第26話、侵略戦争

「ダメだ、王子が気を失った。白旗をあげろ」


クツル王国も同じ状況であった。



ノルンと魔法師B班とはライズ国の対応になる。


「魔導戦車らしきのが出てるな」


「ええ、一台だけですが、どうするんでしょうね」


その魔導戦車には騒動の発端となったサルタ王子が乗っている。


「おい、先に障壁バリヤを張っておけ」


「はっ」


ドーン!


「よし、全軍突撃だ!いけー!」


うおー!


「ン、何だあの雲は」


ドシャー


「うわっ、ハッチを閉めろ!」


パタン


「急にこのような大雨が降るとは、どうしたというのだ…」


「王子!ドラゴンの大群です」


「なに!」


グラッ


「ああああ、地震だ!」


ドーン

一気に10m落下する。

地面ごと落下なので、多少の緩衝効果はある。


「グッ、お、王子…!

大変だ、王子が気を失ってる」


ゴロゴロゴロゴロ


「な、なんだ…」


ドシャーン!




「あーあっ、まともにカミナリ喰らってんの…

生きてるかな…」


「はーい、相手は全員意識喪失です。

戦闘終了!」





「おいカベオ、アースウォールまででストップしてくれ。

あっ、雨も止めてな」


「はい。

エランさんも行くんですか」


「当然。指揮官は最前線にいてこそだ。

おっ、出てきたな。

カベオやってくれ」


「はい」


「アースウォール後、壁の上から空気砲。障壁が残っていたらウィンドカッターで破壊して後、空気砲だ。行くぞ!」


オオー!


ドシャー  ゴゴゴ  グラグラ  ドーン


ドゴン ドゴン ドゴン プシャー ドゴン ドゴン ドゴン


相手からの反撃が途絶えたのを見計らって攻撃中止の指示を出す。


「ん、見張りがいたか。3人で拘束してこい」


「はっ」




こうして4国との戦闘は終わった。


「はい、お疲れさまでした。

成果は上々ね。魔道具も効果的でしたし、魔法師の質も満足できるレベルでした。

これからも、魔法の有効活用目指して頑張りましょう。

カンパーイ!」


「「「乾杯!」」」


ランの音頭で祝勝会の宴が始まった。


そのころ、地下では捕虜の尋問が行われている。


「ふざけるな!俺はソートランドの第二王子だぞ!

正当な王族に対する待遇を要求する!」


「残念でした。正当な戦争であれば考慮こうりょいたしますが、宣戦布告のない奇襲の場合、そのお申し出は却下です。

交戦規程上、敗戦国の賠償金は金貨1万枚。今回はその倍の2万枚になります。

ソートランドが応じない場合、皆さんは全員死んでいただきます。

そのうえで、報復する権利がこちらにありますので、まあ、ソートランドには滅んでいただきましょうか」


「な、なに!」


「あっ、ご安心ください。

国民には手を出さないで、城だけ落としますから」


「そ、そんなたわけた話…」


「見ていたんですから分かりますよね。

それとも、そちらの女性騎士さんに見とれていたんですか?

あっ、捕虜の扱いはこちらの裁量ですから、その騎士さんは性奴隷にでもなっていただきましょうかね。

貴族から堕ちた奴隷って、ニーズ高いんですよ」


「ヒッ」


「まて、フランソワーズは俺の婚約者だぞ!」


「第二王子と婚約者。捕虜の解放条件としては金貨1000枚といったところですか。

他に貴族の方はおられますか?」


「くっ、その情報を引き出すための方便か…」


「出陣した者への報償もありますからね。

少しでも金額を吊り上げないと」


「金貨2万枚など出せるはずがないだろう…」


「あら、貴族王族の資産を没収すれば、それくらいは容易いですよね」


「わ、私の家は元々平民です。そのようなお金は用意できません」


「それは、国の賠償が成立したあとの話ですから。

どうしましょうか、カベオさんその女、試食してみますか?」


「いや、胸のでかい女は好みじゃない」


「あら、鎧の上から分かるんですか」


「なんとなく…」


「じゃあ、いてみましょうか」


「い、いやー!」





そのころ、カノンがソートランドの城に到着した。


「何者だ!」


「チロル国王の代理でまいりました。

国王に取り次いでくださいませ」


「そのような知らせは受けていない」


「当然ですわ。奇襲された国が、前触さきぶれなど出すと思いますか?」


「少し待て、今総務担当に問い合わせる」


「分かりました、待ちます」


「ふん、おい、確認にいけ」


「はっ」


…………


「3分経ちました。回答は?」


「まだ使いが戻っていない」


「では、勝手に通ります」


「なに…」


「眠っていただくだけですからご心配なく。

さあ、みなさんもお休みください」


バタバタバタ


メイド服姿のカノンの歩みにあわせて、兵士がパタパタと倒れていく。


「何事だ…」


「国王様ですか?」


「…」


「無言は肯定と受け取ります。

チロル国王の代理でまいりましたカノンと申します」


チロルがカーテシーで挨拶する。


「…チロルだと…」


「はい、此度の侵略に対し賠償を請求にまいりました」


背後から襲い掛かろうとした騎士が肩を氷で貫かれて悶絶する。


「侵略ではない、正当なる戦だ…」


「第二王子も拘束し、事後工作に用意されたらしい宣戦布告の文書は押さえました。これは明確な侵略行為です」


「だから何だというのだ…」


「侵略部隊は壊滅。捕虜300数十名。第二王子と婚約者は拘束してあります」


「ま、負けたというのか…、いや虚言だ、まだ戦闘開始から一時間も経っていない」


「こちらが、交戦規程に基づいた反則金の請求です。

捕虜の価値については確認中です」


「き、金貨2万枚だと!」


収納から証拠品を取り出す。


「こちらが第二王子のいていた剣と、婚約者の鎧。および衣類一式になります。

ご確認くださいませ」


貴族らしいのが一人駆け寄ってくる。


「ああ、間違いなくフランソの鎧、下履きも…

おのれ、貴族をはずかしめるなど交戦規程違反ではないか!」


「奇襲である以上、交戦規程は適用されません」


「うっ…、それで、娘は無事なのか」


「それは、そちらの回答次第です」


「だが、金貨2万枚など…」


「拒否された場合、捕虜の皆さんは奴隷ですね。

そのうえで、城だけを攻め落とし、貴族王族は処刑。

チロル国の属国になっていただきます」


「バカな、そのような事が許されるはずもない」


「誰が許さないのでしょうか?

本日の模擬戦で周辺国はチロルの実力を知ってくださいましたし、わがあるじ地竜様のほかサワタリ様もご照覧いただいております」


「ち、地竜…」


「サ、サワタリ様まで顕現しておられるのか…」


「わ、わかった、金貨2万枚を支払う…」


「ありがとうございます。では、捕虜解放の交渉に移りましょう。

第二王子と婚約者解放に金貨1000枚。捕虜1名につき金貨50枚。合計で金貨1万6千枚になります」


「む、無理だ、国の予算ではとても…」


「王家と貴族の資産を合わせれば、十分支払い可能ですよね」


「ううっ…」


その時、背後からこえがかかる。 


「そこまでだ!国王に対する狼藉は許さん!」


「あらあら、時間稼ぎしてたんですね」


「当然だ!チロルに払う金などないわ!」


「こ、国王、それでは娘が!」


「お前の娘に金貨3万6千枚の価値があると思うのか!

兵団長、やれ!」


ジャキン!


「あらあら、騎士30名と魔法師10名ですか、その程度で何をされるつもりでしょう」


「問答無用!」

カン!カン!カン!


「物理障壁か!魔法師!」


ファイア! フローズン! スリープ!  エアカッター!


ギャン! ギャン! ギャン!


「おのれ、魔法障壁まで、ひるむな続けるんだ!」

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