第3章、魔道具師
第16話、王の我儘
爺ちゃんに頼んで、隣の部屋も借りることにした。
俺とリズの生活スペースだ。
そんでもって、元から使っている部屋は家具をとっぱらい、ドアというかハッチを10個新調した。
もちろん、開けると壁があるだけなのだが、一応毎日壁があるかどうかチェックしている。
何もなければ、ダンジョンランドでお仕事だ。
スタッフミーティングは毎日行われるし、内務局や厚生局との打ち合わせに王族とのコミュニケーション。
仕事は山積みだった。
午後は地球世界で仕入れを行う。
「マスター、ダミー会社を作りましょう」
ある日、ランが提案してきた。
「マスターは一切表に出ないで、ダミーの代表者を仕立て、そこそこ黒字にして税金を納めれば問題ありません。
物流のための倉庫だけ郊外に借りて、納品は全部そこにします」
「あー、どうせプランと手配は済んでるんだろう、いいよ任せた」
こうしてチロル商会が誕生した。
最初はマオの世界に必要な物資の調達だけだったのだが、ナオの世界にも拡大していき、地球世界内での取引も始まったみたいだ。
当初の資金調達は株の売買である。この手の情報はランの手の内にあった。ネットである。
資金を得たランは、自身の能力を拡張して情報処理の速度と精度をあげていき、同時に事業を拡大していく。
「リュウジさん、今度ランちゃんの芸能プロダクションからデビューすることになりました。アメイヤも一緒です」
「えっ、そんな事まで始めてんの…」
「でも、リズってショップとモデル契約してなかったっけ?」
「なんか、ランちゃんが会社ごと買収したみたいです。ですので、今はチロル商会の専属モデルですって。
明日は、海外向けのCM撮影でモルジブへ行ってまいります」
「モルジブって、もしかして水着?」
「ええ、楽しみです」
そういわれたらダメって言えないじゃん…
翌日、城へ行くと太陽光発電を拡張できないかと王様から相談された。
「うーん、あの太陽光発電で3kwですから、今の電子レンジ2台とケトル2台でいっぱいですよね」
「照明はエルイーデーの普及で国中が明るくなったんじゃが、町中にも食堂を作ってほしいと要望があってのう。
ダンジョンランドを整備するなら町も便利にという民の希望も無視できなくてな。
それに、リズから聞いたんじゃが、冷蔵庫という食材を冷たくして氷も作る道具があるそうじゃないか。
そんなものがあるなら、城に設置してもらえんだろうか」
「冷蔵庫ですか…、でもそれって魔法でできるんじゃないですか?」
「リュウジ、確かに魔法でも可能だけど、ずっと冷やしておくのは効率が悪すぎるんだ」
イワンが口をはさんできた。
「じゃあ、冷気が逃げない部屋を作って、そこに氷を作るっていうのはどうですか?イワンの内務局の仕事でできますよね」
「そんな部屋を作れるのか?」
「部材は俺が調達しますから、職人は内務局の方で手配してください。
それがうまくいったら、町中にも展開しましょうよ。
町の食堂については、少し考えさせてください」
電気っていうのは、便利な代わりに事故も多いので、管理しきれない状態にはしたくない。
大規模な太陽光発電所だって作れない訳ではないのだ。
それと、町中に食堂か…
確かに、酒場兼用の食堂はあるけど、食事専用の場所って少ないからなぁ。
うどんの店とか、パンの店はあるけど…あれっ、米がないじゃん。
やる事が増えてしまった。稲作を広めるんだ。
ダンジョンの東に、シズクの作った湖があったよな。
あれを水源として田んぼを作る。
開墾は土木局で、稲作は農事局か。このあたりの調整はアメイヤとシズクに丸投げしよう。
シズクには米があれば酒も造れると吹き込めばきっと一発だ。
食堂は米中心で、アンテナハウス的にコメ文化を広げていく。ついでにラーメンとか出せたらいいな。
ここは、暴竜のシオンにやらせてみよう。
ところで、ラーメンって…、どうやって作るんだ?
「ラン、ラーメンはこっちの世界で作れるのか?」
電話で確認する。
「あい、マスター、簡単あるよ。
うどんの生地にカンスイ…、うーん、塩湖みたいなアルカリ性の水なんかを混ぜればいいあるよ。
細く切るなら、パスタマシーンで切るよろし」
「やめろ!なんだそのエセ中国人みたいなしゃべり方は」
「いま、ちょうどラーメン王国の大冒険ってアニメ見てたね。
そこの王様の口調なの」
「それで、塩湖って近くにあるのか?」
「北に200kmかな、隣の王国にあるの。
でも、重曹で代用可能だから収納に入れといたの。
あと、商会の取り扱いにパスタマシーンもあるの。
100台くらいあればいい?」
「とりあえず5台でいい。それで、簡単につくれるのか?」
「シオンが修行中なの。自分でラーメン作るんだって言いだしたの」
「わかった。こっちの食材でラーメン作れるようにしてくれ。2週間で」
「了解なの」
「あとは、城に冷凍・冷蔵室を作りたい」
「電気?」
「いや、魔法で冷やす。断熱材とかの機材を買い付けてくれ」
「今、建築中のビルがあるから、そっから回すの」
「ん?芸能事務所と雑貨だけじゃないのか?」
「総合商社なの。本社ビルを自前の建築部門で建ててるの」
「そ、そうか、頼む」
「職人ゴーレムはいらない?」
「いや、加工は内務省でやらせる」
「残念。メイドコスのゴーレムチームが待機して、仕事待ってるの」
「か、考えておく…」
「あっ、冷凍庫と冷蔵庫の魔道具なら作れるの。室内灯も付属の」
「ほんとか?」
「ただ、設置が難しいの。職人ゴーレムなら簡単なの」
「…、わかった。全部任せる」
「感謝なの」
翌日、城へ行くと5人のメイドが待機していた。
「おはようございます。ご主人様」
「ああ、おはよう。悪いな手間をとらせて」
「とんでもございません。ご主人様に喜んでいただくことが私共の生き甲斐でございます」
うーん、モデルはボカロキャラっぽいな…
「名前は?」
「ご主人様のお好きなように」
「えっと、ミクル・アリス・スズネ・カノン・リンだな」
それぞれを指さして名付けます。
正直、よく知らんけど、それっぽいだろう。
「「「ありがとうございます♪」」」
そのままイワンの執務室へ行き、冷蔵室用に割り当てられた部屋に向かう。
「リュウジ、その子たちは?」
「ランの作ったメイドゴーレムだ」
「ゴーレムってのは、岩でできたモンスターじゃないのか」
「ランがいうには、魔力で動く人形全般らしい」
「いや、人間にしか見えないだろう。ちょっと触ってみていいか」
「好きにしろ」
「んーっ、体温もあるのかよ。しかも柔らかいし…、美少女だよな。
あ~あっ、おれもこんな側室が欲しいよ」
「側室じゃねえよ。それにめったな事を口走んじゃねえよ」
「なんで?」
Pululu
「マスター、夜のお相手も可能なメイド型ゴーレムが働き口を探してるの。
今送るからアプリの起動をしてほしいの」
ああ…
「イワン、悪いことは言わないから断れ」
「なにを?」
「ご主人様、よろしければワタクシを…」
「うわぁ!」
「お雇いいただけませんでしょうか」
「なっ…」
「それを受けたら、嫁を貰えなくなるぞ」
「馬鹿なことをいうな。それくらいの分別はつくに決まってる!
ところで、君、名前は?」
「ご主人様のお心のままに」
「リュウジ、その二部屋だ。あとは任せたぞ」
「はぁ、知らねえぞどうなっても。
ミクル、その部屋だそうだ。手前が冷蔵室で、奥が冷凍室な。よろしくたのむ」
「かしこまりましたご主人様」
ランが職人というだけあって、その後の手際の良さに脱帽した。
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