第22話、古代語で書かれた魔法書
「あれっ、ちょっと待って。
私たち敵側だったから不安定な足場だったけど、突撃していく二人には必要ないんじゃない?」
「ああ、俺は不要だけど、カベオは?」
「身体強化があれば要らねえよ」
「じゃあ、ほかに防御系で必要なのは?」
「炎系魔法の直撃はないとしても、ブレスとか熱対策が必要なんじゃねえか」
「じゃ、そこは結界に付与しておくか。熱と冷気と電気でいいな」
「電気っつうと、雷の直撃か」
「ああ、昨日見ただろう」
「あの、あ…Aさんだな」
「滅多なことを口にするなよ。あれは次元が違うから結界じゃあ防ぎきれないと思うが、気休めだ」
「だが、何で五竜は女性ばっかりなんだろうな…」
「カベオさん、ほかの人も知ってるんですか!」
「ああ、ランさんはみんな知ってるだろ。最初はもっとメタルチックだったんだけど、かわいくなったよな。
それから、水竜のSさんに暴竜のSさん。火竜のMさん。みんなキレイだよな、オッパイ大きいし」
「カベオさんって、そういえばお姉さんがサワタリさまの…」
「ああ、リュウジさんと最初に会ったのは俺と姉ちゃんだったからな。
母さんと妹を助けてもらった恩もあるし、もう、頭を向けて寝らんねえよ」
「えっと、頭は向けていいんじゃないかしら」
「もしかして、カベオさんって大穴!とか一瞬思っちゃったわよ。やっぱカベオさんはカベオさんよね」
「チェッ、俺だって一応気を使ってんだぜ。ランちゃんって呼ばないようにしたり、リンやミクルも先生って呼んでるし」
「はい、無駄口はそれくらいにしてください」
「じゃあ、防御系はそれでいいとして、ブレスの試験ってできるのかな」
「火竜の姉さんじゃ怖すぎるからな」
「だけど、ほかにブレスを使ってくる相手なんて…」
「ああ、そういえばいたよ。上級ダンジョンのあいつなら…」
「えっ、カベオさんって上級なんですか」
「いや、俺一応身内だからスタッフなの」
「ピーッ!カベオさん、それは禁則事項ですよ」
「あっ、いけね。姉ちゃんに怒られる」
「そこ、怒るのお姉さんなんだ…」
「リュウジさんからはぶっ飛ばされるだけ。姉ちゃんのお説教は長いからさ…。
まあ、ブレスの検証は俺がやってくるよ。
ついでに、ダンジョンで検証してくることあったら、やってくる」
「水に落ちた時とか、溶岩の上に落ちた時とか」
「溶解液とか、触手につかまれた時とか…」
「毒や麻痺系も書き加えて試してもらおう」
「そうね。石化とかも確認が必要ね」
「いいよ。全部場所は分かってるから試してくる」
「ダンジョンの中、全部わかってるんですか」
「俺、テスターだから、ランちゃ…様の防御アイテム装備して全部回ってる」
「また、イエローカードです。次でレッドカードですよ」
「そうだ、倍返しって、あれ魔法なの?」
「倍返しはラン様のオリジナルです。
一般には公開されていません」
「チェッ、あれって防御と攻撃が一体だから、便利なんだけどな」
「それって、反射の応用かもしれないな。魔法だけなのか?」
「いんや、魔法も物理も倍にして返す」
「うーん、リン先生。城の資料室って入れないでしょうか」
「禁書庫は無理ですが、資料室なら私が同行すれば入室できますよ」
「どうせなら、全員で行こう。使えそうな呪文があったら書き出してあとで検証すればいいから」
「紙で書き出すのは禁止されていますけど…、ミスリルに記録するのは、ラン様に確認してみますね。
…、ええ。はい。今回は許可ですか、ありがとうございます。
ラン様の許可が降りました。記録した内容は私が検閲して持ち出すこととします。
ただし、魔方陣は禁止です」
「ちょっとした間違いで、暴発する危険性があるからですね」
「その通りです」
こうして、魔法技師の4人は資料室で、魔法書の確認に入ります。
「ああ、やっぱり現代語で書かれているものって、あまり有効なものはないな。
反射の部分は読んだけど、応用の仕方はなかったよ」
「魔法師にとってはそうかもしれないけど、私たちから見ると宝の山よ。記録するものが多すぎるわ」
「そうかぁ、これなんか使えそうだなフレア。炎系の最上級魔法であり、爆発を伴う。
さらに、増幅させるメガを組み合わせることで、都市規模の…」
「お、おまえ、何を読んでいるんだ」
「えっ、これは上級魔法抜粋って本だな」
「カベオさん、その本読めるんですか…」
「それ、古代語の一種だよな…」
「ああ、そういえばランちゃ…、さんの能力開発プログラムとかいうの受けてから、何でも読めるようになったな」
「人体改造?」
「いや、睡眠学習だって言ってた」
「それにしても、羨ましいですわ。誰でも受けられるんですか?」
「いや、まだ試験実施なんだって」
「それって、人体実験…何か副作用とかないんですか?」
「いや、特に…少し夢が変わったかな」
「何で顔が赤くなるんだよ!」
「エッチな夢なんですね…」
「…」
「いや、あれはカロリーメイドの副作用だと思う。
姉ちゃんに騙されて、フルアーマーの状態で食わされた」
「まあ!」
「おっ、消費魔力1の魔法も出てるじゃん。これとメガの使い方は記録しておこう。
あとは、バースト。爆裂魔法か、ちょっとグロイな。
ストーム、使用者の周囲で防風を引き起こすか。半径5kmじゃ味方まで吹き飛んじゃうよ。
ウィンドカッター、風系のスラッシュの上級魔法で敵の魔法を切り裂いて襲い掛かる。重ね掛けすることで魔法障壁や物理障壁の無効化にも効果的。
これ使えそうだな。サイズも指定できるから、ワイバーンも落とせそうだね。
エアーハンマー、風系の応用で、空気を圧縮し敵を叩き潰す。
アースシェイク、土系の上級魔法。地面を振動させる。範囲と振動方向、振動幅を指定できる。
ホール、土系の中級魔法。幅・深さともに10mの穴をあける。上位のラージホールは幅と深さを指定できるが、土を圧縮するため消費魔力量は土の密度に影響する。
土系は敵に対する魔法ではないため、その多くは障壁に影響されない。
これって、めっちゃ魔導戦車用だよね」
「そ、そうね」
「せ、先生、これって記録して問題ないんですか?」
「上級ですから、使う人もいる魔法ですよ。特に問題ありません。
えっと、相手は宣戦布告してきていますから、こういった魔法を使える人は躊躇なく使ってきます。
使わないとしたら、魔力消費が激しすぎて一発で使えなくなるというデメリットがあるからですね」
「じゃあ、こっちも障壁を3重くらいに重ね掛けしておかないと…」
「規格外の魔法師を想定するなら、7重・8重ですね。
破られたら、すぐに補修できるようにするのも必要です。
皆さんは、もう少し戦争ということを理解したほうがいいですね」
「せ、戦争…」
「そうです。複数の魔法師が時間差でウィンドカッターを放ってきたら、今回作った防御のリングでは役に立ちません。
向こうも当然、何重もの障壁を張ってくるでしょう。皆さんはそれを打ち抜く攻撃手段を考えないと勝てませんよ」
「俺やノルンは小競り合いとか経験してっから分かるけど、女性陣にはきついんじゃないか」
「いや、俺も対人の実戦は初めてだ」
「おっ、初陣が突撃部隊なんてカッコいいじゃねえか」
「わ、私だって…」
「そうね。この職を手放す気はないわ。
これが、必要だっていうのならやってやろうじゃないの」
「まあ、流血なしで無力化できれば一番だからな」
「それか、圧倒的な力の差を見せるかってことね」
「じゃあ、カベオさんの持っている本から…」
「見たところ、現代語で書かれている本は中級までのものだけだ。
ほかに俺たちが読めない本をチェックしてもらおう」
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