***


欧斗が案内された暗がりの館へ入って行く。 窓からのみ光が僅かに差し込む。その瞬間首筋に血が流れる。 後ろから刃物を当てられている。かなり身軽な格好をした赤髪の黒いスーツの女だった。


「あんた 何の用だい 見るからにこの街の部外者だろ」


そう言うと欧斗は答える。


「ああ そうだ 実は僕は君と取引をしたい …だがどうやら君は僕より上手のようだ だけどさ」


その瞬間欧斗が刃物を糸を絡めた手で握り締め潰す。


「お互いやりあうのは良さないか 本気でやり合えば少なからずお互いに損害は出る だから1つ取引の提案をしたいと言っているんだ」


「取引…? 内容を教えて」


そう言うと女は欧斗の前に出る。


「僕と一緒にこの街に限らず魔王軍領全て支配しないか? 僕ならばそれが叶う」


「あなた…本気で言ってるの…?」


「僕は本気だ だから君にこの街の部下達全ての統括を僕に委ねて欲しい」


女は驚いたような呆れたような顔で欧斗を見る。


「そんなこと… できる訳…」


「なら僕はこの街の民を殺して回ろう きっと僕1人の実力では全員は殺せないだろうが大きな損失は出るはずだ さぁどうする」


彼女はため息を零しながら言った。



「狂ってる… けど あんたは本気でやりそうな目をしている 全てを憎むような」


そういうと彼女は続けた。


「わかったわ でもただ一つだけ 兵隊共の命を無闇に使わないこと、こっちだって兵は少ないし貴重な存在。 その時点で止めさせてもらう それだけよ」


「ああ 僕の方からも一ついいかな・・・」


そう言うと欧斗は手から無数の糸を出し暗闇に潜む兵を全て捕らえた。全員が欧斗の命を狙わんと刃物を持ち待ち伏せていた。


「こういう探り合いは辞めよう 僕は欧斗 僕は君を信じる だから君も僕を信じてくれ」


女は驚いた顔で欧斗を見つめた。


「油断も隙も無いのね わかったわ 私はラズベリ よろしく頼むよ」


そう言うと2人は軽く握手をし、奥へと進んで行った。


「それはそうと、あなたの最終的な目的を教えてよ。金?富?地位?」


欧斗は拳を握り締め人を殺すかのような目で答える。


「報復だよ、僕を追放した国への。あいつらを一人だって残さずに始末する」

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