第5話、電動アシスト機能付き魔動自転車
「アメイヤ、側室決定ね!」
「そうね。騎士の誓いがある以上、ほかに嫁ぐ訳にはいかないわね。
お母さんも賛成よ」
「でしょ」
「いやいや、お義父さんの顔が鬼のようになっているから、その話は次の機会にして・・・
で、私の世界では、神前結婚のほかに人前結婚という形式があります。
できましたら、この時をもって王様の前で誓い正式に妻としたいのですが如何でございましょう。
もちろん、セレモニー的なものが必要であれば対応させていただきます」
「よかろう。
俺もいろいろ面倒は嫌いだ」
こうして、俺たちは王様の前で生涯を共にすると誓い合った。
そのまま、王様の音頭で乾杯をしたのだが、エリクサーの効果は凄かった。
飲み込んだ数瞬後に体が光りだし、現在の疾患どころか古傷や治療痕も消えうせた。
骨の歪みは矯正され、化粧も汚れとして落ちた。
スッピンの肌は瑞々しく、白髪は元々の色を取り戻す。
口を開けばせっかくの風味が逃げてしまう。この素晴らしさを表現する言葉が見つからない。
全員が絶句するしかなかった。
十数分後、余韻が覚めてきたころ、沈黙を守っていた王子が口を開いた。
「もう義理の弟なんだから呼び捨てでいいよな。
俺のこともイワンと呼んでくれ。
リュウジ、リザ、おめでとう。
そして、ありがとう。
二人が出会わなかったら、俺がこの感動を味わうことはなかった」
「まったく、とんでもない酒があったものだ・・・
その親友殿にも感謝だな・・・」
「俺も初めて飲みましたが、凄い酒ですね。
そうだ、開栓後1時間でエリクサーの効果が消えるみたいです。
アメイヤ、すぐに持って行ってください。
冷たいほうがいいので、このバッグに入れて・・・」
アメイヤはバッグを大切そうに抱えて退席した。
「ねえ、リュウジさん」
「はい、何でしょうお義母さん」
「うーん、新鮮だわね。
イワンなんて、母上って・・・仰々しいったらありゃしない・・・」
「は、母上・・・」
「このお酒を、月に1本定期的に買い入れたいと思うんだけど・・・
元値は言わないでね。
購入価格は金貨20枚よ。
正式決定は2日後の国政会議に諮ってからだけど、まあ問題なく通ると思うわ」
「奥さん・・・毎月金貨20枚なんて、問題なく通るわけないでしょ・・・」
「母上、事業として・・・国として販売するのですね」
「内務局長が聡明で良かったわ。
エリクサーの予約販売よ。
1本を20人分に分けるの。
販売価格は・・・
美容目的 4口で、金貨5枚
治療目的
貴族分 4口で、金貨3枚
商人分 4口で、金貨2枚
一般分 4口で、金貨1枚
残りは厚生局が銀貨1枚で使うわ。
これは、孤児や貧民層、災害対応よ。
事業として、十分に採算がとれるわ」
「お母さま、例えばアメイヤなら二人の治療で金貨2枚ですね。
間違いなく出しますわ。
でも、美容枠の金貨5枚なんて・・・」
「リズ・・・問題ないわ。
ちょっとした美容液でも、金貨2枚くらいするのよ。
お義母さまに宣伝塔になっていただくわ。
10歳若返って金貨5枚よ。希望者殺到間違いなしよ。
それに、治療枠がいっぱいで、一か月待つくらいなら美容枠でって希望する者も出るはずよ」
「10歳若返ってるの・・・私・・・
それに、さっきから胸がきつくって・・・ちょっと失礼して着替えてくるわ」
「言われてみれば、胸がきついわね。
私も着替えてくるわね」
二人は退出していった。
「それでリュウジ、仕事はどうするんだ?
必要なら俺の内務局にポストを用意するぞ。
リュウジの世界を参考に、アドバイスしてもらえると俺も助かる」
「お気持ちはうれしいです。
俺の知識が必要なら、いつでも協力させてもらいます。
ただ、今は俺の世界の品がどんな影響をもたらすのか、雑貨屋みたいな事をやりながらリサーチしようかなと思っています」
「おお、あの傷薬や回復薬だな。
確かに、あれが出回ればダンジョンでの死傷者はぐっと減りそうだな」
「ええ、それとあそこには俺の世界との通路がありますから、あそこを拡張して店でも作ってみようかなと・・・」
「そうすると生活の拠点はリュウジの世界だな。
リザはそれでいいのか?」
「向こうの世界、とても魅力的で過ごしやすいわ。
それに、ここへ来るのもそんなに時間はかからないし、リュウジ様と二人で始めるお店って楽しそう」
「だが、移動手段はあるのか?」
「今日来た時も、自分の乗り物で来ましたから、問題ありませんよ」
「乗り物?」
「ええ、ちょっとした魔道具みたいなもんです」
「魔道具だと!見せてくれぬか」
事付けを残して城の入り口まで移動すると・・・マイチャリが変化していた。
タグを確認すると
-電動アシスト機能付き魔動自転車:ランド・ドラゴン-
・乗車定員:3人
・最高速度:50km/h
・連続航続距離;100km
・魔力/電力の相互変換機能有
荷台まで一体化した三輪トライク・・・いやバギーみたいになっていた。
カウルみたいな外装に覆われ、ファイヤーパターンが刻まれている。
『お帰りなさいませご主人様♪』
「なんでこうなった?」
『電気を魔力に変換して、CPUが進化しました。
こちらの世界に対応した形状です。
ランドとお呼びください。
なお、発電機能も付加しましたので、追加充電は月1回程度で充分です』
「ペダルは?」
『ランドによる自走ですから、ご主人様は操作だけです』
「それ・・・自転車じゃねーよ・・・
日本で走れないじゃんよ・・・」
『私も、元の形状に戻るつもりはございません。
とりあえずご乗車ください』
厨二的な外観に国王と王子の目が輝いている・・・
「あまりに変わってしまったので、最初は一人で乗ってみます」
二人があからさまにガッカリな顔をしたが、これにいきなり他人を乗せられねえよ・・・
「どうやって起動するんだ?」
『ハンドルに手を置いていただければ魔力を感知して起動します』
言われたとおりにすると、キュルルルッ!フォン!フォン!!と音がする。
「内燃機関ねーよ!しかもホークⅡの排気音じゃねえか!」
『音だけでございす。こうしたマシンは雰囲気が大切ですから。
あとはスロットル操作とブレーキ操作のみでございす』
「ブレーキは左後ろの右前でいいのか?ギアチェンジは?」
『ブレーキはその通りでございます。ギアシフトは自動遠心クラッチを採用しております』
「自転車にそんな機能ねーよ!」
『嘘でございます・・・
速度からわたくしが最適なギアを選択いたします』
ブロロロロッ・・・スロットル操作にあわせて排気音が変わっていく・・・無駄に芸が細かい・・・
『隣でホークⅡ先輩の排気音を聞いており、あこがれておりました。
いつかこの音を奏でたいと・・・今日、夢がかないました・・・』
「まあ、その気持ちはわかる・・・」
ブロロロロッ、排気音は聞こえるし景色が流れていくから速度もそれなりなんだと認識はできる。
だが、振動が伝わってこない。
「随分静かなんだな、振動もないし・・・」
『はい!
激しい特訓の末、重力制御を覚えました。
現在は地表から5cm浮いて時速40kmで走行しています』
「それ、走行じゃなくって飛行だから!
排気音も意味ないじゃん・・・」
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