第8話〜妖精と一日を満喫した僕は浴場で男の娘に出会います〜

「今日はどうするんですか 対してやることも無さそうですが」




「あぁ 今日含めて後5日後だ やることもあまりないがひとつ思い付いたことがある」




欧斗とリエルはその日前と同じ旅館で1泊し夜が明け朝になった。今はベットの上で話をしている。




「今日は妖精術士を探す リエルは僕の母が渡してくれたクリスタルの中にいた ということはきっと君も何かしらは関係はしているはずだろ 僕には幼い頃の記憶はあまりない 爺に昔聞いたことがあるが母も俺を預けた後どこに消えてしまっている あのクリスタルはある種で母からのメッセージ代わりということだ。 それに母に関して行方も分からないなんて変な話だ 君だって何故僕を王族の血筋だと言えるのか 君に関することは不明な点は多い だから手がかりになると思うんだ」




「それにしても何故そこまで覚えもない母のことや自分の血筋に拘るのですか?」




「単純に気にならないか? 自分のことってのはさ …それに何だか違和感を抱いているんだ 何故君のような妖精を残していったのか 更には自分では生まれたてという君に僕に関する記憶があるのか しかもその記憶もかなり限定的だ… 気になる点が多すぎる まるで誰かの都合が良いように運んでいる そんな気がしているんだ」




「なるほど 私に関しては欧斗の記憶というか知識レベルでインプットされていますね それ以外はただの妖精と自覚はしていますし 私の役目はマスターの身を守る 更にはあなたに成り上がって頂きたいというだけ」




「まぁ僕の知識があるのは良い 気になってはいたんだが最後の僕に成り上がって欲しいというのは何故なんだ」




「私にはあなたのことが何故か少しわかる、故にあんな所でグズグズしている場合ではないと思ったのです、成り上がる為の力を持ち合わせている、その証拠に魔法が使えるようになったあなたは今計画を練りそれを実行するだけの力があります、単純に自分のマスターが力を持て余しているのを見ていられないというだけ」




「グズグズ…そうか、まぁとりあえず当面の目標は妖精術士探しだ そうだな 良い手を思い付いた」




そう言うと2人は旅館を出た後、街にある服屋に向かっていった。




「好きな服を選んでくれ」




「…? これに何の関係が」




リエルは実体化し、欧斗に金を渡され言われるがまま服を選び試着していく。欧斗はその間腕を組み店の前で壁にもたれかかっている。




「欧斗 決まりました」




そう言うとリエルが欧斗に話しかける。


リエルは元々履いていた白のヒールがよく映える袖が透けている膝辺りまで伸びている黒のワンピースで綺麗な花の模様が入っている。通りがかればつい振り向いてしまいそうな魅力を秘めた容姿に変貌していた。




「お前 服装変えたらなかなか良いんじゃないか」




「あ そうですか ちなみに欧斗は服を買わないのですか 旅から出てその皮の服しか着ていないような気もするのですが」




「…まぁ僕のことについては良いんだよ さぁ行くぞ 今日も街を徘徊だ」




そう言うと欧斗は歩き出す リエルは今まで街を出歩く時全て欧斗の中に入っていたが初めて実体化して街を歩いている。




「こうしていると普通の何の変哲もない人間のように見えるだろ」




「あぁ…なるほど あなたの考えていることが段々とわかってきました」




リエルは欧斗の考えを察し街の中をグルグル徘徊した。お昼を超え、 夕方になるまで歩いたり店に入ったり休憩したりで休日を過ごすかのようにしているが一向に何も起きる様子はない。




「まさか ここまでとはな… やれやれ」




「欧斗 妖精術士に私を見つけさせる作戦なんでしょう 一般人から見れば私はただの一人の女 だが術士か見れば私を妖精だと気付くことができる そういう作戦ですね」




「ああ まぁわかっていても声をかけない奴もいると思うし注意深く観察はしてみたが誰も動揺を見せている感じはしないな もっとも術士にも見分けがつかないかわかっていても声なんてかけたりしないのかもしれない 僕はその点疎くてね リューガが妖精使いが珍しいと言っていたのを聞いて当てにしてみたが」




そう話し込んでいる内に夜が来る。 欧斗は元の旅館に戻り作戦を練る。


王選を超えれば村から出た時の蓄えも尽きる… となるとそれまでに情報収集をしたいが今回は完全に不発だ。


欧斗はベットの上で色々と物思いに耽っていた。今はリエルもなるべく実体化するようにして横で後ろに両手をつき暇そうにしている。




「そう言えば僕王都に来てから風呂に入ってないぞ… これはまずいリエルちょっと出るか」




そう言うと2人は街の風呂屋を目指す。




「私はお気になさらず 体は汚れたりしないので」




「いやまぁそうだが 風呂入らないと心が疲れるだろ これからまだ先4日あるんだしお前にもまだまだ協力して貰う必要があるしな」




そう言うと2人はそこで別れ、 それぞれ浴場に向かった。




「ふぅ にしても癒されるな 風呂ってのは」




欧斗がそう言いながら壁にもたれかかり気持ちよさそうな顔を浮かべお湯に漬かり、 上を向いている。




「おにー さんっ」




そう言うとベージュ髪のショートボブをしている幼げのある綺麗な顔が目に入った。表情も微笑んでいて敵意も無いと言った感じだ。




「うわ 女!? 」




「ふふ なーにやってるのお兄さん」




あぁよく見ると男か


欧斗がそう思いながら気持ちを切り替えその幼い少年に返答する。




「なにって そちらこそどうしたんだい 僕は普通に風呂を気持ち良く堪能しているだけさ」




「いやーそうじゃなくてさ」




そうすると少年は顔を近づけヒソヒソ声でこちらに話聞けてくる。




「お昼さ… 何やってたの? あんなつよそーな妖精見せびらかしちゃってさ ビックリしちゃった ずっと後をつけてたんだ 」




「な…!? ああ そうか それはわかったよ だが何故風呂なんだ」




「いやいや〜 ここじゃ怪しい武器とか道具も出さないかなぁって そうなればアルトの方が強いし」




彼はずっと貼り付けたような笑顔でこちらを見ている。




「やれやれ舐められたもんだな とりあえず君は術士そのものかそれの関係者 いずれにしても妖精についての情報は持っているはず」




「まぁそうだねぇ アルトはまだ術士じゃないから妖精そのものに干渉はできない でも君に教えられることはあるし交渉次第だね」




「そりゃそうだね 一応聞いておくが …その名前偽名じゃないか?」




「なんだ疑り深いなぁ 正真正銘アルトはアルトだよ お兄さん 相当騙されてるねっ」




アルトはそう言うとからかうような表情で笑った。

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