第2話〜国の王子と発覚した僕は最強魔法で村最強を倒して王都へ向かいます〜
「さっきの連中はなんなんだ? 結局僕は何で狙われたんだ?」
そう欧斗が妖精に聞くとクスッと笑い答える。
「あの者達は王都の人間で王の意思であなたを殺す必要があった そこから導き出される答えを考えてみてください」
欧斗は少し考えて答えてみせる。
「僕が王都の大罪人の顔にでもそっくりだったとか?」
「不正解です もしそうでもその場で独断で極刑なんてするより、大罪人を祭り上げて殺した方が国としても支持が得られる あくまで秘密裏に殺す必要があったということです」
僕を秘密裏に殺す意味…? ダメだ全くわからない。
と彼が考えを巡らせていると妖精が笑って答える。
「その答えは あなたが王族の家系の血筋であるということです」
は…?
その答えに彼は衝撃をどうやっても隠せないでいた。
「いや 僕は魔法が使えないどころか運動能力もゼロレベルの平民だぞ? そんなことある訳…」
「でもあなたは先程魔法を使えていましたよね」
そう言われてみるとさっきの俺の手から出ていた糸のような能力、 殺した相手の能力を奪える能力って言ったっけか。そう彼が考えた矢先ひとつの答えにたどり着く。
「今まで人を殺すことが無かったから発現しなかった…?」
「えぇ ご名答」
「でも僕は能力どころか普通の魔法も使えたことがないぞ それはどう説明するんだ」
「あのクリスタルは元々は魔法を抑制する力があります あなたが肌身離さず持っていたせいで全く発生しなかったのでしょう」
「なるほど それってつまりあのクリスタルで魔法を抑制して危機的な状況を作り出し君を発現させる為にそういう力を施しておいたということなのか…?」
「そうとも考えられますね しかしこんな辺境の安全な民家に飛ばされたのでは全くそんな機会も無かった だから今日に至るまで私も外に出る機会を得られなかったと」
そこまで会話が進むと彼は申し訳なさそうに妖精の方を向く。
「ごめん 僕のせいで君をあんな所に閉じ込めたままにしてしまったみたいで」
「… さっきも言いましたが私の前で取り繕う必要はございませんよ 私はあなたがどんな方であろうと問題は」
「いや 違うんだ 僕は今までありとあらゆる人間に信じて貰えたことは無かった。単純に今君に感謝していて心の根から謝りたいと思っただけなんだ」
妖精はじとっとした表情でしばらく彼を眺めた。
「まぁとりあえず明日から王都に向かいましょう ここももう安全とは言えない あなたのことがどれだけ知られてるかも分かりませんし帰らない衛兵を見兼ねて騎士がやってくる可能性もありますし 公の場であなたが殺される心配もありません」
「ああ とりあえず今日は帰るよ と言いたいがその前に 僕の母について聞いておきたい それに君のことについてもわかる範囲で素性を教えてくれ」
「私にはわかりかねます 妖精術士に1人の妖精として生み出されこの間ずっとあの中でしたから 特に主立った記憶がありません 術士によって生み出されてからは人間との交流はこれで初めてになるので 術士からはこの世界の基本的に知識等しか与えられていません そしてあなたについて少しだけわかるということだけ」
「そっか わかった」
そう欧斗が言うと妖精は彼の心臓の中に入るように消えていった。 壊れて効果を失ったクリスタルを拾ってぐっと握りしめそれをポケットに入れ家に向かい歩き出した。
帰ると玄関先で爺と麗奈がびっくりして駆けつけてくる。
「欧斗!? 大丈夫!? てか帰ってこれたの?良かった!!」
そう麗奈が言うと爺も言葉をかける。
「まぁ王国のもんが平民にさほど乱暴なことをするとは思えんわ まぁ大丈夫だと思ってたわいワシは」
欧斗は2人に見向きもせずに家の中に入っていき自室で就寝した。
結局爺は俺を裏切った…
そして母は俺に何を隠していたのか…?
彼はそう思いながらその日を終え、ベットで就寝した。
翌朝 欧斗は学校を休みこの辺り一体の集落の役所に顔を出していた。
「僕 ここを出ます」
そう役所に言うと大男は奥からのっそり出てきた。
「おいおい欧斗くん 君の実力じゃまず出るための検定に合格しない 馬鹿なこと言ってる暇あったり学校に言って勉強しなさいな」
そう大男が笑いながら言うと欧斗が言葉を返す。
「それなら今すぐ検定を受けさせてください 今すぐハッキリさせましょう」
そう言うと大男と共にフィールドに出た。検定は一本先取で相手を降参させた方が勝利というルールだ。
「おいおい 俺は村1番の強者だぞ? 欧斗くんじゃまだ厳しいんじゃないかなぁ〜」
「御託はいいです さっさと始めましょう」
そう言うと大男が余裕そうな笑みを浮かべこちらの様子を伺っている。 その瞬間欧斗は力を使う。
「なんだその糸は!?」
大男が面をくらった瞬間に糸で全身を包囲する。 彼はそれでも余裕そうな笑みで呟く。
「まぁこんなちぎれそうな糸で何を…」
そう言いながら糸に触れた瞬間指の皮膚が切れる。一瞬何が起こったかわからない大男が驚愕したような表情でこちらを見る。
「お前… いつもの間にこんな」
「もういいですか これで」
そう言うと男は降参を表すように視線を地面に落とした。
そうしてお昼時を迎え、 急遽欧斗の門出を見送るという形になった。学校もある以上門出を見送るのは村長と何人かの役員のみだった。一応村長は心配してお金を持たせてくれる。
「本当に行くのか…?」
村長が欧斗に語りかける。
「はい 急ですみません 爺や麗奈にもよろしく言っておいてください」
それだけ言い残し欧斗は王都アンデルセンに向かい歩き出した。
「本当にいいのですか 挨拶はしなくても」
妖精が心の内から語りかけてくる。
「いいんだ 僕はここで所詮は大して必要とされていなかったのかもしれないし ここにいても邪魔になるだけだ」
「ただ あなたは魔法も使えない中必死に良く頑張ったと思いますよ」
「おいおい なんだか君らしく無いな あと名前で呼んでくれていいよ」
そう言うと思い出しかのように彼女は
「名前 そんなものはありません 呼ぶならお好きにお呼びになってください」
そして彼はふと笑う。
「じゃあリエルというのはどうだろう 王都に伝わってる最高級の妖精の名だ」
そう言うと彼はメガネを外し後ろに投げ捨てその場を後にした。
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