第6話、マオ
「それ、走行じゃなくって飛行だから!」
『ええ。羽さえあれば飛んでみせますとも!
そこは今後にご期待ください。
・・・というか、素材の追加をお願いします』
「えっ、マジですか・・・」
『強度は必要ありません。
膜のようなもので結構ですから』
「わかった。
ところで、4人乗っても大丈夫か?」
問題ないとのことだった。
狭ければ、荷台にベンチでも設置して座れば、魔力で固定できるって・・・自転車って設定はどうなった。
王様たちを乗せてデモ走行?したが、クレクレ君と化したのは容易に想像できるだろう。
だが、こんなものをやる訳がない。指示すれば自動走行も可能なのだ。
リズにとって、実家まで片道5分という環境が整った。
一度城に戻り、王妃様とお婆ちゃんに乗ってもらう。
運転はリズだ。
当然、男二人が運転させろと騒いだが無視した。
リズはスピードに耐性があるようだ。ランドのサポートがなかったらどうなっていた事か・・・
リズは城に残ることになり、俺はランドでダンジョンへ戻った。
カベオたちもお役御免だ。エリクサーのことを話すと飛んで帰っていった。
そのあと、ランドと今後のことについて話していると、突然ランドが叫んだ。
『何か来ます!強力な・・・』
言い終わる前にランドは跳ね飛ばされ、俺は黒い獣に地面に押し倒された・・・
その牙が顔に近づき・・・ベロンベロンと顔を嘗め回された。
「や・・・やめろ・・・」
「バウ?」
ん、止まった・・・
「苦しいからどいてくれ・・・」
「くぅーん・・・」寂しそうに一泣きして俺の上からどいてくれた。
人の言葉がわかるのかよ・・・
黒犬は伏せをして尻尾をブンブンと振っている。
こいつは褒めて欲しい仕草だな・・・
「よしよし、お前は利口だな。
毛もモフモフじゃないか・・・」
褒めながら首筋に沿って撫でていく。と、「オルトロス~」と呼ぶ声がした。
黒犬:オルトロスは「わふん」と一泣きしたが動く気配はない。
少しして、微かな地響きと共に、もう一頭灰色の狼が現れた。
「どうしたオルトロス?」
声の主は灰色狼の背から降りてきた女性だ。
10代後半といったところか。キトンとかいう彫刻のニケ像なんかが纏っている衣装を着ている。
「珍しいな、オルトロスが人に懐いておるわ・・・
そうか、お主サワタリの血を引く者だな」
「サワタリを知っているのか?」
「ああ、私が呼んだんだからな」
「別に招待された覚えはないが・・・」
「そうか、まだ理(コトワリ)は降りていないのだな」
「ことわり?」
「サワタリの理だ。
サワタリ一族の、記憶が蓄積されたものらしい。
まあ、私の方はそこまで急がないから、理を得てからでもよいぞ」
「呼んだって事は、何か用事があるんだな」
「ああ、お主の蓄積した魔力を貰い受けるだけだ。
簡単な用事だろ」
「どうやるんだ?
内臓をよこせとかは無しで頼む。
それとな、俺の愛車がそこのオルトラスとかいう犬に壊されたんだ。
飼い主として何とかしてくれ」
視線の先には、半壊したランドがある。
「ふむ・・・復元となるとそれなりの魔力量が必要だが、どうするかね。
魔力の受け渡しは精液で行う。せっくすでも良いが、神経を刺激すれば簡単に採取できるから好きな方法を選べ。
ふぇらでも良いぞ。
3日間射精していない精子が必要だが、どうかな?」
「わりい・・・2日前に出した・・・」
「それでは、地竜の復元も明日まで待ってもらう事になるな」
「地竜?」
「なんだ、気づいていないのか。
あのガラクタの本質は地竜だぞ。
ふむ、ガラクタの基盤に地竜の魔核が融合したのか。
まあ、レアなケースではあるな・・・
そうか!地竜にオルトロス。お主、名はリュウだな!」
「リュウジだが、なぜ分かった?」
「そうだった、サワタリは名前の尻に司を付けるんだったな。
サワタリ一族の長子につけられる名前は、それを従えるらしいぞ。
名前に効果が追随するのか、効果を確認して名付けるのかは知らんがな。
前回来たトラジは、大型ネコ族を従えておった」
「ライオンとかトラかよ・・・」
「それならば私も可愛いと思うが・・・例えばナイトキャット。
陰に潜む闇属性の魔物だ。
光属性の特殊な武器でしか攻撃できん・・・厄介者だった。
結局、トラジにしか懐かなかったな」
「それでか・・・爺さんの家には、見たことのない犬や猫がいっぱいいたぞ。
で、地竜ってのは?」
「ふむ、この世界には五大竜と呼ばれる不滅の竜がいる。
地竜・雷竜・火竜・水竜・暴竜だ。
こいつらは破壊不能の魔核を持って居る。
そのため、討伐されても数十年で魔核から復活してくるのだよ。
こいつら不滅の竜は、その姿にこだわりがない。
復活の都度、環境や状況に応じた姿をとるために、人間どもは発見が遅れ下手に手出しして被害を出している。
今回は、お前さんを慕ってそこのガラクタと融合した。
金属質の体と補助の演算装置、異世界の情報。これをものにした地竜がどんな最終形態になるやら・・・」
「じゃあ、オルトロスも・・・」
「オルトロスは雷竜と融合している。
魔犬と雷竜の複合形態がどんなのになるか楽しみにしていたんだがのう・・・
まあ、サワタリの使い魔って役割が増えた事で、だいたい予測できてしまうな・・・」
「オルトロスって頭が二つじゃないんだな」
「・・・当然であろう。そんな生き物がいたら、進化の過程で絶滅する」
「なあ、あんたがこの出入り口を開けたんなら、ずっと開きっぱなしにできるのか?
それと、ここで店を開くことってできるか?
できれば住居付きで、地上へ直接出入りできるようにしたいんだが」
「魔力さえあれば可能だよ」
「何回分?」
「ばかだな、一回分で50年世界を維持できるのだぞ」
「分かった。それで頼む・・・
名前を聞いてなかったな。
俺は、サワタリリュウジ、25歳だ」
「この世界、ベータの管理者マオだ。
マオーじゃないから注意するように」
考えてみたらランドが直らないとリズを迎えにいくこともできない。
今日のところは部屋に戻って、ランドに頼まれていたもんでも準備するかね。
ランドの希望は、金属系素材・演算処理装置・メモリー・使わなくなったスマホ。
素材系はとりあえず使っていないものを見繕い、古いノートPCや機種変更前のスマホなんかを用意した。
そういえば・・・PCのパーツをしまってある段ボールを開けてみたら、スペックを上げるために交換したCPUやSSDやメモリーがゴロゴロ出てきた。
規格の合うマザボがあれば、それなりのハイスペックマシンも組めそうな品揃えだ。
無線LANやPLCなんかのネットワーク系パーツもそろっている。
まとめてランドにプレゼントしてやろう・・・だが、何に使うのやら・・・
翌日は、ホームセンターの開店を待って、店用の照明器具や電気配線用の部材を買い込んだ。
湯沸かしケトル2個、電子レンジ1台、IH卓上コンロ1台。
これだけあれば、単身赴任者の生活にも不自由はない。
部屋に戻り、配電盤の予備回路から2回路40アンペア分の配線をしていく。
設置先は押入れの天井裏だ・・・
くふふっ、魔法なんか使えなくとも、電子レンジの威力に驚くがいい。
食材の加熱対決、宮廷魔法使い vs 電子レンジ!
照明対決 vs LED照明
うん、負けてないぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます