最弱と思われた僕が開花した能力が実は最強クラスで僕を追放した国にきっちり報復します

八四さん

一章王都アンデルセン編

第1話 〜最終的に世界征服して僕の望む世界に作り替えます〜

今日も代わり映えがない景色だ。 そう思いながら欧斗おうとは民族学校に向かっていた。 彼は18歳の青年であり王都から少し離れた学校に通う高校三年生だ。 眼鏡を掛けており制服に身を包んでいる高身長のいかにも真面目と言った面持ちだ。




「おはよー欧斗」




 と声を掛けてくれるいつもの友達。 欧斗は気配りができ、 真面目な為友達も少なからずは居た。 だが最近気になることがある。 この近くに王都の衛兵達が見回りに来ているということだ。こんな集落になん用があるのだろう、 そう欧斗が思っていると学校に着いた。 いつものように授業を受けている。いつも景色、 いつもの教室、 そんな代わり映えのない風景の中いつの間にかお昼を迎えていた。 欧斗はいつものようにお昼ご飯を出そうとカバンに手をかける。


 中身を見てみるといつものお弁当が入っていない。




「あ まさか家に忘れたか…?」




 そう思っているとガラッと扉が開く。




「欧斗! お弁当忘れてるよ!」




 そう言いながら教室の扉を開いたのは麗奈れいなという立派な制服を着た茶髪の少女。 2つ年下の高校一年生である。 彼女は欧斗からして実際妹のような存在であり一緒に暮らしている。 一緒に暮らしていると言っても2人とも諸事情から小さい頃に別々の家庭から養子に取られたからであり、特にこれと言った浮いた関係は無い。




「あはは… ごめん 麗奈」




 欧斗がそう言うと周りには少し冷たい視線を送るものがいる。 麗奈のような文武両道かつ容姿端麗な少女と暮らしているということに不満を持つものがいるという事もある。 だがそれだけでは無い。 欧斗は昔から内気であり友達も多い方ではない。その態度を好ましく思わないものも多少はいるだろう。 更に他所からの養子というのも周りからは白い目で見られる要因の一つとなっているようだ。




 お昼の授業を終え、 夕焼けの中欧斗と麗奈は家に帰る道中を歩いている。




「ねー欧斗はなんでもっとハキハキしないの?」




 と麗奈が話し始める。 欧斗もそれに対応する。




「まぁ僕昔っから魔法も剣も使えないしそれに麗奈と同じように育ててもらってるのに僕はいつもダメっていうか…」




「そんな事ないよ! 欧斗はみんなに優しいところもあるし苦手なことも一生懸命頑張ってるじゃん!」




 欧斗が自信なさげな返事に耐えかね麗奈もムキになって返す。 幼い頃から養子として一緒に育てられてきたからこそお互いに心を赦し合えると言った所だろうか。




「麗奈は僕と違って運動も出来るし勉強だって人一倍できる 魔法も剣も得意だ だからわざわざ僕なんかと帰らなくったって」




 と言うと麗奈が立ち止まり悲しそうな顔で欧斗がスタスタ下を見ながら歩く姿を見つめる。欧斗には昔から取り柄が無かった。元々大した素養も無く、 この世界で生きていく上で必須とも言える能力である魔法の才能も無かった。彼が育っていく上で感じた自己否定感は常人のそれとはかなり逸したものだということは語るまでもない。




「欧斗…」




 家に帰り欧斗と麗奈は家主である爺と夕飯を摂っていた。 この家主の爺は作法等には厳しかった。麗奈は昔から当然のように全て要領よくこなしていた。




「欧斗 お前職は決まったか? お前の能力だ 大したことはできまい それなら俺の仕事の関係からお前が働けそうな場所を当たってみるが」




 麗奈も分かっていた。 心の底では信じていないのは彼女も同様だ。 欧斗には生きていくには才能の足りなさを彼女は良く分かっていたのだ。そう、 つまり彼は 誰にも信じられていない。




「ありがとうございます でも僕には少しまだ分かりません しばらく考えてみることにしますね」




 そう言うと欧斗は自分の食器を水に漬けて自室へ戻って行った。




「あいつ本当に大丈夫なのか…」




 爺も彼の様子を心配をする。当たり前だ、 彼が生きていく上での度胸も力も無いことを爺は重々理解していた。彼自身もそれを理解した上で何も言えずにいたのだ。 それでも彼は一つだけ忘れられない事があった。




「欧斗 あなたには勇気がある だから決して誰にも負けないーー」




 昔聞いたその言葉を忘れられずにいた。 彼が昔養子に取られる前に一緒に居た母の言葉だ。 その言葉だけを忘れずに大事にして生きていた。その言葉は彼の生きる意味そのものだった。








 その出来事は突然起きた。 全ての運命が別れる瞬間が




「おいおい ここにいるって噂は本当なのか?」




 そう言うと国の衛兵が2人程3人が住む家に乗り込んできた。




「なんだお前たち!?」




 そう爺が言うと国の衛兵達が答える。




「いや なんかね この辺の民家が国王の息子を匿ってるって噂を耳にして張り込んでいたんですわ ちょっと上を拝見させてもらいますよ 」




「な なんなんだ 麗奈 今はワシのそばに居るんだ…」




 そう言うと爺は怯える麗奈を庇うようにして立った。




「欧斗…」




 そう呟く麗奈を他所に衛兵は上の階に足を運ぶ、 ちょうどその階の一室に欧斗の部屋がある。 衛兵がその部屋の扉に手をかけた瞬間だった。




「ってぇ!」




 欧斗は衛兵を思いっきり突き飛ばし廊下をかけ走る。 下にいる爺と麗奈の手を引っ張り玄関から外に勢いよく出る。




「お 欧斗!? あの人たち一体…?」




 と麗奈が聞くと欧斗はそんなことを答える余裕も無くただ森の中を走っていた。 すると前方からライトが3人を照らした。




「おっと そこまでにしてもらおうかしら」




 完全に3人は大量の衛兵に囲まれていた。 麗奈はビクビク震えている。 爺は2人を守らんと庇うように前に出る。




「いやいや その爺さんと女の子には用は無いのね そのガキにちょっと興味があってさ 連れていっていいかしら?」




 そう言うと衛兵の中のスーツに身を包んだリーダーのような男が欧斗ににじみ寄る。




「こ、こいつを渡せばワシと麗奈の命は守ってくれるんじゃな…?」




 と言う爺に麗奈は思わず反応する。




「爺!? 何言ってるの!!」




「いや これは仕方ないんじゃ… 王国軍からの頼みとあれば断る訳にはいかん… 欧斗だって命を取られる訳ではあるまい…」




 そう言うとリーダーの男はふっと笑う




「そうそう わかればいいのよ じゃあ連れていくわねその坊や」




 言われるがまま欧斗は衛兵達に連れていかれる。欧斗は何がわかったかもわからないような意識の中ひとつの考えを巡らせていた。




「困ったらこれを使いなさいーー きっとあなたを守ってくれるーーーー」




 そう言って母が最後に渡してくれたクリスタルを握りしめていた。 でもこれを使うったってどうやって使うのか、 使えばどうなるかさえ欧斗にはわかっていなかった。




「ああ 言ってなかったわね あたし達 あんたをこれから処刑場に連れていかなくちゃならないの」




 しばらく歩いているとリーダーの男が口を開きその言葉を口にした。




「処刑場…? 僕を殺すのか…? 国が…なんのために…?」




「さぁ 知らないわ でもあたし達には関係ない とりあえず命令はあなたを連れてきて始末しろってだけ 早く行くわよ」




 そう冷たく言った男に戦慄した欧斗は思わず後方に思いっきり走り出す。




「ちょ このガキ!? 」




 一瞬焦った顔をしたが男は不気味そうな顔で笑った。




「まぁこういう怯えて逃げる男の子の姿がたまらなくてわざとやってるんだけどぉ」




 ニヤニヤ笑いながら男は欧斗ににじみ寄る。 欧斗は木の根に足を取られ転ぶ。




「おやおや気をつけないとねぇ そんな怯えた顔しなくてもこれから爪を1枚ずつ剥がしていって悲痛の叫びを上げながらあたしの為に死ねるんだから喜びなさいよねぇ」




 そう言って男が欧斗の手を取ろうとした瞬間、 欧斗はクリスタルを目の前にかざした。すると何も起きなかったかと思い目を開けると空気中から魔力を取り込みながら一つの人の形を織り成していた。 天使のようなローブを着た短髪の金色の髪をした小柄の妖精が降り立つ。 その瞬間他の衛兵達も男に追いつく。




「OKマスター 全員殲滅します」




 そう妖精が言った瞬間眩い光と共に男たちの首を全て跳ね飛ばした。何とも残酷な光景に欧斗は怯えてその景色を見ていた。




「何を…やってるんだ…?」




 と欧斗が言うと妖精も答える。




「何を…とは?」




 などと言うと欧斗が大声をあげる。




「ひ 人が死んでるじゃないか!? ダメだろこれは!?」




「何がダメなんですか?」






 あ 死体の始末に使える残量がないですね すみません でもこの数の衛兵を殺したとなればあなたが疑われることは無いでしょう 能力的に恐らく不可能ですし」




「いや そういう話じゃなくて…」




「そういう話じゃなかったら… なんですか?」




 妖精は続けて話す。




「私は無意識の中であなたを見てきました あなたは人を殺すことが怖いんじゃない 人を殺すことで罪に問われて周りから悪い評価を受けることが怖いだけ そうじゃないんですか?」




「そ… んなことは…」




 欧斗は言葉に詰まる。


 妖精はクスッと笑い話を続ける。




「私は大丈夫 人を殺そうが 貶めようが あなたを否定しないとお約束しますよ…?」




「でもそれは人としての道徳に…」




「はっきり言いますがあなたに最初から道徳などはございません 否定されないように上手く繕って生きてきただけです 最初から優しくて人当たりの良いあなたなどいなかったのです」




 欧斗は言葉を詰まらせながら今までの事を思い出していた。 自分を置き去りにした母のこと、 誰にも信用して貰えなかったこの長い生活。周りが怖くて人当たりを気にしてきた人生のこと。




「本当に… 僕を否定しないのか 君は」




「ええ マスター 私はあなただけの味方です あなたはきっと王になれる」




「僕が… 王に…?」




 そう言いかけると遅れてやってきた衛兵が尻もちを付き身体を震わせてこっちを見ている。




「私はあなたを信じます さぁ 解き放ってください あなたの本当の力を…」




 そう妖精が言うと欧斗は衛兵に手をかざす その瞬間 いくつもの糸のようなものが衛兵を串刺しにした。




「これが僕の… 力…?」




「その通りでございます あなたの力はあなた、 もしくは従える妖精が殺した相手の魔法能力を奪い使う力 私はほんの少しあなたにお力添えできる程度のもの 道はあなたが決めるのです。 」




「僕は… この力を使って王になってやる… 僕を認めさせる… この世界を支配してやる」




 そう欧斗がニヤリと笑いコウモリが夜空に羽ばたいた。

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