演習が終わってテントで晩飯を食べ終えた俺は1人、砂浜に来ていた


 不思議なことに折れたと思っていたはずの腕や体の骨は痛みもなく、足も普通に歩けている


 「あれは夢だったのか・・・・・?」

 俺は1人つぶやき辺りを見回す


 砂浜や森の荒れ具合がそれを静かに否定する


 

 俺と戦っていた黒田刑事は何故か、この島から500m近くの地点に吹き飛ばされたらしいが田中刑事が言うには


 「ボディコンの生命活動監視装置が反応しているから心配なし」

 とのことらしい


 





 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 黒田刑事が一応無事であることを確認した後、演習の終了と明後日の重要テロ組織への奇襲作戦を俺とエンは田中刑事から告げられた


 作戦内容としては田中刑事たち率いる俺たち士官生組は、帝國政府軍と警察軍の精鋭からなる特殊作戦チームの後方支援として突撃し、標的の逮捕もしくは殺害の援護となっている


 

「・・・・・・」



 (ザバババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババッ!!)


 「ん・・・?」


 音の方を向くと、ものすごい音と水しぶきをあげながら黒田刑事がバタ足で近づいてくるのが見えた




 「黒田刑事!?」 

 

 








 「はぁ・・はぁ・・・・」

 陸に上がってきた黒田刑事は息を切らしてその場にへたり込む

 「大丈夫ですか!?黒田刑事?!」


 「あぁ・・・大丈夫だ・・クソガキの方は怪我は大丈夫なのか?」

 「はい、特に大きな怪我も無くこの通り・・・」

 そう言って俺は腕を回したり跳び跳ねたりする


 「そうか・・・・・」

 黒田刑事は俺をなめ回すように見た後、もう一度「そうか・・・」と呟き考え込む




 「・・・そういえばお前、何か悩んでるんじゃないか?」

 「え・・・?」

 どうしてそう思ったんだ?


 「お前、今どうしてそう思ったんだ?って顔したな」

 「・・・・・!」

 黒田刑事に心を読まれ、俺は固まる


 

 「俺も刑事の端くれだからな・・・尋問の1つや2つこなしてきてる・・・そんな俺がガキの考えている事くらい察っせないと刑事の名が廃るからな・・・それに・・・・・」

 黒田刑事は俺の目を真っ直ぐ見つめ



 「俺はお前達の副担任だ、悩みを相談される義理はあると思うぞ?」

 「・・・!」


 そう言うと、黒田刑事は懐から沢山の銃火器を取り出しながら話を続ける

 「で?結局、何を悩んでるんだ?俺で良ければ聞くぜ?」




 「・・・・・怖いんです・・・これから先、俺は・・俺達は色んな任務に駆り出されて色んな人の命を奪う事になる・・・そう思うと怖くて・・・」


 田中刑事から奇襲作戦の内容を聞かされた時、初めて俺は奪う側の立場になった事を自覚した


 黒田刑事達と戦う時は奪われる立場でしかなかった俺がこの島を出た瞬間に、奪う立場になる・・・・・


 「そうか・・・人の命を奪うのが怖いか・・・・・そうか・・・神谷・・」

 黒田刑事はおもむろに手を上げると、俺の頭の上にポンッと置き


 「それ普通なんだよ・・・」

 そう言う黒田刑事の目はどこか悲しそうな目をしている


 「これからお前達が進む道は、俺達と同じ修羅の道だ・・・嫌でも人の命を奪う事になる・・・その中で絶対に、今の気持ちを忘れないでくれ・・・絶対に・・・・・・・」


 黒田刑事が話す姿は俺だけじゃなく、自分にも言い聞かしてるように感じた



 「分かりました、黒田刑事の言う通り・・・この思いを忘れないようにします」

 「あぁ・・そうしてくれ・・・」

 そういうと黒田刑事はしばらく考えた後


 「良ければこれを受け取ってくれないか?」

 そう言って黒田刑事が取り出したのはとても小さなミニガンだった


 「何ですか?これ?」


 「Model Nr. C1STっていうスイスのメーカーが出してる世界一小さい銃だ・・・まぁ、俺が魔改造して小石を射出出来るようにして、殺傷能力を上げたやつだから完璧本物では無いんだけどな」


 「何で・・俺に?」

 「ただの気まぐれだよ」

 黒田刑事は子供のような無邪気な笑顔で言う



 黒田刑事は俺にミニガンの使い方についてレクチャーした後

 「そろそろ寝たらどうだ?どうせ明日も早いんだろ?」

 黒田刑事に促され俺はテントに向かうことにした


 「黒田刑事はまだ寝ないんですか?」

 「あぁ、俺は使える武器と使えない武器を仕分けなきゃいけないから、後で向かうよ」

 「分かりました、黒田刑事また明日・・・」

 「あぁ・・・」

 



 

 俺に別れを告げる神谷の後ろ姿を見送った後、俺は武器の仕分けを再開する



 あの時、確かに神谷は骨を折ってたはずだ・・・・それがなぜ・・・?

 


 やっぱり、あいつが言ってることが正しいのか・・・?

 「嫌でも・・・あいつはどこからどう見ても・・・・・」


 今日の演習で見せたあいつの動きは人のそれじゃなかった・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 「やっぱりあいつは・・・・・・・・・・・・・・」 

 


 

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