YORISIRO

 


 『【勇ーYORISIRO型】の機能異常を確認・・・・・修復プログラムを起動します・・・・プログラム起動まで少しお待ちください』


 「う・・・ん・・・・・」

 機械の無機質な声で俺は目を覚ます


 「ここはどこだ?」

 辺りを見回すと何もない真っ白な空間だけが広がっている


『修復プログラム起動中・・・・・修復プログラム起動中・・・・・』

 真っ白な空間に再び無機質な声が鳴り響く


 『修復プログラム起動完了・・・只今より修復作業に入ります―――――――修復作業の間、【勇—YORISIRO型】さんの精神プログラム及び感情プログラムは帝國政府内の専用サーバーに暫定的に移管されます・・・修復完了までそちらでお待ちください』


 機械音声がそう言い終わると同時に俺の回りに大量の本棚が立ち並び、色んな声が聞こえ始める



 本棚に並んでいる本を見て見るといろんな本が並んでいる、六法全書や歴史書みたいなお堅い本から、マンガ・芸能雑誌――――中には『男の!大根を元気にする叡智の本』という謎の本まで様々だ

 

 「ん・・・?」

 俺は1冊の異常に分厚い本を手に取るタイトルを見てみると血のように赤い字で『浅井シナリオ』とだけ書かれている、著者欄を見てみると文字通り血塗られていて読めない


 「何だ、この本・・・?」

 俺は最初のページを開き目次を見てみるがなぜか文字化けしていて読めない、登場人物が書かれたページの方は大量の名前が小さい字でびっしり書いていてよく読めない

 

 俺は他のページをめくってみるがピンボケした写真と文字化けした文章で構成された訳の分からないページが続く、


 「ん・・・?」

 俺が読むのを諦めかけた時、やけに鮮明にくっきりと写った写真があった

 「これは・・・俺・・・・?」


 その写真には某ドラゴン某ルの某帝王が入ってそうな某ケースに入れられた小さい頃の俺が写っている

 

 写真をよく見ると気泡らしきものがポコポコ動いている

 (どこぞのハリーのポッター〇魔法の世界じゃあるまいし・・・)

 俺はそう思いながら文章の方に目を移す

   

 「・・・・!?」

 俺は思わず頭を押さえた

 (な・・ん・・だ・・・・こ・・・れ・・・・!?)

 文章の方に目を移した瞬間に頭の中に大量の記憶(データ?)が流れ込んで来る


 「グッ・・・ウ”ォッ・・プッ・・」

 吐き出しそうになった俺は手で口を押えようとするが、間に合わず

 「グヴォァ!!!」


 俺は本の上に思いっきりぶちまける———ぶちまけたモノを見るとそこには何かが映っている

 「これ・・は・・・・・??」

 映っているものを見ようとした俺はそのまま気を失い、ぶちまけたモノに顔を突っ込み・・・・・・・・・・・・

 気が付くと、俺は写真に写っていたあのケースに入れられていた

  

 前を見ると、俺の父さんとどこかで見た事がある長い部分白髪が特徴的な男が、俺の入っているケースの前で何か話している


 「神谷・・・話は本当か?」

 部分白髪の男が震える声で父さんに聞く

 「あぁ・・・脳波、脈拍共に異常無し―――その他の生体条件もクリア、あとはこの起動ボタンを押せばいい・・・・」


 「そうか・・・やっと、やっと・・・」

 そう言うと、部分白髪の男はガタイのいい体で俺の入っているケースに抱き付き、泣き始める


 「あの日から10年近く・・・やっと会える・・・私の・・私の大切な・・・」

 「あぁ・・・だが、それと同時に災悪も始まる・・・・・」

 「神谷・・まだ迷ってるのか・・・?」


 部分白髪の男が立ち上がり、父さんの方を向いて聞く

 「あぁ・・・・、この計画が成功するという事はお前は死ぬという事だ・・・その後に残るのは結局災悪でしかない・・・・それに―――――」


 「・・・・」

 部分白髪の男は父さんの話を黙って聞く

 「お前は、自分の息子に・・・」

 「英傑・・・・」


 部分白髪の男が口を開く―――――部分白髪の男の静かで迫力のある声に父さんの動きが止まる


 部分白髪の男は父さんの肩に手を置くと

 「それ以上、言わないでくれ・・・・・」

 「!!・・・・・」

 部分白髪の男のどこか苦しそうな表情を見て父さんは言葉を失う

 

 父さんが何も言わなくなると、部分白髪の男は再び俺の方を向いて口を開く

 「なぁ、神谷・・・最後に私の頼みを聞いてくれないか?」

 「あぁ・・・お前と俺の仲だ・・・・遠慮せず、何でも言ってくれ・・・・」

 父さんはどこか悲しそうに部分白髪の男に返す


 「この子が目覚めたら私はこの子の前から消える・・・だから・・・・この子を・・」

 言葉を詰まらせ下を向き泣き始めた部分白髪の男の肩に父さんは手を置くと


 「分かった・・・任せてくれ・・・」

 父さんは力強く答える


 「ありがとう・・・英傑・・・・」

 父さんの返事に部分白髪の男は涙を拭い、ボタンの方に近付き手をかけこちらを向き話し始める

 

 

 「さぁ、目覚める時間だ・・・・今度、俺に会うのは俺が死ぬときかな・・・それまで、さようなら・・・・そして、おはよう・・・・ゆ・・・・・」

 部分白髪の男がボタンを押した瞬間、俺は意識を失う

 『修復作業完了・・・・勇さんの精神プログラムをYORISIRO 型に転送・・・』













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