第7話〜銀髪お姉さんに看病されているようです〜

欧斗が目覚めるとベッドの上だった。 どうやらメイが看病してくれていたらしい。




「メイ… いやメイアさん」




「騙していてすみませんね 欧斗くん ここは少し郊外にある私の別荘地です まぁ部屋は狭いですしあまり全体としても大きくは無いので秘密基地みたいなものですが」




メイアが苦笑いで答える。欧斗はメイアに連れられどうやら街に戻ってきたらしい。




「にしても君がスライムをあそこまで引き付けてくれなければどうなっていたかわからない 感謝していますよ」




「いや あれならば僕がいなくてもあなたが居れば勝てたでしょう そんな気を使わなくても」




「気など使っていませんよ 私は君がスライムを森から外に出さない限りあいつの発見は今よりも遅くなっていた もっと被害が出ていてもおかしくはなかったでしょう それにしても…」




メイアは視線を落とした。




「どうされましたか?」




欧斗がメイアに質問する。




「あれは人間が作り出した人工的な魔獣の可能性が高いです 見たところ獣が魔法を使って成長していったという具合ではない 私には誰かが意図的に作り出したように見えます」




「誰かが… ってそんなことが可能なんですか」




「魔法を応用すれば可能です 生物を作り出す能力者… もしくはさっきも説明した通り魔法は後天的に覚えることも可能ですし 何にせよ大掛かりな人手や材料が必要になる… もしかしてここ最近の大規模な森林伐採などが関係していて…」




「メ メイアさん とりあえず落ち着いてください」




「そうですね… とりあえず私は夕飯の支度をしますね」




そう言うとメイアは部屋から出ていった。


するとリエルが心の中から話しかけてくる。




「すみません… 調整に失敗して欧斗の魔力をほぼ全て吸い上げてしまいました」




「ああ 僕が気絶していた理由もそれか」




リエルは申し訳なさそうな声で続ける。




「本当に 危なかったですね… 私のせいです」




「あぁ そうだな これについてはお前のせいだ」




欧斗が少しそっぽを向き答える。すると更に続ける。




「まぁ気絶するほど魔力を回収するのは辞めて欲しいと思うのが本音だが 生き延びれたのもお前のおかげだ ありがとう」




欧斗はそう言いながらこめかみを少しかいた。




「そうですか まぁあなたなら何とかすると思っていましたし 足止めにもなりましたから結果オーライですね」




「な…! お前という奴は…今回こそは本当に死んでいてもおかしくなかったんだぞ …ったく」




欧斗がそう言うとリエルは無視をする。欧斗はやれやれと言った面持ちで置いてあった自分の荷物を取りベッドから降り、扉を出て階段を降りた。その先にはリビングがあり、キッチンでメイアがエプロン姿で料理を作っている




「手伝いますよ メイアさん」




欧斗がそう言いながらメイアの横に着いた。




「欧斗… 料理なんて心得があるんですか?」




リエルが心の中から欧斗に語りかけるのを他所に欧斗は軽く手を洗い器用な手さばきで野菜を微塵切りにしていく。




「凄いですね欧斗くん 筋が良い」




「あはは まぁそれほどでもないですよ」




欧斗は笑顔で答える。2人の手際の良い作業によりたちまち料理が完成する。




食事を終えるとメイアが語り出す




「…それで欧斗くん 改めて私はこの国アンデルセンの王女であり騎士団の統括を任されているメイア・アンデルセンです 以後お見知りおきを」




「あはは それにしてもビックリです」




「えぇ 私も最近になって街の外で気になることを見つけて今はこの辺りを調査しています」




「あのスライム関係のことでしょう 僕の見立てでは衛兵に関係がある… いやだがあの衛兵達はスライムのことを知らされていなかった様子だった…一体何故だ」




このまま話の流れを衛兵に向かわせれば結論は王にたどり着く。この女はきっと何処が衛兵…引いては王を疑うはずだ。そうなれば…




欧斗が考えを巡らせる。




「私が思うに衛兵達が何も知らされていないということを踏まえて考えると それを統括している王に何か秘密が… 何かを隠している」




「なるほど… 確かにそうとも考えられる さすが王女様です 鋭い観点をお持ちのようだ」




「そうと決まった訳ではありませんが私はしばらく王の周りを探ってみることにします 今日は色々とありがとうございました また何かあれば君に報告します」




欧斗はそれを聞いて微笑みながら答える。




「あはは どうもありがとうございます」






「そして実は今回スライムが飲み込んだ人で命を落としてしまった方がほとんどですが救助できた者もいました その中にあの時のローブの一味が数人いたので今一度その者から何故あなたを狙ったのかについて問いただしておきましょう」




「それはありがたいのですがなぜ僕にそこまで」




「私にはわかるんです あなたはきっと良い人であると 部下の宝石を探してくれたことや貧困の調査で貧民街に来たこともそう 危険な私を省みて共に来てくれたこと そして衛兵から守る為に私を逃がしたこと どれもあなたの優しさからですね」




「そんな… 当たり前のことですよ王女様 …っと今日はこの辺りで失礼させていただきます 夕飯ありがとうございました」




欧斗はそう言うと自分の荷物を取り、玄関の方へ向かう。




「どうですか 今日の宿も無いのなら泊まっていっても まぁここにはベッドが1個しか無いので同じ部屋になりますが」




「え…!! いや…」




欧斗は一瞬焦った顔を見せる。


メイアはクスッと笑った。




「冗談ですよ お気をつけて」




欧斗はそう言われると軽く会釈をしてメイアの別荘から出ていく。するとすかさずリエルが欧斗に話しかけた。




「とても感謝されていましたね」




「ほらな 人助けしてみるもんだろ 後人前で話しかけてくるのは辞めろ 周りに声が聞こえたらどうするんだ」




「いえ 問題はありません あなたの中にいる限り周りに私の声は聞こえないでしょうし 後今は誰もいませんよ」




「そうか まぁあの女もこれで上手く使うことができる これで王都侵略に1歩進んだな 当面の目標は王との対面だが…」




「王女様に取り次いでもらうとかはどうでしょう 」




「それはダメだ そもそも王族の家系だということを信じて貰えたとして僕はその中でどういう立ち位置なのかわからない 自分の親の正体もわからないようじゃ余計に怪しまれるだけだ だが一般人が衛兵に襲われたという話を通すことはできるだろ」




リエルがなるほどと言う顔をして更に続けた。




「そう言えば欧斗 自分をあの地に預けた母については聞かなかったのですか そこから自分の続柄の手がかりになるでは」




「…あまり覚えていないが母の事については僕が5歳頃ただ預けに来たとだけ」




リエルは黙ってその話を聞いた。すると再び口を開く。




「まぁ全て偶然とはいえ今回王女様のおかげで前へ進むことができます」




そう言うと欧斗は笑いながら答える。




「あはは 偶然?まさか何の目的も無く街をぐるぐる徘徊してたと思っているのかい 今回について街に出て徘徊していたのは街の衛兵に僕を警戒させる為僕を殺しそびれ更に王都にまでいるとなれば当然警戒もする たまたま手頃な騎士が居たもんで恩を売れば護衛を任せられるかと思ったがそれ以上の収穫だよ なら1度街を出ても問題は無いかって思ってね 更に貧民街も人が少ない地域だしうってつけだった まぁ僕の能力がバレる可能も懸念したがそれ以上に衛兵の強さがどんなものかわからなかったし保険は打てるなら打つべきだしね 命の危険だって常にある まぁ予想以上に衛兵達が大したことなさそうだったんで安心したよ」




「なにかすごく取ってつけたような感じがしますね」




リエルはそれを軽く流してみせる。




「それにしても王子様にはタメ口だったのに何故彼女にはずっと敬語を?」




「まぁ見かけ的に年上だったと思っていたのもあるが女性ってのは紳士な振る舞いをされた方が印象が良いんだろ?」




「…いえ あぁ まぁ そうですね」




「……………違うのか」

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