第5話〜銀髪お姉さんに恩を売った僕は共に貧民街を目指します〜

「とりあえず王選 これを利用するんだ 僕はここで自分の正体をばらす」




欧斗はその日宿泊先をみつけ夜遅くに街の旅館でリエルと話していた。




「ですがあなたは殺されかけている身 それこそ身柄がバレればもっと危険になるのでは」




「いや それは違う」




すると彼は続けて話し出す。




「僕のことが公になれば不用意に殺すことはできない 国民の信頼にも関わるしね あくまで彼らは僕を秘密裏に殺そうとした そこを逆手にとるんだ 更にそれを利用することによってレジスタンスを集めることにも繋がる 一応王族の息子というネームバリューで着いてくるもの達も少なからずいるだろう」




するとリエルはなるほどといった面持ちで彼を見つめる。




「それは私も思いつきませんでした 欧斗 実は頭が良いのでは?」




「小狡いだけさ 今まで何もできなかった否定感で押しつぶされそうだったのを上手く誤魔化して耐えてきた経験ってやつかな」




「…他にも目的があると言った面持ちですが 聞かせて貰えますか」




彼女がそう察すると欧斗は




「 国王と対面する 俺の過去や母について聞かなければならないことがある これは絶対だ 君のこともね」




「まぁそれは良いとして 今ここで就寝するのは危険では? 命を狙われる可能性も無くもありませんし警戒はしておく必要がありますので私が見張っていましょうか」




「それについてだが僕の事は本当に秘密裏にしか存在を知らされていない なにか不都合が国王にもあるから僕を抹消しようとした その裏付けのように衛兵のようにリューガは僕の顔を見てもピンと来ていない 世界最強の戦士でさえ僕のことを知らない訳だ とりあえず王都にいるうちは大事にできないといことだし刺客が殺しにも来ないだろ 今日はぐっすり眠れそうだ まぁつまり明日に備え早く寝るべきということ」




そう言うと欧斗はその日の疲れを取るよう為に寝た。次の日の朝日が昇る。




「今日は何を?」




「とりあえず暇潰しにこの街を探索しようと思う あまり街の外に出ると返って命を狙われるだろうから危ないしね」




そう言うと欧斗は荷物をまとめ旅館を出た。


スタスタと街を歩いていると、 1人の女性 恐らく鎧を着込んでいるため騎士だろうか、門の前でそわそわしているのを見かけた。




「どうかしましたか?」






「あの 実はーーー」




どうやら一緒に歩いていた連れとはぐれてしまったらしい。




「分かりました 騎士さん 僕にお任せ下さい その女の人を見つけてあなたの元へ連れてきてみせましょう あなたはこの辺りにいてください」




そう言うと女騎士と別れ、 その場を後にした。


リエルが心の中で呟く。




「欧斗 良かったのですか こんな所で人助けだなんて 得もありませんし」




「良いんだよ こういうのは地道な積み重ねが大事だ 恩を打っておくんだよ 暇だしね」




そう言いながら2人は街の中を散策した。どうやらその連れというのが銀髪で目の色が特徴的な碧色をして、服装は毛皮のコートのような物を羽織っているそうだ。




「リエルの使える魔法で何とかできたりしないか?」




欧斗がそう言うとリエルが答える。




「妖精として目覚めて日も浅いですし私には今の所単純な術式しか使えませんね とりあえず手当り次第探してみましょう」




2人は聞き込みをしながら隈無く街中を巡るがそのような情報や似た人物も見つからない。


そして時刻は昼過ぎを回った。




「僕… まさか騙されてないか?」




「その可能性も十分ありますね とりあえずどこかでお昼を済ませましょうか」




「ああ そう言えば君は食べなくても平気なのか?」




「まぁ食べることも出来ますが基本魔力供給があれば事足りてますし 大気中や欧斗の魔力から補給しています 実体化するにも魔力を喰うので」




とりあえず欧斗は近くにあった店で骨付き肉を買い、 路地裏の日向が当たらない所へ移動した。




「にしても結構手持ち無沙汰で困ったもんだな」




残りの金銭の入った袋を自分の傍においてため息を着く。


すると目の前に瞬間凄い風と共に一人の人影が駆け抜けた。




「これ貰ってくぜ!」




そう言うと欧斗の持っている手持ちが盗まれる。一瞬面食らうがすぐに立ち上がる。




「おい待て!」




そう言いながら追いかけるが盗人の足の速さは並じゃなかった。


欧斗が追いつけずに息を切らし、手を伸ばし糸の魔法で捕縛しかかった瞬間 路地裏から大通りに出ようとした瞬間そこにまた人影が目に入る。




「やれやれ 王都でこんな悪事を働くなんて… 度胸がお在りのようですね」




そう言うとまさにさっき探していた特徴にピッタリ当てはまる女がその先に立っていた。髪はセミロングと言った所だろうか。見た所かなり凛とした顔立ちをして居る。




「く くそ…」




盗人はそう言うと冷や汗をかきながら血に這いつくばった。




「欧斗 彼女が騎士の関係者なら今すぐ衛兵から奪った能力を解除しないと疑われるかもしれません」




リエルが心で呟いた瞬間欧斗は逆に能力を解かずにいた。




「魔法の糸を作り出す能力…? 聞いたことのある能力ですね まさかあなた衛兵ですか?」




女が聞く。




「まぁとりあえずこの糸を解きます」




そう言うと欧斗が糸を解き出す。 女もそれを見ながら盗人と欧斗がいる方向に近づく。その瞬間欧斗は魔法で作った糸を束ねてポケットに入れた。




「なるほど 実際の糸を魔法で操作していた訳ですか ならば聞いていた能力とは違いますね…」




彼女がそう言ったので欧斗は軽く会釈をしてポケットの中で能力を解いた。




盗人は最後の抵抗を見せ暴れようとするが女はそれを制止し欧斗の財布と何やら宝石のようなものを取り上げ、盗人の身柄を抑えて見せた




「すみません 私もこの者を追っていたのですが なんせ私は魔法の加減が下手で街中ではあまり派手に使えないのですよ」




そう言うと街の兵に声をかけ 盗人を引き渡したのち、 さっきの場所周辺に向かった。




とりあえず女にあなたの連れが探しているのだと伝え、一緒にさっきの騎士のいた辺りに向かった。




「あ すみません! 本当に見つけてきてくれるなんて…」




「あぁ すみませんでしたね 取り返せましたよこれ あの青年のお陰でね」




そう言うとさっきの宝石を渡した。




「ありがとうございます! でも本当に大丈夫だって言ったのに飛び出していってしまってビックリしました あなたに何かあったらと思うとそっちの方が私は心配ですよ…」




そう言うと、女騎士はこれからお昼の仕事があるといい帰って行く。 その後、もう1人の碧眼の女は僕に近くの店に入ろうと指でサインをして促して見せる。




「さっきは本当にありがとうございます お礼をさせてください」




女がそう言うと欧斗は笑ってみせる。




「ええ お礼には及びません ところで少しお聞きたいことがあるのですがいくつかよろしいでしょうか」




彼女は微笑み頷く。




「まず 名前でしたね 私はメイ 年齢今年では20です」




「僕は欧斗です 歳は18です」




欧斗はメイを落ち着いた雰囲気から察するにもっとずっと大人の騎士だと思っていたが意外だった。 まさか2つしか年齢が違わないとは。




「ずっと気になっていたんですがこの街の騎士と衛兵ってどう違うんですか?」




「あぁ それだね 実は騎士と衛兵は昔は一括りだったんだが王の意向で分断されたんだ 衛兵は王の直接的な配下 騎士は軍を率いて他国や魔物と戦う役目が任されている」




「それなんですがあくまで僕が感じた印象なんですけど 騎士と衛兵ってあまり情報共有が行き届いてませんよね」




欧斗はそれについては完全なシラフだが、 あくまでカマかけで聞いてみる。根拠はさっきの女騎士の印象と自分を襲った衛兵の様子がまるで違ったからだ。




「そうですね 確かに衛兵は王直属だから私たちにも伝わっていない事項等を知っていることがある それに彼らについては最近思う所もある…最近はならず者のような者までいる始末 なので彼らの中にいる能力者については熟知しているつもりです なぜなら王は…」




そう言うとメイは思いとどまり言葉を濁した。




「なるほど あと聞いておきたいんですが僕は最近魔法が使えるようになりましてあまり深くはこれまで学んできませんでした それについて少し聞きたいこともあります まず魔法と能力ってどう関係しているか教えて頂いてよろしいですか 後妖精と呼ばれる存在のことも少ししか知らなくて」




「そうですか ならば私直々に説明しましょう」




メイの話の内容を要約すると 魔法 そう呼ばれるものを認識できるようになってから人類の歴史は大きく変わった。魔法の源になる魔力は如何なる生物も有しており、魔法による身体強化が絶大な影響を人類史に及ぼしたからだ。 更にそれを応用した能力と呼ばれるものがある。能力は本人の才能により開花し、本人の無意識や意識的に発現する物などがありこの世界には無能力者と呼ばれるものが大半だ。能力者は今でもかなり数が限られているのでかなり貴重な存在であると言えるだろう。 そんな能力者の歴史の中に妖精術士という者も現れた。能力を使えるものの中でも更に希少な存在であり、妖精を生み出したり呼び出したりできる等の能力を持ち合わせている。 妖精は術士本人以外の能力者の手助けをすることもでき、様々な加護によりその力を増大させる。だが、 未だに妖精や術士については謎が多く妖精達がどこからやって来ているのかや何から生み出されているのかさえよく分かっていない。




「なるほど 色々と助かります ちなみにあなたも騎士ということで良いんですか?」




「あぁ まぁ私も言ってみれば騎士です 今日は休暇日なので少し街をフラフラとしていると部下に会いましてね 少し一緒に街を巡っていたんですそこを盗人に狙われてしまい彼女の宝石が盗まれで私が追いかけていた訳です」




そこまで話し込んだ所で2人は注文をして、料理を食べ終わった所で外へ出た。




「一つ提案なのだが私が君の魔法について詳しく見てあげましょうか まだ慣れていない様子だが磨けば光る 是非」




欧斗は内心一瞬焦る。 自分の能力が衛兵と全く同じものだとバレればどうなったものかわからない。 彼はとりあえずその場しのぎで答える。




「いえ お気になさらず それよりも僕は少し貧民街の方へ行ってみたいと思っていまして」




「そうか ならば私の方で馬を出そう 私もそちらには遠征の予定もあって少し気になっていることもある 御一緒しますよ」




メイがそう言うと欧斗の心の中でリエルの声が聞こえた。




「この女 少ししつこいですね 何かを勘づいているのでは?」




リエルの忠告を他所に欧斗はその提案を快く承諾する。




「えぇ 分かりました 馬を出してくれるなんてありがたい」




欧斗は門の前で待っている。 メイが馬を引き連れてやってくるのが見える。どうやらかなり大きい剣を持っているようだ。




「お待たせしました さぁ 行きましょうか」


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