第9話〜どうやら男の娘に連れられやって来たのは魔女の館でした〜


「ふぅ、いい湯だったねお兄さん」




「あぁ、そうだね アルトくん…で良いかな」




アルトと共に欧斗は風呂屋から出る。彼は短いズボンにへそが出ている少し着崩したローブを着ていて頭には三角の帽子を被っている。更にアルトが答える。




「アルトで良いよ、お兄さん、とりあえず交渉なんだけどさ」




アルトはふっと笑った。




「あの妖精、アルトにくれない?」




「は…?」




欧斗は一瞬固まる。 すぐに平静を取り戻し会話に戻る。




「あげるっていってもそんなことが可能なのか」




「うん、ぜーんぜんできるよ、術士に頼めばだけど そういやお兄さんの方の条件を聞いてなかったね」




「あぁ、まぁその交渉を呑むかは別として…実は僕の妖精がどこから生まれたのか、そしてなぜ今僕の元に現れたのか、その点を知りたくって術士に会いたいんだ、調べることってできるか?」




「へぇ〜、見た目も幼いし生まれたてなのかな、まぁ術士に聞いてみないと詳しいことはわからないとりあえず一緒に行こう」




欧斗はどう見てもお前の方が幼いだろ…と思った。二人はリエルの帰りを待った。しばらく経った後アルトが見える。彼女は元の天使のルーブのような服に着替えていた。




「あ、欧斗、そちらの方は…」




「ああ、この人は…」




欧斗がそう言いかけたところでアルトがリエルに興味津々に駆け寄り声をかける。




「君がさっきの妖精ちゃんだね、人型でしかも幼くて可愛い、見た目の珍しさも凄いけど君にはまだまだ力を秘めているようにも思えるよ」




「おいおい大袈裟だな、そんなに凄いのか?」




アルトはそれを聞き答える。




「うん、凄い、正直かなり高度な術士によって生み出された妖精に思えるよ、正直アルトからすればこの子は怖いぐらいに強い、だけど力にセーブがかけられているようにも見えるね、とりあえずアルトの師匠がいる所に行こうよ、きっと何かわかると思う、話はその後だ」




そうゆうと欧斗達は街を歩くことしばらくして街の裏門まで着いた。




「さ、ここからずーっと北に行った所にあるんだ、その術士の家が」




「そっか、それって秘密の隠れ家的な場所じゃないのか? 僕なんかにバレしてしまってもし何かあったら」




「大丈夫大丈夫、何だかお兄さん抜けてる所あって可愛いっていうかさ、なんだが悪い人じゃ無さそうだし」




アルトがそう言うと欧斗は少し顔をしかめた。瞬間アルトが何やら何でできたかわからない光沢のある銀色の笛のようなものを取り出した。




「さぁ、行くよ」




その笛を吹くと3人の体が光出す。眩い光に包まれたかと思えば3人は井戸のある森の中につつまれた民家に移動していた。




「これどこまで来たんだ…? 僕達」




「まーまー入ってよ、おにーさん達 ここに術士が居るからさ」




そう言われるがまま欧斗とリエルはアルトに先導され民家に入っていく。 中はこじんまりとしているが魔法陣のようなものが描かれた床や水晶や宝石類が棚に並べてあったりと、かなり独特な雰囲気を醸し出していた。部屋の奥から人影が現れる。




「むっその妖精見たこともないぞ… あたしが呼び出したものではない、それに凄い力を秘めている お前さん達は一体何もんだ」




そう言うと草臥れた紫色のローブに細かい宝石を首から大量にぶら下げているいかにも怪しそうな老婆が出てくる。




「アルトただいま帰りました! おばあ、この人たち街で見かけたんだ、凄く強そうな妖精を連れてて何もんなんだ?」




「妖精本人にもわかっていないのか、自分が何から作られ何のために呼ばれたのか… なるほどかわいそうな子だな どおれ、あたしが見てやる、とりあえず奥まで入んなさい」




欧斗は唾を飲み込みリエルはいつも通りの無表情で奥の部屋に入っていく。その部屋には紫色に光る妖しいランプに水晶の置かれている机と椅子のみがある。すると老婆が厳しい顔で口を開く。




「そこの妖精こっちに来なさい」




リエルは珍しく圧に押されて汗を少しかいている。老婆はリエルの頭に手を置く。すると老婆の周りにリエルが現れた時と同じように空気中から力が集まる。それと同じようにリエルの体も青白く光り出す。しばらく経っただろうか、老婆はふと落ち着き椅子に腰掛けた。




「この子の持つ頭の情報に有り得ないレベルでセーブがかかっている、…掛けた奴は恐らくとんでもない術士だろう、あたしでも手に負えないレベルでな」




老婆がそう言いながらやれやれと言った面持ちをしている。




「おばあ じゃあ何もわからなかったの? 」




アルトがそう聞くと老婆は答える。




「わかったことはある、そうだな…取り引きといこう、その妖精をしばらくあたしに預けなさい その方がこのこの為にもなる、それを呑むなら今見た事を教えてやる」




欧斗はそこで言葉が詰まる。本当にリエルを預けてしまっていいのか。だが自分がリエルを傍に置くよりもこの老婆に預けた方が安全なのではないのか。 そう考えを巡らせていると彼女が答える。




「確かに私は私のことについて気になってしまっています、ですが今は欧斗が私を必要としている 彼は私が思っている以上に情のある…少し間の抜けた人物です、だから欧斗の…いや 主の傍にいないと、私は少し心配です 彼は頭が良く心根が強い人物ではありますが同時にそれが脆さでもある」




リエルがそう言うとアルトが疑問を浮かべて老婆の方を見た。欧斗はその意見を聞いて意外そうな顔を浮かべ驚いている。




「まぁつまり そこの主のことが放っておけんのだろ あたしがアルトリアのことを放っておけんのと一緒だ」




「あぁ なるほど! じゃあ交渉は決裂ってこと?」




「いや それならばもう一つの条件がある それは絶対に守るというのならば教えてやらんでもない」




老婆とアルトが話し終えたところでその条件は何なのか欧斗が聞こうとした瞬間外からすごい爆発音がする。4人が館を出ると木々が切り倒され、 一部が荒れ地となっていた。




「おうおう ようやく見つけたぜ こんな所に隠れてやがったのか 精霊術士さん これで俺はてめぇを殺せるゼェ!!」

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