第23話、合同会議

「おっ、こいつは召喚術の本だな。

なになに、五竜を召喚する…召喚しねえよ。ああ、こんなんで姉さんたちを呼び出したら怒られるよな。

こいつは勘違いした奴の記録だな。

あとは、精霊を呼び出して己の魂を対価に身にまとう方法って、魂なんか差し出さないって。

宴会芸で使う上級魔法って、何考えてんだ。

おお、打ち上げ花火かよ。こいつはイベントで使えそうだな。

花を降らせたり、参加者を多く見せる魔法。

おっ、幻覚魔法の専門書だぜ。こいつは…

なになに、幻覚魔法は直接精神に作用するため、魔法障壁や物理障壁では防げない。

これを防ぐには精神系障壁が必要となり、これは2巻の巻末に記載するって、どこだ2巻!」


「これは?」


「魔法で夜の営みを豊かにする本って、違う」


「こっちは?」


「魔法少女のすすめって、なんだよ」


「こいつは?」


「魔法で作る各種障壁…違うけど関係ありそうだな。

どれどれ、複数枚の魔法障壁を一つの魔法で展開するにはって、使えるじゃんこれ。

物理障壁もかいてあるぞ。

おっ、精神障壁も載ってるじゃん。

障壁が破られた時の復元方法。

特定の相手を寄せ付けない魔法…、虫だけを寄せ付けない魔法…、後半は役に立たないな」


「ほかの本はどうだ?」


「さっきの幻覚魔法をもう少し詳しく」


「おっ、こいつだったな。

五竜を再現する幻覚魔法に、アンデッドを出現させる幻覚魔法。死んだ家族を見せる幻覚魔法…えぐいな。

理想の異性が裸で出現する幻覚魔法に、悪夢を再現する幻覚魔法。溶岩が襲い掛かるのや、水に飲まれるのもあるな」


「一応全部記録しておきましょうよ」


「裸は必要ないだろ」


「あら、興味ないの?」


「…」


「嫌だ、それで姉ちゃんが出てきたら、俺立ち直れない…」


「大丈夫。その時はお姉さんを忘れさせてあ・げ・る」


「やめろ、耳に息を吹きかけるな!」


「ちっ、このシスコンが…」


「ほかに、相手を威嚇いかくするような魔法はないのか」


「地殻変動系とかあるけど、国の周りで使いたくないよな。

悪魔召喚は対価が必要だし、おっ、土を熱して溶岩を出現させる…火山誘発の危険性ありか。

広域のせん滅魔法で、熱した岩を降らせるってのがあるぞ。ああ、これも溶岩の応用かよ。

あとは、雨を降らせて足場を泥に代えて足止めする。これは使えそうだな。雨自体は魔法で出現させるわけではないため、魔法障壁では防げないってさ。

そのうえで雷雲を発生させて雷を落とすって、これも雷が自然現象であるため魔法障壁では無効化されないって書いてあるぞ」


「土砂降りで視界と行動を制限して、それでも抵抗してくるようなら雷か。

接近してくる前に雷を落とせれば勝ちだな」


「あとは、敵の上空の空気を圧縮してレンズ状にして、太陽の光を集めて熱する。

これも、熱自体は魔法ではないから障壁では防げない。」


「結界を張っていなければ死ぬな」


「周りの空気が熱くなっていたら、空気が入ってこないってこと?」


「広域の風魔法で対抗できるけどね」


「幻覚と土砂降りでけん制して、雷。それでもダメならレンズってところかしら」


「土砂降りで視界を奪っておいて、10mくらいの土壁を出現させて相手を囲み、アースシェイクとラージホールでかく乱する。

幻覚を並行して実施して、相手が降参しなかったら雷。次にレンズかな」


「そうすると、魔法師の交戦やカベオさんの突撃は、その後ね」


「うん。相手の魔法師も相当消耗してるだろうし、これでいけると思う。

あとは、発現のタイミングやうまく発動するかのチェックだな」


「まさか、それを俺に?」


「大丈夫。浮遊があれば大部分は防げる」


「まてよ。雷の障壁はなかったぞ」


「そこは、ラン様のオリジナルがありますよ。例のアプリですべて対応可能です」



という訳で、作動実験となった。

今回は先に連絡を入れてあるから、多少派手でも問題ない。


「花火の合図でスタートだったな」


ドーン


「よし、ゴーだ。防御リングに魔力を通して、全力疾走。

うお!雲の集まりが早いじゃねえか…」


ドシャー


「くっ、前が見えねえぞ。5秒で土砂降り3秒後に壁隆起…って」


ゴゴゴゴゴ


「無理、全然壁にたどり着けねえって。

3秒後のアースシェイクまでに壁を飛び越せれば…、うっ、間に合わねえ」


グアングアン


「足元が歪むぞ、だが幻覚は見えてねえ。精神の障壁は有効ってことだな。

うを!いきなり足元が消えるのかよ…で、20秒後に雷だったな。

対策できてりゃ脱出可能じゃねえかって…」


ドカーン


「追尾式の雷かよ。ぐわっ!

雷は防げても吹っ飛ばされるのかよ。で、最後は1分後にレンズだったな」


ゴゴゴゴゴ


「って、なんでまた壁が出てくんだよ。土砂降りの範囲が広がってるじゃねえか。シェイクにホールで雨雲が消えてレンズかよ。

ああ、アプリじゃなかったら死んでるな…」




「生きてるのね」


「死んでたまるか、

なあ、降伏の合図とか決めておかねえと、見えねえぞ。

それに、雷の前にもう少し時間をやらねえと混乱したまま食らっちまうぞ」


「降伏は白旗に決まっているじゃない。

判断の速さは司令塔の条件よ。遅れた向こうが悪い。それだけよ」


「あとよ、魔法の追加は事前に話してくれよ。味方に不意打ちしてどうすんだよ」


「生の反応を見たかったからね」


「じゃあ、微調整して、カベオが防御のリングを確認すれば準備オッケーね」


「あれっ?最初から飛んでいた場合、壁や地面系は効果ないけどどうするんだ?」


「3cm鉄球の3連対空砲火を10セット用意する。あとは、魔法師の攻撃用に幻覚と方向感覚を狂わせて同士討ちさせる狙いでいいだろう」


「障壁を無効にするウィンドカッター3連発も組み込んだ方がいいんじゃない」


「じゃあ、もう一つ黄色の腕輪を用意するか。黄色に幻覚と方向感覚を狂わせる魔法をセットして、赤がウィンドカッターだな」


こうして、魔道具師チームも、開戦3日前を迎えた。




「では、魔道具師チームから、装備品の内容について報告してください」


「はい。魔道具師チームのシェリーです。

今回は3種類の腕輪を用意しました。

防御と増幅系は青い腕輪。これは左手に装備して最初に起動してください。

黄色は攻撃補助で、赤は攻撃です。先に黄色をはめてから、次に赤でお願いします。

では、セットした魔法を順に説明します」


「魔道具師チームのジュリです。

青い腕輪。防御系の内容ですが10の魔法が順番に発動します。

起動は表面に軽く触れて魔力を流してください。微量で大丈夫です。

一つ目の魔法は、消費魔力を1にする魔法で魔力が流れている間はあらゆる魔法を消費MP1で発動できます」


「ちょっと待ってくれ。話には聞いたことがあるものの、誰も使ったことがないし、見たこともないぞ。

そもそも呪文を知らないんだから、話にならないぞ」


「呪文は書き込んでありますから、皆さんは腕輪に魔力を流すだけです」


「「「まさか…」」」


「あとで試していただきますので、先を続けます。

2番目は魔法威力増加で、9倍にしてあります。

3番目に魔法障壁、4番目に物理障壁、5番目に精神障壁、6番目に基礎体力増加で、7番目に高速移動。

8番目に結界で、体から30cmの距離で、熱と冷気と電気の耐性を付与してあります。

9番目に魔力回復増加。

最後に照準補正。これは攻撃の補助用です

質問はありますか?」


「いや、疑問しかないんだが、この9つの魔法が消費MP9で発動するというのか」


「いいえ」


ザワザワ、やっぱり、そんなうまい話はないって…


「最初の消費MP1の魔法で、MP10を消費します。ですから消費MP19になります」


「ブッ、ホントかよ!」


「発動の時間は?」


「瞬時です」


「馬鹿を言うな。上級の魔法師でも最低30分はかかるぞ」


「それが魔道具です」

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