結果発表

 『YORISIRO型に転送完了・・・∑↚∶≯勇さんを再起動します』

 






 「勇兄?」

 目を覚ますとエンが心配そうな顔で俺を見ている



 俺は起き上がり辺りを見渡す、どうやら医務テントのベッドで寝かされていたようだ


 「勇兄・・・・体の傷は大丈夫?」

 エンが心配そうに聞いてくる

 「あぁ・・・大丈夫だ、この包帯はエンが巻いてくれたのか?」

 俺の体にはとても丁寧に包帯が巻かれている

 

 「ううん・・・」

 エンは首を横に振ると

 「優さんに聞いた話だけど、黒田刑事が倒れた勇兄をテントまで運んで、田中刑事が1人で処置してくれたらしいよ」

 「そうか・・・」

 あとでお礼を言わなきゃな・・・

 

 

 「そういえば、訓練はあれからどうなった?」

 まぁ、結果は分かりきってるが・・・


 「あぁ・・・訓練については―――――――」

 「それについては私が答える」

 そう声がするとテントの入口から田中刑事が入ってくる、その後ろには黒田刑事、心一、優の姿もあった


 

 

 俺たち4人は医務テントを出て砂浜に並ぶと田中刑事が俺たちの前に立ち話し始める、その横では黒田刑事が眠そうに立つ

 「それでは、今回の訓練について話す――――」

 田中刑事は続ける

 


 「まず、今回の訓練の結果についてだが総合的に判断した結果———今回の訓練は引き分けとする」

 田中刑事がそう言った瞬間、俺達の間に衝撃が走る


 「あの、田中刑事――――」

 エンが口を開く

 「どうした?」

 「どうして引き分けなんでしょうか?私は岩に叩きつけられ気絶して戦闘不能、勇n、勇さんは優さん達の猛攻の末、気絶し戦闘不能———どう考えても優さん、心一さんチームの勝ちだと思うんですが・・・・・・」


 エンがそう言うと

 「結果だけ見れば確かにそうだ・・・が、総合的に判断した結果―――引き分けという結果にいたった・・・これからその理由を説明する―――――」


 そう言って田中刑事は俺とエンの前に立つと

 「まず、最初に攻勢を仕掛けたのは神谷、エン、お前達だ―――――火力の高い横田を引きつけ、エンの特殊合金のボディーで横田の攻撃を受ける、横田が動揺している隙に神谷が桃園に特攻を仕掛ける―――とてもいい作戦だ・・・・」

 「「ありがとうございます・・・・・」」


 俺とエンは田中刑事の言葉を素直に受け取り礼を言う

 「だが・・・・」

 

 急に田中刑事の雰囲気が変わる


 「横田が機転を利かせエンの拘束から逃れお前たちの作戦は破綻、お前達は何もできず形成を逆転された挙げ句2人共気絶し事実上の敗北・・・・お前たちは自分達の作戦を過信してしまったために、突発的なアクシデントに対応できず負けた・・・」

 「すみません・・・・」

 田中刑事に痛い所を突かれ、俺達はただ謝るしかなかった


 「今回はあくまでも訓練だが戦場では奇襲を受ける事は日常茶飯事だ・・・・今のお前達では奇襲を受けても何もできず右往左往してられるだけだ・・・・その結果戦線が崩壊しお前達以外にも多くの犠牲者が出たらお前達はどう責任を取るつもりだ・・・?」


 「・・・・・・・」

 俺達は何も言えずただ固まる


 「これからは自分達の作戦に慢心せず、突発的事態にも対応できるようにしろ・・・・」 

 「分かりました・・・・・」

 田中刑事の言葉に俺達は力無く返事する

 

 

 「次は━━━━━」

 そう言って田中刑事は優と心一の前に立ち話し始める


 「桃園と横田、お前たちは後半からの動きは目を見張るものがあった

 まずは横田―――――横田はエンに足止めされた際に機転を利かせ地面を殴った反動で上に飛びエンから逃げる━━━━中々、思い付かない奇抜でお前らしい作戦だ」

 「いやぁー」

 田中刑事の褒め言葉に心一は頭をかき、照れる


 「さらに、その時出た音で神谷の気を引き隙を作り、神谷の死角になっていた上方向に移動、滑空しつつ素早く攻撃態勢に移り攻撃する・・・狙いは外してしまったが、とても無駄のない洗練された動きだった・・・・軍の上層部もそう評価してくださるだろう・・・」




 「ありがとうございます!!」

 心一は元気良くお礼を言う

 

 「次に桃園━━━桃園は形成を立て直してから動きはとても良かった―――神谷の急所を寸分の狂いなく撃ち抜く射撃スキル・・・その射撃スキルがあれば軍でもトップクラスのスナイパーになれるだろう」

 「ありがとうございます・・・・」

 心一とは対照的にこのあとの展開が予想出来ている優は重々しく答える


 「だが————」

 田中刑事は険しい表情になり

 「今のお前達2人では軍人はおろか、警察官━━━━いや、警備員にもなれん・・・・・」

 「えっ・・・・」

 あまりの言われように優が思わず声を漏らす


 「まず、横田————お前は相手の陽動作戦にまんまとハマり足止めを食らった・・・・戦場でそんな失態をおかせば1個団全滅・・・最悪の場合、作戦が失敗する事だってありえる・・・・・そんなやつを軍人として雇いたいとはとてもじゃないが私は思えん」

 「ごめんなさい・・・・」

 心一は小さい子のようにしょんぼり謝る


 「次に桃園————お前は神谷が走ってきた時、動揺して闇雲に撃っていたな?」

 「はい・・・」

 「そんな事すればすぐに弾切れになる━━━案の定、弾切れになってリロードしようとするも手が震えてリロード出来ず挙げ句には弾をぶちまけ、拾ってる間に神谷に首元に鞘を当てられる・・・・・戦場であればもうその時点でお前の首は宙を舞っている・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・」

 優は泣きそうになるのを堪えて、田中刑事の話を聞く



 「スナイパーの基本は何が起きても冷静でいる事だ・・・それができてない時点でお前は負けだ」

 「すみません・・・・」

 優は震えた声で謝る


 「これからは冷静に的確に判断して行動しろ・・・・・」

 「はい・・・・・・・・・・」「分かりました・・・・・」

 心一と優は力無く返事をする

 

 

 「以上の理由から今回の訓練は引き分けとする―――――――」

 俺たちが落ち込む中、田中刑事は淡々と続ける


 「尚、明日の訓練は私と黒田刑事と戦ってもらうチーム編成については・・・・・」

 田中刑事の口から予想外の言葉が飛び出す


 「ちょっと、待って下さい!!」

 俺は田中刑事の話を途中で遮る

 「どうした、神谷――何か異議でもあるか?」

 「田中刑事達と戦うんですか?」

 「そう言ってるだろう」

 田中刑事は表情を変えずに答える


 「いくら何でも、無茶すぎます!!」

 「そうですよ!!」

 「どうやって勝てってゆうんすかっっっ!!」

 「私たちの勝率は限りなく0に等しいです!」

 俺の文句に優、心一、エンが続く


 「言っておくが訓練内容は政府が決めた事だ――――お前たちもそうだが私達にも拒否権は無い・・・もしお前たちが訓練を拒否するようなら島に置いていくようにという命令が政府から出ている

 言っておくがこの島の半径100km圏内には人が住んでいる場所はない、それに周囲の海域、空域に船舶、航空機が通ることは禁止されている」

 「「「「・・・・・・・・・・」」」」

 絶望的な状況に俺たちは黙り込む

 

 「安心しろ、私達も手加減はにする間違っても殺しはしない――保証する」 

 「・・・・・・分かりました」

 俺が了承すると優達もあきらめたように了承する


 「ありがとう、ごめん・・・・」


 「えっ・・・・」

 1人だけ田中刑事の小さな声が聞こえた俺は思わず声を出すが、田中刑事は気にせず続ける


 「では、明日の訓練に備え各自、食事、睡眠をしっかりと取り英気を養うように――――解散!!」

 浜辺に田中刑事の号令が響き、俺たちはテントに戻った


 

 


 

 テントに戻った俺達は晩飯戦争を済ませ、眠りについた





 

  

 


 

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