スマホの向こうのストーカー

夏野彩葉

第1話ダイレクトメール

「あれ?」

 電車を待ちながらSNSを見た美優みゆは思わず呟いた。ダイレクトメールが届いていた。開いてみると、同い年の男子らしい。美優が載せた写真を見たらしい、『かわいいですね!』というコメントに笑みをこぼしつつ『ありがとう』と返す。

 待ち合わせ場所の駅に着き、見慣れた後ろ姿を見つけ、美優はつい駆け足になった。

「だいちゃん待った?」

 大輔だいすけは「全然、俺も今来たばっかりだから。」と笑う。


「ねえねえ、これ載せていい?」

 アイスを食べながら、美優はさっき撮ったプリクラを大輔に見せる。『大好き』と書かれている、頬にキスしながら撮ったものだ。

「フィルターかけてぼかしたら、いいよ。」


 大輔に言われたとおり、フィルターをかけてぼかしてから、美優はプリクラをSNSに投稿した。高校生のカップル垢から、いくつか「いいね」が送られてくる。

 大輔からのメッセージも届いていた。『今日は楽しかったね』『みゆと付き合えて本当にうれしい』『みゆは可愛くていい子だから、誰かにとられないように俺頑張るね笑』『大好き』。お揃いで買ったハグするカップルのスタンプも添えられている。『わたしも楽しかったよ!』『だいちゃん大好きだから、ずっとだいちゃんの隣にいるもん笑笑』と返信する。

 そして、カップルがキスしているスタンプを送ると、美優はスマホの電源を落とした。

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