第4話、幻のエリクサー

ダンジョンに吸収されたものが宝箱から出現・・・


もし、宝箱からカップ麺のフタとか出てきたら・・・イヤだよな。


だけど、カップ麺のフタ:魔法防御(大)だったら?

騎士たちは競うように鎧に張り付ける。


赤いケツネのカベオ

緑のサヌキのムネオ

黒い牛カレーのケサオ


そんな二つ名が流行して・・・w


未食のカップ麺とかも宝箱から出てきたり・・・


「やった!超レアなミルクケチャップヌードルだ!」とか・・・イヤだよな。


「いや、保存が効いてお湯だけでこれだけの味なら、当たりだと思うけど・・・」


カベオがポソリと言った。

どうやら妄想が声に出ていたらしい。

容器が脆くて、持ち歩けないとも・・・


「ああ。中身だけのもあるから、今度喰わせてやろう」


昼食が終わった頃アメイヤがやってきた。



「アメイヤ・・・その・・・」


恥ずかしそうに口にする。


「アメイヤ。私、リュウジ様に嫁ぎます」


「まあ、その・・・そうなった・・・」


「姫様、夢が叶ったんですね」


そう言いながらも、俺に対してはジト目だ。


「だから、アメイヤも側室よ」


なんだそれ!


「お断りいたします!」 即答かよ・・・


「あなたは私の騎士。

生涯を私に託したのよ・・・

まあ、そこはゆっくりと解決していきましょう」


カベオ達には引き続きここの警備をしてもらい、俺たちは城に向かった。


リアカーと荷物は馬車に積んでもらい、俺とリズ二人を乗せた愛車は快調に馬車を追う。

休憩を入れても2時間で城に到着した。


城に到着すると、そのまま貴賓室というのに通された。

そこには王様と思しき人とその一族らしき人達。そして、疲れたような顔をしたおじさんたちが10人ほどいた。

・・・なんとなく、この後の展開が予想できた。


リズは「お母さま!」と叫んで王様の横にいた女性に抱き着いた。

両手を広げて固まっている王様からは視線を逸らすのがエチケットだろう。


ゲホンと咳払いの後で、王様が切り出した。


「勇者様、此度は娘エリザベスがお手数をお掛けいたしました。

私はこのチロル国を統治させていただく、トキオ・チロリアンにございます」


うん、腰の低い王様だね・・・

まあ、展開は見えてるから先手を・・・と。


「いえ、当然のことをしたまでです。

リュウジ・サワタリと申します。

よろしくお願いいたします。お義父さん」


「お・・・おと・・・」


みんなが、お義父さんの部分に反応する中、お婆さんだけは”サワタリ?”と呟いた。


「コホン・・・

その件は、後程親族で話したいと思う。

で、だ・・・国の要職者が集まっている理由なんだが・・・

重要な役職ゆえに・・・激務でな。揃いもそろって、皆夫婦生活がおざなりなんだと申して居る・・・」


「昨日、アメイヤに持たせたサンプルは・・・王様が?」


「その通りじゃ!

おかげで、妃の機嫌が良いこと・・・」


「あなた!余計なことを言わないでくださいまし!」


「お義父さん、お話は分かりました。

貴重な品ですが、ちょうど入手できた10箱を持参しております。

これをお義父様にお渡しいたしますので、ご自由にお使いください」


「「「おおっ!」」」


「貴重!・・・10箱?

・・・わしの分が・・・」


「家臣あっての国政ですよね・・・

ここは、家臣の皆様を優先されては如何でしょうか」


リズに目配せする。


「そうですわ、お父様。

私がリュウジ様の元に嫁げば、また入手する機会もありましょう。

ここはドーンと皆さんに振舞われて、太っ腹なとことをお見せくださいませ・・・」


うん、回転の速い娘は好きだよ。


「「「おおっ、エリザベス様が異世界に!」」」


「ええ、昨夜から今日にかけて治療のためリュウジ様にお連れいただきましたの。

このお洋服もリュウジ様に買っていただきましたのよ。

スカート丈が短いのは生活習慣の違いですが、とても軽くて動きやすいんですよ」


「ぐぬっ・・・」


俺はリアカーからカロリーメイドを取り出し、王様に手渡した。

家臣たちは王からカロリーメイドを受け取ると、俺の前にやってきた。


「若輩者ですので、色々とご迷惑をおかけすると思います。

リュウジ・サワタリです。

ご指導いただきますようお願いいたします」


深々と頭を下げる。


「こちらこそ、ご配慮いただき感謝しております。

何かありましたら、遠慮なく声をかけてください」


そういって、一人ずつ握手をして退席していった。


全員が退席すると、最初に口を開いたのはお祖母ちゃんだった。


「サワタリ様、もしやトラジ・サワタリ様とは・・・」


「トラジ・・・ああ、曽爺ちゃんですね。

20年ほど前に他界いたしました」


「やはり、勇者サワタリ様の血縁者でしたか・・・

そうですね・・・あれから50年ですもの・・・

私もすっかりお婆ちゃんですものね・・・」


「まさかと思ったけど、50年前の勇者って・・・曽爺ちゃんだったんですね。

なんか・・・うちの家系って呪われているんですかね・・・

親父も行方不明だし・・・」


「呪われているのかは分かりませんが、血筋なのかもしれませんね」


「その話はあとで良いであろう。

本題に入ろう・・・貴様!うちの娘に何をした!」


「あっ、そうでした。

お義父さん、エリザベスさんを妻に下さい」


「「ハイ」」「「はい?」」


肯定系のハイは女性、疑問形のはい?は男性のものだった。


「あのぅ・・・奥さん・・・・ちょっといいですか?」


「なに?」


「今の申し出は、お義父さん・・・つまり私に対してであって、回答権は私にあるのでは?」


「何をおっしゃいます。

お義父さんは枕詞であって、当家に対する申し出であるのは明らかです。


俺は、王として国に対する責任がある。家のことは君と母にすべて任せようと思う


プロポーズの言葉と一緒に書かれていた言葉ですわ。

回答権は私とお義母さまにございます」


「いやいや、一般的な展開として、


-娘に相応しい男かどうか見極めてやる-


ここから直接対決で俺が勝利して、ガハハッ!10万年早いわ!と引導を渡す流れでは・・・」


「好きなだけ妄想していてください。


リュウジ・サワタリ様、ふつつかな娘ですが、謹んで嫁入りさせていただきます。

つきましては、約束事をより確かなものとするため、勇者サワタリ様・・・紛らわしいですわね、失礼してトラジ様リュウジ様とお呼びしてよろしいでしょうか」」


「お義母さん・・・となる方が何をおっしゃいますか。

遠慮なくリュウジと呼び捨ててください」


「では、遠慮なく・・・トラジ様より伝わった”カタメノサカズキ”の儀にお付き合いいただけますでしょうか」


「それはリズ・・・エリザベスさんからも聞き及んでいます。

実は昨夜、親友よりこのような場面で使ってほしいと、とびきりの酒が届きました。

相手の大切な娘さんを貰い受けるのだから、相応しい酒を手土産に持っていけと・・・」


俺はケーラーバッグで冷やしたドン・ペリニヨンのロゼを2本取り出し開栓した。

タグによる効能は”エリクサー;全回復・厄除け”となっている。


シャンパングラスは10脚持参した。

ボトルから注がれるピンクの液体に泡が躍る。


グラスを手渡すと、皆光にかざして「こんな綺麗なお酒があるなんて」と驚いている。


「俺の世界には”振る舞い酒”といって、同席した人にも酒を飲ませる習わしがあるんだ。

アメイヤたちも俺とリズのために祝ってくれ。

効能はエリクサーとあるから、体にもいいと思うよ」


「「「エリクサーですと!」」」


「・・・ああっ、ついにエリクサーが・・・

申し訳ないが、私の分は持ち帰らせてもらう。

対価は・・・姫に捧げたこの身ではあるが、好きにしてくれ・・・」


「アメイヤ!これでお母さんと妹さんが助かるのね!

私の分も持って行って!」


「まだ2杯分くらいは残っているからボトルで持ち帰ればいいさ。

それより、この場は俺たちにつきあってもらうぞ」


「アメイヤ、側室決定ね!」


リズが声高に宣言した。

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