第27話、直轄領だからって…
「では、こちらの番ですわね『ウィンドカッター!』」
ギャン! ギャン! ギャン!
サスッ ギャー!
「あらあら、障壁は2重しか張ってませんのね。お粗末すぎますわよ」
ボム! ボム! ボム!
ドゴン ドゴン ドゴン
「「ぎゃー!」」」
「む、無詠唱だと…」
『スリープ!』
ガチャン ガチャン バタッ
「さて、眠ってもらいましたけど、どうしましょうか」
「ば、化け物…」
『召喚イゴール!』
ゴゴゴゴゴゴ
「あら、まだ残っていましたの」
「召喚悪魔には魔法は効かぬぞ、死ぬがいい」
「時間がかかりすぎですね」
カノンの前に巨大な目玉の生えた触手が現れる。
「ま、まさか…イビルアイを…」
ポン!
召喚士は消滅した。
「ご苦労様、対価はそこに倒れている人間。すきなだけ持って行っていいわよ」
ギャギャギャ
「交渉は決裂ですね。
イビルアイ、こいつも連れて行って。それと、その血筋の人間全部」
こうして、王の血族は全員悪魔に捧げられた。
ギャギャギャ
「さて、あなたはどうしますか?」
「き、金貨36000枚集める…、だから娘は…」
同時刻、チロル城の地下牢
「残念ながら国同士の交渉は決裂しました」
「ま、待て、その女は好きにしていい、金貨500枚なら俺の個人資産で支払う…」
「王子!」
…
「残念でした。王の一族は悪魔の生贄に決まりましたの」
「お、王子はどこに…」
「ですから、悪魔に連れていかれました」
「あ、悪魔…」
「ソートランドに悪魔系の召喚士がいたので、私の仲間が対抗する悪魔を召喚しました。
王家の血筋は、召喚の対価として悪魔に供出されることになったの」
「ち、父は」
「多分、あなたのお父さんって、総務局長よね。王に代わって賠償金を集めるって。まあ、よかったじゃない」
「何がいいんですか!」
「これで、ソートランドはチロルの属国よ。
というよりも、サワタリ様の直轄領かな。
貴族制度は廃止されて、国全体が豊かになるわ」
「貴族がいなくなって、どうやって国を運営するというんですか!」
「国民が自分たちで国を運営するの。
王族と貴族がいないぶん、ソートランドの方が早く改革されると思うわ」
「マスター、ソートランドの資産回収が終わったの。
マスターの直轄領ってことでいい?」
「俺に、そんな余裕はないぞ」
「全部ゴーレムに代行させればいいの」
「どうやるつもりだ」
「民主国家にするの。
国民の代表を集めて、協議制。
コメ主体の農業国にして、魔道具師も育成するの。
あと、海に面してるから、漁業併用なの」
「魚か。問題は輸送手段だな」
「チロルまで鉄道を敷くの」
「新しいゲートが開いたから、俺は手をだせないぞ」
「任せて」
「分かった」
「国の名前なんだけど」
「変える必要はないだろう」
「意識を変えないとダメ。
リュージアムにするの」
「好きにしろ」
「本日からこの国はサワタリ様の直轄領となり、国名をリュージアム国といたします」
ザワザワ
「それで、何が変わるんだ」
「今まで軍事国家だったこの国ですが、軍隊を廃止し、全員職業についていただきます」
「俺は今まで剣しか握ったことがないんだ。できるわけないだろう」
「職はこちらで用意します。主に農業と漁業になります」
「ふざけるな!それなら、ほかの国に行って兵士を続けるだけだ」
「どうぞご自由になさってください。ただし、トウレ国とクツル王国、ライズ国、チロル王国では軍備縮小に向かっていますから、軍隊での採用は厳しいと思いますよ」
「まさか…」
「それから、貴族制度は廃止します。元貴族の方も、同じ国民として働いていただきます」
「無理に決まっているだろう!」 「そうよ!」
「無理だと思うなら、国から出ていただいて結構です。ただし、貴族の資産は95%以上没収ですから。手持ちは最大でも金貨30枚です」
「横暴だ!」
「この国は敗戦国なんです。それをお忘れなく。
明日、城の跡地に3階建ての集合住宅を作ります。部屋は3部屋で5人以下の家族に一戸貸与します。
3日後に、貴族街は取り壊しますので、早めに申し込んで引っ越ししてください」
「メイドや執事の部屋はどうするんだ」
「メイドや執事を雇用するのは自由ですが、お給料を払えるんですか?」
「まさか、家族だけで生活しろというのか…」
「当然です。
4日後に要職者会議を開いて国の運営について話し合います。
各ギルドの代表者と、組合の代表者。城勤めの課長さんは10時にこの場所に集合してください。
それから、暫定政府の事務職を募集します。
必要なスキルは文字の読み書きと簡単な計算ができること。希望者はそのまま残ってください。以上です」
「城の職員はどうなるんですか?」
「城なんてどこにあるんですか?当然ですが全員解雇です。
事務職になりたいのなら、この場所に残ってください」
「待て、各局の局長や副局長はどうなるんだ?」
「総務局長は暫定的に賠償金回収担当になっていただきますが、それ以外は必要ありません」
「さてと、地球で手ごろな島を買い取って、城と貴族街を移築させるの。
チロル商会によるリゾート開発なの」
「島なんて買えるのか?」
「まったく問題ないの。10億も用意すれば大抵の無人島が買えるの。
専用の人工衛星を設置して通信環境を整えるの。
それでいて、外部からの干渉を遮断すればいいの。
偵察衛星も無効だし、沖合からの撮影もできない、完全なプライベートタイムが実現するの。
滑走路を作って、メイドゴーレムも大勢配置するの。
世界中のセレブに口コミで広げれば完璧」
「確かに、ニーズはありそうだな」
「そこで、リズ様のプロモを撮るの。
イルカと泳いで、クジラに乗るの。
クジラの餌付けシーンなんて宣伝効果抜群なの」
「そ、それは、昔夢見たことがある…」
「とっておきは、マーメイド型ゴーレムなの」
「そんなの登場させたら、世界中に衝撃が走るぞ!」
「みんなグラフィックだと思うの。
真実は、現地を訪れた人だけが知ってるの」
「わかった。やってみろ。俺も楽しみだ」
「らじゃーなの」
「ラムダ、ギリシャシリーズをフルセットで増産するの。
その次はマーメイドシリーズなの」
ギリシャシリーズとは、ギリシャ文字を名前にした24人組の事である。
「承知いたしました」
「それから、白イルカシリーズと白マッコウシリーズ。
ジェットスキー型ゴーレムもね」
「承知いたしました」
「カノンさん、本当にここに住んでいいんですか?」
「ええ、女性用単身寮ですから」
「食堂があって、広い共同浴場に個室。
個室にも水浴び用のシャワールームというのがあって、完全防音。
ベッドも備え付けで、事務机もあるなんて…」
「その代わり、居住者と許可された者しか入れませんけどね」
「なんでもやりますから、言いつけてください」
「期待していますよ」
一階にはコンビニもあり、使用料は給料から天引きされる。
この世界では手に入らないペットボトルの飲み物や、Tシャツからサンダルまで購入できる。
もちろん、部屋には冷蔵庫と魔導コンロもあり、自炊することも可能だ。
国の職員寮は、他に男性単身寮と家族寮もあり、同じイメージである。
一方、一般向けの集合住宅には、そこまでの設備はない。
総務局長は父娘の二人暮らしだそうで、別々の単身寮に決まった。
「私は、もともと平民の事務官です。
局長になって男爵位を与えられ、娘の婚約で屋敷を与えられましたが、妻と死別してからはフランと二人暮らしです。
二人とも、自分の面倒くらい自分でみれますよ」
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