消えない絆


 「ん・・・・・・?」 

 朝早く俺は誰かがテントを出る物音で目を覚ます


 起き上がると心一がいないことに気付いた俺はテントを出ると外はまだ暗かった

 

 

 「これは・・・」

 足元を見ると心一らしき足跡が砂浜に向かって続いている

 「こんな遅い時間に砂浜に何の用があるんだ?」

 気になった俺は砂浜に向かって歩き始める


 「ん?あれは?」

 砂浜に着くと心一が走り込みをしているのに気付き、俺は大声で心一を呼ぶ

 

 何回か呼んでいると心一がこちらに気付き、土煙を挙げながら近づいてくる


 「どうしたんだ、勇?こんな時間に?」

 「それはこっちのセリフだ・・・何でこんな朝早くに走り込みしてるんだ?」

 俺がそう聞くと心一は少し間を空け


 「いや、ただ汗をかきたくなってな・・・・・」  

 嘘だな・・・・


 「何か悩んでるのか?」

 俺がそう聞くと心一は固まり、しばらくして笑いながら


 「ばれたか・・・・」

 心一はどこか恥ずかしそうに話す


 「あぁ、どれだけの付き合いだと思ってるんだ」

 俺がそう答えると心一は笑いながら

 「そうだな・・・」

 そう答える心一を見ながら俺は

 「とりあえず、そこの岩に座って話そう」

 俺は向こうの岩を指差し心一に座るよう促す

  


 「で、何を悩んでるんだ?」 

 岩に腰かけた俺は隣で黙って座っている心一に聞くが


 「・・・・・・・」

 心一は何も答えずただ黙っている


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 しばらくの沈黙が流れ、心一は口を開き話し始める

 

 

 「実は俺・・・双子なんだ・・・・」

 「うん・・・・へぇ?」

 予想外過ぎる言葉に俺は変な声を出す

 「どういう事だ・・・?」


 「前に親父と大喧嘩した時にさ・・・親父が言ったんだ「お前じゃなくてもう一人の方が生きていればもしかしたら・・・」って」

 

 いつも明るい心一が、暗い表情をしている

 「親父はそう言った後、我に返って何とも言えない顔してた・・・・・俺がどういう事か問い詰めたら親父は泣きながら答えてくれたよ・・・・・」

 心一が声を震わせながら続ける

  

 「俺が母さんの腹ん中にいる時、母さんの腹ん中にはもう1人優一っていう男の子がいたんだ・・・

 俺と優一兄さんは母さんの腹ん中で健康に育っていた、俺の父さんと母さんは俺たちが生まれてくるのを楽しみにしていた―――そんなある日、母さんが階段から落ちて思いっきり腹と頭をぶつけて破水しちまってさ・・・

 予定日よりだいぶ早く俺たちを生むことになったんだ―――――――母さんは頭をぶつけて気絶してたから帝王切開で生むことになったんだ・・・・・・

 母子共に危険な状況だったから手術は時間をかけて慎重に行われた―――――」

 そこで心一は言葉を切り一呼吸置いてから続ける

 

 「大手術の末、産まれて来たのは俺だけだった・・・・・

 兄さんは母さんが腹をぶつけた時に頭部を原型をとどめないくらい損傷して即死だったらしい・・・・」

 心一は話を終える

 

 「それとお前の父さんが言った事に何の関係があるんだ?確かにお前の兄さんは残念だったかも知れないけど――――」


 「俺、障害があるんだ―――」

 「えっ・・・・・」

 心一の突然の告白に俺は言葉を失う


 「今まで、黙ってたけど俺、実は産まれる前から脳に障害があってさ掛け算とか感情の制御とか色々な事が出来ないんだ・・・たまに理性が無くなって獣みたいに暴れる事もある・・・」


 「もしかして、晩御飯の時とかのあれもそうか・・・?」

 「あぁ・・・昔から腹が減るとどうにもならなくてな・・・・」

 心一は恥ずかしそうに頭を掻く

 

 「多分、父さんはこんな俺より普通の兄さんに生きていて欲しかったって心の底では思ってたんだと思う・・・こんな不良品なんかより――――」

 

 「心一、こっち向いてくれないか」

 「?・・・なn・・・・・・・」

 俺は心一の顔を力一杯殴る

 俺に殴られた心一が数メートル先に吹っ飛ぶ

 

 「いきなり、何すんだよ!?」

 俺は喚く心一の元に歩き胸ぐらを掴み持ち上げる

 「本当にどうしたんだよ勇!?」


 行きなり俺に持ち上げられ驚く心一に俺は

 「お前は不良品なんかじゃねぇ・・・・」

 「へ・・・・?」


 俺がそう言うと心一は情けない声を出す

 「お前は不良品なんかじゃねぇ!!」

 俺はそう言って心一を胸ぐらを掴んだまま降ろす


 「いいか?」 

 そう言うと俺は心一の顔をグイっと近づけ続ける

 「お前の何も考えず突き進む姿はな!俺に勇気をくれてるんだ!それに何より・・・・」


 ここで俺は目一杯息を吸って叫ぶ

 「お前は俺の一番の親友だ!そんなお前が不良品な訳無い!」


 「分かった!はずいから、もうそれ以上はやめてくれ・・・それと、もう離してくれ・・・!」

 心一は顔を赤くする、俺は顔が唾でびちゃびちゃの心一を開放する


 俺と心一は再び岩に座ると

 「なぁ、何で言ってくれなかったんだ?」

 俺がそう聞くと心一は


 「・・・?何がだ?」

 心一は子犬のように首を傾げる

 「何で、障害があることを言ってくれなかったんだ?」

 「あぁ・・・その事か・・・」

 心一はそう言うと


 「昔、お前と会う前にさ・・・俺が障害持ちだって理由でそれまで仲良くしていた友達が離れていってその子にいじめられた事があったんだ・・・・それから障害の事は隠しておこうと思ったんだ・・・」

 

 「俺が障害が理由で親友をやめるような奴に思うか?」

 俺が心一に睨みを利かせて聞くと

 「思いません・・・・」

 「よろしい・・・・」

 

 そう言ってお互いに笑いあった後


 「俺、決めたよ・・・」

 心一はいきなり立ち上がり口を開く


 「決めたって何を・・・?」

 「俺は胸を張って死んじまった兄さんの分まで生きて、例えどんな結果になっても帝國政府に奪われた物を取り戻す!馬鹿な俺にはこんぐらいの目標で十分だ!」


 「ハハッ、心一らしいや―――――よしっ!」

 俺は立ち上がり心一の肩に手を置き

 「俺は親友としてお前を全力で応援する!だから、取り戻そう俺たちの手で・・・つまらなく楽しいを・・・・」

 「あぁ・・・・!!!」



 この時の俺たちはこの絆は永遠だと思っていた――――――でもこの時の俺たちは知らなかった戦火はどんな絆をも燃やしてしまうものだと














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