第13話、ランの手に古代の魔法大全が渡ってしまった
「サッ、サワタリ殿とは知らず、ご無礼いたしました」
「そういうの要らないから、さっきの質問に答えてよ」
「はっ、はい。
こちらの魔導士ジムザが古い文献より召喚術を復活いたしました」
「ジムザさんか…
白龍さんの仇だったよね。
他に術を使える人は?」
「残念ながら、
「記録には残していないの?」
「複雑な呪文ゆえに書き残すこともできません」
「ふうん。
その古い文献ってのを見せてもらえるかな?」
「かまいませぬが、古代文字を理解していないと…」
「ああ、優秀なスタッフがいるから大丈夫だと思うよ」
すでにスマホでTV会議をつなげてある。
ジムザの執務室へ移動し、書棚を確認する。
「これらの文献から、少しづつ手掛かりを集め完成させた呪文でございます」
棚には古そうな本が50冊ほど詰め込まれていた。
「ジムザ…これは…禁書庫の…」
「ええ、王様から閲覧許可はいただいております」
「ジムザ! 持ち出しを許可した覚えはないぞ!」
「ですが、読める者がほかにおりませんし、それこそ昼夜を問わず読み解いた次第です。
事後になりますが、ご容認を…」
『マスター、一番下の左から3冊目。薄いやつを見せてください』
「うぉっ、板がしゃべったぞ!」
「ふん、魔法による遠隔通話でしょ。 驚くほどの事はありませんよ。
それに、薄いだけで読みやすいとは思わないことです。
私ですら、ごく一部の単語を理解できただけで…」
『魔法大全、…のインデックスですね。
文字は、古代エクリア語に似ていますから、だいたいイメージは掴めます。
魔法陣に使われる記号を盛り込んであるため、普通に読もうとしても無理でしょうね。
ふむ、マスター一式送ってくださいな』
「王よ、かまわぬな?」
「はい!…いやしかし…えっ、消えた…」
スマホのアプリで書庫へ収納しただけだ。
はい という肯定の時点で送ったから問題ない。
「インデックス…魔法陣の記号…そんな…」
ジムザさんは、簡単に読み解かれた事で混乱しているようだ。
「ねえ、ジムザさん。
書棚の後ろから三冊ばかり出てきたけど、これって何?」
「いや…その…、紛失したと思っていましたが、そんなところに…」
「ラン、資料追加だよ。
ところで、さっきの古代ナントカ語って知識なんだが、それってサワタリの知識…じゃないよな」
『…』
「お願いだよ…ラン、頭ン中 勝手に覗くのはやめようよ」
『…努力します…』
「努力かい!」
『ところでマスター、他にも同じ
危ない部分もありますので、全部回収してください』
「危ないって、どの程度?」
『対策しておかないと、そちらだけでなく全世界が滅ぶくらいの脅威です』
「…滅ぶ…この世界が…」
「聞いたとおりです。
国王、案内してください」
「国王陛下、お待ちください!
それほど貴重な文献を簡単に手放す訳にはいきません」
「うむ、それもそうか…」
「あー、宰相さん、あんた勘違いしてるよ。
四龍を殺し、管理者ナオを拘束、辱めた時点であんたたちは終わってるんだぜ。
今選択できるのは、交渉ではなくてどれだけ貢献できるかってこと」
「サワタリ殿、その男はこれ以上使い道がないであろうよ。
邪魔されるよりは、始末したほうが良いと思うが…」
「ああ、そうだね。 ナオに任せるよ」
「ふむ、では黒龍の石化ブレスを軽くかけて、じんわりと石化してもらおうかな。
おっと、煩いのは嫌だから、音は封じておきましょう」
黒龍が軽く息を吹きかけると、宰相は足元から石化していった。
「ああ、あれは苦しそうだ ねっ、国王さん」
そのあとは抵抗もなく禁書庫へ案内され、蔵書を回収できた。
『あとは、実際に使われた魔法陣ですね』
「ジムザさん、どこ?」
「城の地下になります」
この時、ジムザが国王に目配せをした。
「ボス、あたしが転送されたのは、地下じゃなかったぞ。
倒れた時、空が見えた」
「はあ…、国王さん、魔法陣はどこかな?」
「はい。魔法陣は城の最上階になりますです」
王の案内で城の最上階へ移動する。
ジムザさんは余計なことをしないよう、白龍の腹パンをくらって悶絶し片足を持って引きずられていく。
『この魔法陣は、人を目的の場所に転移させるものですね。
ちょっと試してみましょう。
暴竜ちゃん、その中心に立ってみて』
シオンが魔法陣の上に立ち、ランが呪文のようなものを唱えるとシオンは消えた。
『うおっ! どこだここは…、ん、お前地竜かよ』
『マスター、こんな感じです。
世界間の行き来に使われていた記述も見られます』
「それって、管理者も移動できるの?」
『ゲートは対地球世界だけですから、それ以外の移動はこの魔法陣ですね。
マスター、後でアプリにしますから、その魔法陣は破壊してください』
「了解だよ」
「あとは、この者共の始末ですわね」
「ナオちゃん、ジムザったら階段で頭打ったみたいで…息してない…」
「はあ、なんだか拍子抜けしてしまいましたね。
私の方はサワタリ殿にお任せいたします」
「私たちも、弱い者いじめしているような…
なのでサワタリ様にお任せです」
「ああ、良かったな王様。許されたみたいだぞ。
できれば、政治に平民の意見を反映できるようにしてくれ」
『マスター、大変なのです。
世界の創造から管理者権限の付与、権限の設定とか魔法大全で分かってしまいました。
それで、マスターにはすべての権限を付与しましたから、やりたい事があれば指示してください…なのです』
「要らねえよ」
『そうはいきません。
マスターに権限がないと、私が使うわけにはいかないじゃないですか』
「あー、好きにしろ」
『はい、好きにします。
転送のアプリをセットしておきましたから、いつでも帰ってこられますよ』
「あっ、マオがどんなふうにやっているのか見たいので、私たちも連れて行ってくださいな」
こうして、ナオの世界にもダンジョンと温泉が普及していった。
俺のしらないうちに、アプリはどんどん増えていく。
掟破りの巨乳エルフ創造 とか、いつ使うんだよ。
色白スリムドワーフ娘ってどんなアプリなんだ。
熟マーメイドってなんだよ。
大人になった雪ん子…ロリッ娘雪女って…ハアハアッ…
あいつ、俺の頭ン中みて作ってんな。
【おまけ:ランの天地創造】
規模:太陽系相当の創成期
やはり原初の海で生物が誕生するのは天文学的確率みたいですね。
では、こちらの土をパラっと…ダメ…ダメ…ダメですか。
こうなったら、秘儀『お弁当の食べ残し放置!』
おお! 生物らしきものが…あっ、全滅した
奥義『お弁当全投入!』
おお! 繁殖…分裂かな、何でもいいや。
ウニョウニョと、なんか地球型の生物と違う気がするけど、まあ許容範囲でしょ。
動物?植物?ミミズ?
大気も安定してきたし、コケみたいなのも出てきたけど…海も陸もウニョウニョ…
まあ、土地が肥えているみたいだし、そのうちに生物相も変わる…変わらないよぉ
イソギンチャクみたいな集団行動ウニョウニョと、ミミズみたいな単独行動ウニョウニョ。
しかたない。環境変化で隕石投入…大気が塵で覆われて氷河期突入!
あれっ?地下に潜って、耐えてる…
こうなったら、モンスター集団投入!
あっ、なんか溶解液みたいのだした。
モンスター溶けちゃったよ…
次!ドラゴン軍団!
ああ、土ん中に引きずり込まれて…
アプリの試験運用に、道具を使う世界を作りたかったラン。
そのうちに、ウニョウニョに飽きて放置された世界。
やがて…
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