第24話、魔道具の威力
「では、黄色と赤のリングについてご説明します。
黄色には二つの魔法が入っています。
一つ目は幻覚魔法の応用で、自分以外を敵に見せるものです。
次に地軸のゆがみという魔法で無属性です。まだ、内容が解明できていないのですが、方向感覚を狂わせます。
耳を塞いでいれば防衛できるので、おそらくは音に作用していると思われます。
この二つで、同士討ちを狙います。
自分でくらってみたのですが、5分ほどはクラクラしてまともに魔法を打てません。
最後に赤のリングです。
ここに書き込んだ魔法は、ウィンドカッター3連発です」
「3連発だと!」
「そうです。
一度魔力を流すたびに3連で発射します。
これで、相手の障壁は消えます。
下手をすれば、3発目が敵を切断します。
しかも、初期設定で照準補正がかかっていますから、外れることはありません。
3連発を連続で発動することも可能です。
以上です。
質問はないですよね」
「逆に、うちが喰らったらどうなる」
「左手に魔力を流している限り、破られた障壁は瞬時に復元されます」
「血を見るのが好きなら、使ってみろってか…」
「まあ、赤は切り札だと思ってください」
「最後に、魔道具師チームの攻撃ですが、敵陣に土砂降りの雨を降らせて、周囲を10mの土壁で囲みます。
この間、並行して幻影魔法を放ち、その直後にアースシェイクとラージホールという土魔法を仕掛けます。
敵陣は10m沈むので、ここから脱出するには20mの壁を越えなければなりません。そこへ雷を落とします。地面は濡れているので広範囲に効果がでます。
それでも降伏しない場合、太陽の光を使って灼熱地獄を仕掛けます。
これが、全体的な流れですが、その他に3cmの鉄球を3連続で打ち出す道具を5セット用意します。これは、最初から浮遊もしくは飛行を使ってきた場合の対策です。
以上ですが如何でしょうか」
「その攻撃は誰がやるんだ」
「3国が、違う方向から攻めてくることを想定して、俺とシェリーとジュリが単独で仕掛けます。
ノルンは全体を見ながら効果が薄い方面に応援で入る形です」
「俺たちの出番は?」
「飛んでいる敵の対応と、できれば土壁から出てこないようにしていただきたいのですが」
「敵が魔道具を使ってこない限り、障壁を張っている最中に土砂降りになって魔法は中断。
進軍してくる歩兵は壁で囲まれて、地震で揺らされて10m落下。
早ければこの時点で降伏だろうな」
「指揮官まで穴に落下すると、白旗なんか上げられないぞ」
「そこは、私たちメイドチームがジャッジしますからご安心ください。
みなさんに無益な人殺しはさせませんから」
「それなら、思い切り力を発揮できるな。
ところで、自分の魔法を使って攻撃してもいいんだろ」
「そこは存分にどうぞ。
防御のリングだけ発動していただければ、攻撃のリングを使うかは皆さんの判断にお任せします」
「なあ、この間お前たちが打ち合ってた空砲の魔法があるだろ」
「はい」
「俺の黄色のリングはあれに変えてくれないか。
あれって、魔法を撃ってるって気分になるだろ」
「確かに気持ちいいですね。でも、多分防御されますけど、いいんですか?」
「そしたら、ウィンドカッターで障壁を打ち抜くさ。
だが、…ウィンドカッターは単発でいいんじゃないか?
様子を見ながら撃った方がいいと思うんだけどな」
「ああ、空砲で様子を見て障壁を張られていたらウィンドカッターで打ち抜く。
そうすれば、無駄な血を見ないでもすむからな。
わしも、そうしてもらおうか」
「「「俺もそうしてくれ」」」
結局全員分を書き換えることになりました。
「じゃあ、今日中に書き換えますから、今日は防御のリングだけ試験してもらって、攻撃用は明日お願いします」
「じゃあ、今日のところは自前の攻撃魔法で飛行を併用した実践訓練だ。
いくぞ!」
「「「おお!」」」
「効果9倍なのを忘れないでくださいよ。
間違っても城に向けて魔法を撃たないでくださいね」
「大丈夫。私が城に障壁をはっておきますから」
「あと、魔道具チームの攻撃も見ておきたいんだが」
「あっ、私がやりますから皆さんはリングの書き換えを続けてください」
「だったら、最後の灼熱を浴びると空気が入らなくなりますから、注意してください」
「おお」
「なんか、魔法師チーム…、楽しそう」
「だけど、意外と抵抗なく使ってくれそうだな」
遠くからドーンドーンと爆音が聞こえてきます。
「この3週間、単調な訓練の連続だったからな。そのストレスを発散してるんだろう」
「俺もテスターばっかりだったからな、誰か俺のストレスを発散させてくれねえかな…」
「あら、私でよかったら」
「やめれくれ!ジュリに手を出すほど愚かじゃねえよ」
「でも、お姉さんに手を出すのはまずいでしょ」
「冗談でもやめてくれ!」
「ノルンよ、お主には今回リングに書かれた呪文がわかるのであろう」
「ええ、書き込んでいるのは私たちですから」
「それを、皆に教えることはできぬのか」
「メリル導師、実は直接呪文を唱えて試したんです」
「ほう、それで」
「自分の力量に見合ったものしか発動しませんでした」
「なぜだ」
「先生に確認したのですが、おそらく感情がブレーキになっているのだろうと言われました。
記録された文字は、魔法陣と同じで記号として魔法を発動するのに対して、言葉には思いが入ります。
その思いが邪魔をしていると」
「なるほどな」
「それと、魔法師にとってMP1の魔法は、己を鍛えるチャンスを奪うとも言われました」
「確かに、数をこなして魔法は上達するかもしれんが、魔力を練ったりせんからな。
わしは、ようやく地竜さまの見た目とのギャップを埋められたように感じているのだ。
あれは、そんなに生易しい存在ではないよな」
「おっしゃる通りです。カベオは、サワタリ様に近しいために、地竜さまの手ほどきを受けています。
今回書き込み出来た古き時代の魔法は、カベオが古魔法文字を読めたからです。
しかも完璧に」
「クククッ、禁書も含めてすべての本を読むことができて、魔道具への書き込みもできるとなれば人間の中では最強かもな」
「笑い事ではありませんよ。
サワタリ様の身内である以上、例えば五竜様から見ると優先順位の上位に…おそらく10本の指の中に入るでしょう」
「本人にその自覚がないだけかよ」
「いえ、認識はしているのですが、野望や欲といったものに興味がないのだろうと見ています」
「そういう人間の作る魔道具か。楽しみになってきたわい」
「おい、ノルン。こいつはやみつきになりそうだぞ」
「昨日は楽しそうでしたね」
「ああ、半日跳び続けて、魔法を打ちまくったからな。
それでも魔力は余裕だった。
しかも効果9倍の影響か高速移動の影響か分からないが、すごい速度で跳び回れたのは間違いない」
「今日は空砲で空中戦ですか」
「ああ、そっちの攻撃も体感させてもらうぞ。
こっちは、紅白戦で楽しませてもらうがな」
「先輩は敵方ですか」
「ああ、地震を喰らってから飛び出す設定だ」
「何とか足止めしてレンズを味わってもらいたいですね」
「できるもんならやってみな。
自分たちで作った完璧な防御を崩せるならな」
「あと一時間…か」
「じゃあ後でな」
「余裕なのも悔しいな。
カベオ、なんか思いつかないか」
「うーん、そうだな…」
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