第2話ダイレクトメール、再び
「
電車を待つホーム、
「うん。だいちゃんもいいよって言ってくれたし、顔とかぼかしてるし。」
悪びれもせず、むしろ笑顔で、美優はそう答える。
「でも、この前の全校集会で自画撮り被害の話されたじゃん。」
「カタいなぁ、香奈は。別にいいじゃん、顔くらい結構みんな載せてるし。」
ムッと口を尖らせて――それすらさまになる――美優は投げやりに言う。
「香奈も彼氏できたらわかるよ。こういうのって、今しかできないんだから。」
「みゆちゃんって、可愛いし性格いいし、何回も優勝して表彰されてるし、勝ち組街道まっしぐらだよね。」
「『勝ち組街道まっしぐら』って、なにその言い方。……あと彼氏もいるし。」
「うん、川崎先輩でしょ。イケメンだよねぇ、うらやまし……。」
「あんたは言ってる暇あるんだったら、贅肉落としな」
「ひっどい!!」
更衣室に入るとき、中から二人の声が聞こえた。同級生のあの二人だろう、と見当をつけてドアを開ける。
「おはようございまーす。」
バドミントン部の部則『いつでも挨拶はおはようございます』を厳守して中に入る。
「おっ、ご本人の登場じゃん。」
見たよ、プリクラ。ラブラブだねぇ。この幸せ者めっ。リア爆!
友人二人は美優を囲んで騒ぎ出す。少し離れて様子を見ていた一年生たちも、「先輩、彼氏いるんですか」「川崎先輩って、五月の大会の男子の部で優勝した」「浦橋高校の人ですよね」と口々に聞いてくる。
「そうだよ。この子、バレンタインデーから川崎先輩と付き合ってるの。」
友人のうちの片方がそういうと、一年生たちは黄色い声を上げる。「美男美女!」「憧れます!」などと感想が洪水のように押し寄せ、美優は耳まで赤くなるのを自覚した。でも不思議と、顔がほころんでしまった。
美優のSNSに、またあの男子からダイレクトメールが届いていた。『めちゃめちゃかわいいですね!付き合ってください!』と書いてある。美優はため息をついた。口説くにしたって作法ってものがある、これは面倒な人に見つかったなぁ、と美優はメールを放置することにした。反応しないのが最善だから。
以前、前のアカウントでも同じようなことがあった。断っても断ってもメールが送られて、ブロックしてもいくつかのアカウントを使って付きまとわれた。最終的に美優はアカウントそのものを削除した。相手にこちらの素性がバレなかったのだけが不幸中の幸いだった。
「は?」
『美優と別れてください。俺は美優の許嫁です。』
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