第2.5話

「これでよし、と。」

 男はスマホの画面を満足げに眺めた。

 美人女子高校生には自分と付き合ってくださいと、その交際相手のイケメン男子高校生には彼女と別れてくださいと、それぞれダイレクトメールを送っておいた。

 男は恋愛に疎い生活を送っていた。顔はひいき目に見ても中の下といったところだし、頭も冴えない。学歴もない。

 もともと生活は苦しかったが、父親は男が中学生の頃に行方不明になり、家計はますます火の車になった。母親は年金をやりくりして生活していたが、大病を患った。ヘルパーを雇う金もなく、男は貯金を切り崩してバイトを転々としながら母親の治療費を払い、世話をしていた。

 趣味を楽しむ余裕も、彼女を作る余裕もなくなった。また、その憂さ晴らしをしようという気力さえ、なくなっていた。

 そこに降って湧いたようなチャンス。高校生カップルに、ダメージを与えるようなメールを送ればいい。彼らは自己顕示欲のために、流失して晒されかねないラブラブ動画を上げているにすぎないのだ。

 こんなことをして、相手側が訴えればこちらが負けるのは、常識として男は理解していた。男にそんな金はない。母親には悪いが、刑務所に入った方がましだと男は考えていた。入れないのなら、いっそ死んでしまおうか、この先の人生に望みなどないのだから。

 男はそこまで考えて、ダイレクトメールが来た着信音を聞き、またスマホの電源を入れた。

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