第16話〜それぞれの思惑〜
その日、洞窟で一日を過ごした一同は次への作戦を練る為に会議をしていた。
「僕の能力は君達には隠さずには言っておこう。殺した人間の能力を奪う能力、もっともまだ一人しか能力を奪ったことは無い」
欧斗は自分の能力をシイナとアルト、そしてエルナに伝える。三人はその能力に驚いた表情を見せる。
「殺した人間の能力を奪う・・・恐ろしい能力だね」
アルトが恐る恐る口にした。
「あぁ、これにリエルの魔力を増強させる能力が加われば凄い効力を得られるが、罪の無い人間を殺して奪おうだなんてことは僕も考えてはないよ」
欧斗は一同を安心させるべく自分の心中を話してみせた。
・・・俺が持っている糸を発現させ操る能力、リエルは魔力増強、そしてアルトは移動魔法にエルナは千里眼。シイナは妖精に干渉が可能と言ったぐらいで逆に足でまといになるか。それなら・・・
欧斗がそこまで考えを巡らせた時点である閃きが体内を電流のように駆け巡った。
「僕の思い付いた計画を今から話す、よく聞いてくれ」
***
「そうか・・・逃げていたか」
王宮内部では兵からリューガに情報が行き届いていた。どうやら欧斗達が逃げたという報告を受けているようだ。
「はい、申し訳ございません。目を離した隙に居なくなっていて」
「あぁ、良いんだ。レドラの子だと言うからどれほどかと思ったが戦闘力的には大した驚異にはなりえない。何をしでかすかは分からないが王選ではとにかく警戒をするようにしておこう、もう一人森の傍に倒れていた男がいた筈だ、彼からも何か情報を仕入れておくのも良いだろう」
するとリューガは振り向き、五人の兵士達に語りかける。森の傍に倒れていた男とはシイナを襲ったあの野蛮な男のことのようだ。どうやら彼は王国に保護されているらしい。
「君達にも護衛は任せておきたい、頼むよ国を守る戦士達よ」
「はい、仰せのままに」
その五人は跪いてリューガに返事を返した。
「にしても、メイアの奴は姿が見えないな」
***
その頃、メイアは自分の率いている騎士達を王宮の外の裏庭に全員集めていた。
「皆さん、少し重大な事をお伝えしなければなりません」
その真剣な騎士達はどよめきを隠せないでいた。メイアはとても真剣な眼差しで騎士達を見つめ話を続ける。
「私はこの国のやり方には従えない。現在魔法の研究や軍の拡大によってどれほどの犠牲が出ているか皆さんも知る所だと思います。少し街から出れば荒地に飢えた民衆、ですがこれらを見過ごし今まで王に従ってきました。それも我慢の限界、罪無き人でも平和の為と称し犠牲を省みないやり方に未来はない。国のやり方に着いていく者もいるでしょう。これは私の独断です。あくまで私に着いてくるのならこの場に残ってください。強要はしません」
メイアがそう言うと騎士達の何人かは見兼ねてどこかへ行ってしまう者もいた。その中の半分程度は居なくなり合計で四十人程残るという結果になった。
「メイア様・・・」
話しかけてきたのはあの時宝石を奪われた女騎士だった。
「どうしましたか、カミナ」
「メイア様が国に反旗を翻そうとしているのはあの時の男の影響ですか・・・」
恐る恐るカミナはメイアに尋ねる。
「そうかも知れません。元々この国のやり方に反感はありましたが欧斗くんの一件の影響も大きいでしょう、とりあえず王選当日に何か行動を起こしましょう。明日策をお伝えします、もう一度この場で」
そう言うと一同は騎士寮に向かって行った。
それぞれの思惑が交差する中、刻々と王選当日へと時は進んで行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます