第11話〜新たな真実が発覚したようです〜

横たわった欧斗がアルトに声をかける。




「これを… 使え」




「これは…!?」




欧斗が結界の中にある糸の束を指さす。




「ここに来る前にリエルに貼り付けておいた糸だ 僕の能力なら… 糸を操作するのではなく出したり消したりする能力なら糸を目に見えないままグルグルに張っておくこともできると思ったんだ… だからここを旋回していた それを結界の中に置いておいた リエルが居るなら僕の魔法はきっとあの中で発現されたままになる…さぁ引っ張ってくれ それを」




その瞬間アルトは身体強化に魔力を使って思いっきり引っ張る。そうするとリエルがその糸に気付き、 欧斗のいる場所まで駆け付けた。




「欧斗…!! 大丈夫ですか…!?」




「おあいにくさまだが魔力を早く込めてくれ…死ぬぞ…」




そう言うとリエルは欧斗にありったけの魔力を込め、 意識を復活させる。




「欧斗… あなたという人は」




「勘違いは…するな これは僕の為にやったことだ これでまた…一歩…進める そうだろ」




欧斗はそのまま疲労で意識を失った。 それをリエルが抱えアルトと共に老婆の元に戻る。




「なんだそいつ かなり無茶したみたいだな まぁ一時的に気を失っているといった所だな」




家の中に入り、 欧斗をベッドで寝かせる。




「じゃあひと段落着いた所であたしが見たものを話すよ 心して聞きな妖精 あんたは…」




リエルは再び冷静な顔をして聞いている。するとゆっくりと老婆が口を開いた。




「信じられんことに妖精であると共に …正真正銘の人間だ これは間違いない こんなことは初めてだ…」




するとアルトも驚きながら答える。




「人間って… 妖精なのに人間… それってつまりさ…」




老婆はこれを聞いて続ける。




「そうだ 人間を依代とした妖精 本来自然物や周りの大気の成分などを駆使して イメージなどから無から有を作り出しているのとは訳が違う そもそも一人の人間に他の成分を掛け合わせ妖精となっている まったくあたしも信じられん」




「可能なの、そんなこと…?」




アルトがさらに質問を続けた。




「何の目的で作り出されどこから現れたのか、 何の目的であの者の傍にいるのかその辺は全て謎だ 、だがこんな複雑な術が可能な者が果たして本当に…いやあいつなら」




そこで欧斗の目が覚める。




「く…やっぱり 体が重い…」




それを見たリエルとアルトが欧斗に駆け寄っていく。




「欧斗!? 大丈夫!?」




「お兄さん、 平気!?」




二人が駆け寄ると欧斗が起き上がる。




「あぁ さっきから意識はあった、そこの老婆が僕に何かを隠しているなら聞くチャンスだと思ったが 、…まぁそれも無さそうだ」




「あはは、お兄さんって最初の印象と違って案外小狡いんだね…」




老婆はそれを聞き真剣な眼差しで欧斗を見つめた。




「そうだな お前になら任せられそうだ アルトリアのことを」




そう言うとアルトが驚いた表情をして老婆に駆け寄った。




「何言ってるのおばあ! おばあを一人残してなんて行けないってこの前も言ったじゃん… アルトはずっと一緒にいるよ…」




老婆は優しげな表情を浮かべた。




「お前は自慢の弟子だった だからこそ色んなものを見て感じて欲しいんだ、精霊術士を目指すものとしてな、その為ならもう命は惜しくないさ」




「おばあ…!! アルトやだよ… おばあと一緒にいたい」




そう言うとアルトは老婆の胸に飛び込み泣きながら服を引っ張る。




「…老婆さん あなた、なんで命を狙われているんだ」




欧斗がそう聞くと老婆はゆっくりと答える。




「そうじゃな… あれは何年も前の話になるんだが私には他にも弟子がいてな、優秀な弟子じゃったが悪い方向に育ちよった、聞いた話じゃ魔王教徒の一味に入ったらしい どうにもそのせいで国には大罪人を育てた魔女として今も扱われておる まったく困ったもんだ、そのせいでアルトリアにもかなり負担が来ておる、相当の懸賞金が入ってるおるのだろう」




欧斗は国という単語に何かがピンと来ていた。




「ならばその大罪人ならリエルを作り出すことも可能ということですか」




「リエル・・・大層な名を付けたもんじゃの まぁ奴ならば可能かも知れん」




何故か自分を狙う衛兵達、王族である自分 そしてリエルの存在 何かが一つの線で繋がりそうな予感を感じていた。すると老婆に対してまた話し出す。




「お前にアルトのことを任せるというのがさっきの条件だ」






「わかりました、実は顔見知りに騎士団を率いる女性がいましてね、その人にあなたの護衛を任せられるか聞いてみましょう、あなたの言った通りの条件は呑みます、だが僕にもやらなければならないことがある、だから騎士にあなた達の護衛を任せます、それならアルトを僕に引き渡す必要も無いでしょう」




すると老婆はふと笑った。




「本当にお前のような面白い若者は初めてだよ 、だがその騎士団は信用できるのか、その点少し疑わしい所だが」




「大丈夫です、彼女は今国に対して不信感を抱いている、きっと僕の方を信じるでしょう」




その会話を終え、欧斗達は外に出た。老婆とアルトが2人を見送るように家の前に立っている。




「では僕はすぐに戻ります、この一晩に限りお気をつけてください」




欧斗がそう言うとリエルがふと笑っていることに欧斗が気づき声をかける。




「おいおいお前、そんなキャラか?」




「欧斗こそ今回はアルトが心配で助けたんですよね」




「ふ、 さっきも言っただろう…断じて違う!」




欧斗とリエルがやいやいと話しているを見てアルトが二人を見て呟いた。




「二人、意外と仲良いんだね」




そんな二人を見て老婆は呟いた。




「まぁ完全にあの者のことを信用した訳ではないがね、元より保険はかけてある」




完全に二人が見えなくなった所で二人の背後に声がかかる。




「ねぇ 久しぶり」




「な…!? お前は…!!」




妖しい声が聞こえてくる。全く気配も殺気も無い。ただ闇に紛れているその存在は一瞬にして老婆とアルトの背筋を凍りつかせた。

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