点数

卍Extendedねこ卍:君ら今回のテスト何点だったの?


竹:急にどうしたんです


卍Extendedねこ卍:あるでしょ、学校全体でやるテスト


卍Extendedねこ卍:あれの点数を聞いてるんだよ


!!??!!:マウントに利用する気満々じゃん


QWERTY:うわ


卍Extendedねこ卍:うわじゃねーーーよ!!!!!!!!


QWERTY:まぁ点数マウントってのは定番ではあるよな


竹:かなり定番ですよね、先輩方は去年はやらなかったんですか?


!!??!!:色々と重なってね…


竹:あっはい


QWERTY:でも点数っつっても平均なのか合計なのかなんかの教科に限定するのかわからんのだが


QWERTY:というかそもそも点数マウントって「点数が低い方が逆に気楽でいいもん!」みたいな受け流しが発生しないか?


!!??!!:あーそれな、マウント返しの基本・とりあえず価値観を逆転


卍Extendedねこ卍:大丈夫、今回はちゃんとそれに対する反論を用意してきた


!!??!!:穴しかなさそう


竹:穴しかないって虚無と同じでは…???


QWERTY:ト ポ ロ ジ ー


卍Extendedねこ卍:うるせーー!!!!理論を聞きなさい


!!??!!:はい


竹:すみません


卍Extendedねこ卍:「テストの点数」は、例えば食べ物とは違って「生産者」が一人しかいないんだよ


QWERTY:生産者?


卍Extendedねこ卍:そうだ、この場合テストを制作なり採点なりしている「教育者」たちだよ


卍Extendedねこ卍:ここで重要なのは、彼らが「テストは点数が大きいほどいいものだ」という前提のもとにテストを作っていることだ


!!??!!:えーっと


卍Extendedねこ卍:つまりこうだ、マウントを「取る側」と「取られる側」があったとして―――例えばわかりやすいのなら「寝てないマウント」に例えよう


卍Extendedねこ卍:「寝てないマウント」は「取る側」の材料と「取られる側」の材料を作り出しているのが全く別の人間なんだ。だから生産者同士での「どちらかの方がいい」「悪い」という意思の統一が為されていなくてややこしい"価値観"なんてもので比較する必要がある―――言うなれば「規格」が統一されていないんだ


卍Extendedねこ卍:でも点数を作り出しているのは同じ生産者だ、規格も当然ながら統一され、予め「低い方より高い方が上」という"価値観"の固定が行われている


!!??!!:あ~~~~~


竹:つまり「こっちの方が上」という前提で作り出されたものでマウントの取り合いをすれば、「単純な点数の高さマウント」とは別に副次的に「点数が高いから前提から考えてこっちの方が上マウント」が発生して受け流しが不能になる……ってことですか?


QWERTY:ん~~~なるほどな


QWERTY:でもそれっておかしくないか?規格が統一された(生産者が同じ)物ってのは世の中にはたくさんある、でもその生産者自身が考えもしないようなパラダイムシフトが起きたせいで、「下」と設定されていたものが「上」になることだってあると思う……例えば、人気作家が「これは最高傑作だ」と言って刊行した本よりもそれより前に出た本の方がずっと人気が高くなる、とかな


卍Extendedねこ卍:確かに本についてはそんなこともあるかもしれない


卍Extendedねこ卍:でも、点数に限って言えばそれは起こらないと言っていい


!!??!!:というと?


卍Extendedねこ卍:点数はそもそもの"情報量が少なすぎる"んだよ―――そもそもが比較以外存在意義のない数値だし、ほとんどの場合において―――少なくとも学校のテストにおいては、5桁にも満たない数字の羅列でしかない


卍Extendedねこ卍:これだけ情報量が少ないと、パラダイムシフトも起こりようがないはずだ


竹:ははあ…


QWERTY:むむむ、情報量が少なすぎてパラダイムシフトの余地がないというのは確かにそうかもしれん


!!??!!:流石は定番のマウント手法だなぁ、よく考えられてる


卍Extendedねこ卍:そういうわけで、みんなテストの点数を教えて


!!??!!:まぁマウンティングのためならしゃーないか……


竹:理屈はわかりました、まぁ教えてもいいかなぁ


QWERTY:やむを得ん


竹:ちなみに教える点数は総合なのか平均なのか何か教科を指定するのかどれですか?


卍Extendedねこ卍:ん?


卍Extendedねこ卍:あえーっとちょっと待って


!!??!!:いやなんで待つ必要があるんですかね?


QWERTY:こいつマウント取れるようになるべく自分が得意な教科選ぶつもりだな


竹:ひどい


!!??!!:うわ


卍Extendedねこ卍:うるせーー!!!!現国の点数だ、現国の点数を出せ!!!!


竹:現国得意なんですね


卍Extendedねこ卍:いいから!!


竹:77点です


QWERTY:96


!!??!!:82点…


卍Extendedねこ卍:う


QWERTY:おい


!!??!!:?


竹:いやあの


竹:先輩は何点なんですか?


卍Extendedねこ卍:うぇっ


竹:うぇっではなく


QWERTY:お前まさか


!!??!!:あっ


QWERTY:おい、マウンティングのためだ


QWERTY:点数を、言うんだ


卍Extendedねこ卍:うう


卍Extendedねこ卍:……69点……


竹:あー


卍Extendedねこ卍:待てや


卍Extendedねこ卍:いい?憐みも「一番得意な教科でそれかよ」みたいなツッコミもマウンティングも要らない


!!??!!:いやマウンティングは許されるでしょマウンティング研究会なんだから


卍Extendedねこ卍:うるせえ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


QWERTY:なんだこいつ


卍Extendedねこ卍:と、とにかく、えっと


卍Extendedねこ卍:そう、そうだ


卍Extendedねこ卍:点数が下だったとしても、あの


竹:あの?


卍Extendedねこ卍:そう!「こいつが解けてない問題を俺は解けてるマウント」!!!!!これで取り返せばいいんだ!!!!


!!??!!:それもう点数マウントじゃなくて答案マウントでは?


QWERTY:点数は情報量が極めて少ないからパラダイムシフトを起こしようがないって話だったのに情報量が普通に結構ある答案でマウント取ろうとしたら仮説が成立しなくなるじゃねーか


卍Extendedねこ卍:うるさい!!!とにかくえーっと新入り!どこを間違えたか言え!!!そして私にマウントを取らせろ


竹:いやあの


卍Extendedねこ卍:何!!?!??!?!?!?


竹:僕と先輩は学年が違うから答案を比べる意味がない気がするんですが


卍Extendedねこ卍:あっ


!!??!!:普段はマウント取られそうになっても反論まで一瞬な部長がこんなにテンパるってことはこのマウントはかなり効果的ってことだよな


QWERTY:自分で作ったマウントの第一被害者になるのウケる、これ答案マウント返しのことを考えなければ"完全なマウント"じゃないか?いやいろいろ穴がありそうではあるけど


!!??!!:自分の落とし穴を自分で掘る人だ


卍Extendedねこ卍:ぐぬぬぬぬぬ………!!!!!!!!!!!!

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