2人について
「それでは2人について私が知っていることを言います・・・」
そう言うとエンはどこからかメガネと白衣を取り出し身に着けると、これまたどこからかホワイトボードを持って来て(本当にどっから持って来たんだ・・・!)何やら書き始める
「まず、黒田刑事についてですが――――黒田刑事は常に正面突破、作戦なんて二の次という性格をしています」
エンはホワイトボードに書いた『黒田刑事=単細胞』という言葉を丸で囲む
「なるほど、それなら黒田刑事を足止めしてその間に―――――」
「それは不可能です・・・・」
エンが心一の提案を却下する
「どうしてだ?」
俺がそう聞くと
「田中刑事は正面突破や出たとこ勝負を一番嫌う性格です――――なのに、なぜ田中刑事は黒田刑事とコンビを解消しないのか?」
「確かに・・・どうして田中刑事は黒田刑事とコンビを解消しないんだ?」
エンの問いかけに対し俺はシンプルに聞き返す
「もちろん、仕事上なかなかコンビを解消できないというのもありますが、それ以上に私は黒田刑事の能力に理由があると思っています」
「黒田刑事の能力・・・?」
「はい、黒田刑事は突発的なトラブルへの対応力がずば抜けています―――それは一種の特殊能力と言っていいです」
そう言うとエンはホワイトボードに『黒田刑事は突発的事態への対応力が高い』と書き、丸で囲む
「具体的にどういう事だ?」
心一が手を挙げて聞く
「昔、ある犯罪組織の本拠地での諜報任務に黒田刑事と2人で行った時の話です――――」
そう言うとエンは昔話をし始める
「その時、私達は諜報相手に素性がばれてしまい大勢の武装した人達に囲まれてしまいました」
「その時、黒田刑事は武器は拳銃一丁だけしか持っていませんでした・・・・」
「拳銃一丁でどうやって戦ったんだ・・・?」
俺がそう聞くと
「黒田刑事はその場にあった机や椅子、布を利用して」
「机や椅子は分かるけど布なんかどうやって武器にするんだ?」
俺がそう聞くと
「黒田刑事は濡らした布を敵の首に巻き付けると思いっきり横に引っ張って敵の首をへし折ってました・・・」
「「「・・・・・・・・・・・・・」」」
俺達は衝撃を受ける―――――普段の黒田刑事からは想像がつかない・・・・
「そして何より、敵を殲滅した後の黒田刑事は傷1つついてませんでした・・・」
俺達は黒田刑事のすごさに息を飲む
「そんな黒田刑事からすれば私達を相手にするなんてままごとも同然でしょう」
エンははっきりと言い切る
「じゃ、じゃあ田中刑事は?」
俺は恐る恐る田中刑事の事について聞く
「田中刑事は―――――」
ここで、エンの言葉が途切れる
「田中刑事は私の知る限り、一度も本気を出していません・・・・・・・」
「一度も・・・?」
「はい・・・・今回の訓練、1番の強敵はおそらく田中刑事でしょう・・・・田中刑事の戦闘力は警察軍でトップです―――噂ではあのアメリカ軍が田中刑事の強さに恐れをなして田中刑事個人に友好条約を結んでいるとかいないとか・・・・」
(どこかの範馬 U次郎かよ・・・・)俺はそんなことを思いながらエンの話を聞く
「田中刑事に勝てるのは今の地球上に誰もいません」
「さ・・さすがにそれは言いすぎだろ・・・」
心一が声を震わせながら言うと
「前に国際的テロ組織の本拠地での戦闘に日本の警察軍が協力した事がありました――――」
そう言うとエンはまた昔話を始める
「その時、田中刑事は『1人で対応させてほしい』と国際警察の上層部に言いました――――その時の敵の数は数千人規模、そんな人数に対して田中刑事は1人で立ち向かうと言ったんです――――」
「何で田中刑事はそんな無謀な事を・・・・・?」
俺はシンプルに思ったことをエンに聞く
「私も田中刑事に同じことを聞きました、なぜそんな無謀なことをするんだ―――――と、その問いかけに対し田中刑事は無表情でこう答えました―――」
ここでエンは言葉を切り、体を震わせる
「『仲間を殺すのを避けるため』と・・・そう答えてくれた田中刑事の目はどす黒く光の無い闇の深い目でした・・・・・」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
田中刑事の恐ろしさに俺達は言葉を失う
「以上の理由から私達が田中刑事達に勝つのは100%不可能です」
そう言うとエンは白衣を脱ぎメガネを外し話を終える
俺達は大きく息を吐く―――どうやら息をするのを忘れていたようだ
「俺達はそんな化け物達と今から戦うのか・・・・?」
さっきまで、ワクワクしていた心一が声を震わせながら話す
「いったい、どう戦えばいいのよ・・・」
優に関しては完全に戦意を喪失している
「・・・・なぁ、エン」
「なに?勇兄?」
「今回の訓練、俺達が勝てないのは分かった――――でも、俺達は今から田中刑事達と戦わなければいけない、それは避けられない事だ」
どんなに勝てないと言われても俺達は今から田中刑事達と戦わなければならない事に変わりはない
「何か良い作戦は無いか・・・?」
俺はダメ元でエンに聞く
「1つだけならあるにはあるけど・・・・」
「・・・!!」
エンの予想外の返答に俺は驚く
「本当か⁈」
「どんな作戦なの⁈」
エンの返事に心一と優が食いつく
「えぇ・・・ただこの作戦は試合に負けて勝負に勝つといった感じの作戦で・・・」
「何言ってんのかよく分かんねぇけど、勝てるんだろ?――なら聞かせてくれ!!」
心一がエンの肩を持ち強く揺さぶる
「あー脳が揺れるー」
エンは頭をがっくん、がっくんさせる
「心一、やめろなんか・・・色々やばそうだから・・・」
俺は心一をエンから引きはがす
「エン、俺からも頼む・・・!」
俺はそう言って頭を下げる
「わ、分かったから・・・分かったから頭を上げて勇兄・・・!」
エンは戸惑いながらも俺達の頼みを聞き入れてくれた
「恐らく今回の訓練、田中刑事達は私達が10分も経たずに負けると思っています―――そんな中で私達の取る作戦は・・・・」
「作戦は・・・・・」
俺達はエンの次の言葉を待つ
「超持久戦です」
「「「超持久戦?」」」
「そうです―――12時間、私達は田中刑事達の攻撃を耐える・・・・それが私達の作戦です」
「「「・・・・・・・」」」
俺達の間にしばらくの沈黙が流れる
「ゴメン、エン・・・・ヨクキコエナカッタカラモウイッカイイッテクレナイカ?ナンジカンタエルッテ?」
「ワタシモヨクキコエナカッタワー」
「オレモー」
俺達はまるで大根役者のような棒読みになる
「12時間です」
そんな俺達にエンは冷静に繰り返す
「「「12時間!!!!!?!?」」」
俺達3人の悲鳴に近い叫び声が島に響いた
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