私の気持ち
あれから俺は気が済むまで泣いた後、泣き疲れて眠てしまった優をテントまで運んだ
それから一夜明け
「みんな、おっはよーう!」
優の元気な挨拶が演習地に響く
「あっ!勇、おはよう!!」
俺に気付いた優が心一並みの大きな声で挨拶するが昨日、大声で泣きすぎたせいか声が少ししゃがれている
「あぁ、おはよう」
俺は優の声については触れずいつも通りに挨拶を返し、朝飯前で目を血走らせてうなっている心一の隣に座る
「心一もおはよう」
「おう、ゆうゥゥゥゥゥルルル・・・オ・・・・・ハ・・・ヨ・・ウォォォォォォォオオオオオ・・・・・!!!!!」
よし、まだマシな方だな
俺は優の方を向く、横では心一がフシュ、フシュ、言っている
「今日の朝ごはんはどうする?なにか希望とk・・・・・」
「ニクーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
心一の遠吠えが優の言葉を遮る
「OK!お肉ね少し待ってて!」
心一の答えに対して優が、昨日のことが無かったかのように明るい笑顔で答えるが、目元をよく見ると赤く腫れていた
優が調理スペースに消え、俺と
泣き疲れ眠ってしまった優をテントに運んだ俺はもう一度、優からもらった設計図を見ているとある事に気付いた
設計図の下の隅の方にある設計者の欄によく見ないと分からない程小さく、汚い字で『神谷 英傑』という名前があった
それを見て俺が考えて導き出した結論は政府と優の両親、そして俺の父さんとの間には繋がりがあり手を組んで大量の人を殺せる兵器を作ろうとしているという結論だった———――
父さん達はいったい何をしようとしているんだ?
「ハァー」
俺がため息をついていると
「出来たわよー!」
そう言って優が肉のたっぷり入った魚介スープを持って来て机に並べ出す
「これでよし!」
そう言って優が皿を並べ終わった瞬間
「ニクゥゥゥ!!!!!」
知能が完全にさる以下になった心一がスープに入っている肉を鷲掴みにし、食らいつく
野猿のごとく食らい付く心一の姿を見て、俺とエンはドン引きする
「心一、頂きますは?」
見かねた優が心一に注意する(注意するところは他にもある気がするが・・・)
「いふぁゔぁきまふ!!」
心一がビチャビチャと食べ物を飛ばしながら言う(こういう所が無ければ心一はイケメンなんだけどな・・・・)
「ちょっと、心一さん汚いですよ!私の料理に入るじゃないですか!!」
心一が飛ばした物がスープに入りそうになったエンが心一に怒る
「ごめん、ごめん、っていうかアンドロイドも飯食うのか?」
器をあっという間に空にした心一はおかわりを優に要求し、エンの料理を獣の目で見つめながら質問する
「最近のアンドロイドは食べるんですよ」
エンは心一から器を遠ざけながら答える
「おっ、飯の時間か?」
俺がエンと心一の静かな戦いを眺めていると、田中刑事と黒田刑事がテントに入って来る
「あっ、黒田刑事に田中刑事、良ければ食べられますか?」
優が心一に9杯目のおかわりを注ぎながら言うと
「じゃあ、お言葉に甘えさせて貰おうかな?」
「ありがたく、頂こう・・・・」
そう言って2人は席に座り、優に配られたスープを食べ始める
「勇、食べないのか?食べないなら俺がもらうぞ?」
俺がスープから目を離している隙に隣の席から心一の手が伸びてきて俺のスープをさらう
「あっ、ちょ・・・・」
俺がそう言っている間に、心一は目にも留まらぬ早さで器を空にした
「あぁ・・・・・・」
俺は目の前に置かれた空の皿を見て情けない声を漏らす
「ごちそう様でした!」
俺の皿を空にして心一は満足そうに手を合わす
「優、スープは・・・・・」
「ごめん、もう・・・」
優は海岸で拾ってきた寸胴を逆さにし、無いという事を表す
「ごちそう・・・様・・でした・・・・・・」
俺は涙を堪えながら手を合わし、食事を終えた
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
朝食を食べられず、力が入らない俺は浜辺の岩に腰掛けボーッと海を眺めていると
「勇?」
後ろから声をかけられ、振り向くとそこには優がいた
「あぁ、優か・・・・どうしたんだ?」
俺が力なく聞くと
「はい、これ・・・」
そう言って優が小包を差し出す
「これは?」
「朝食———心一に朝ごはん取られてたでしょ?だから、これ」
「ありがとう・・・・」
俺は優にお礼を言って小包を受け取り開けると、中には大きな焼いた肉が入っていた
「頂きます」
俺は手を合わし、肉にかぶり付く
「ねぇ・・・勇」
「んー?」
俺は肉を食べながら答える
「昨日の事なんだけど」
・・・・!!
「ゲホッ、ゲホッ・・・・・」
優の言葉に俺は喉に肉をつまらせむせる
「大丈夫!?これ、飲んで!」
俺は優から水筒を受け取り、飲む
「あっ!それ、まだろ過して無いやつだった!!!」
(ピューーーー!!!)俺はきれいな噴水を作った
「落ち着いた?」
「あ、あぁ・・・・」
優から貰った真水を飲みながら俺は答える
「で、昨日の事がどうしたんだ?」
落ち着いた俺は優に尋ねる
「昨日の事なんだけど、忘れて・・・設計図も勇にあげる・・・」
優が空を見上げ答える
「良いのか?俺に渡して・・・大事な物だろ?」
「うん、確かに大事な物だけど何となく勇が持ってた方がいいような気がするの、それに私、決めたのこれからどんなに最悪な事態になろうと―――――」
優は言葉を切り、こちらを向く
「私は自分が選んだ道を行くって」
そう言う優の目は決意に満ちていた
「優・・・」
俺が話そうとした時
「さて、私はそろそろ訓練に戻るから」
優はそう言って俺に背を向け、走る
「あっ!!」
優が何かを思い出し、こちらを向く
「どうしたんだ?」
俺は大声で聞く
「勇も結構、キザなことするんだね!!!」
「!!!!!!!」
俺は体を石のように固まらせる
俺が固まっていると優が駆け寄り
「抱きしめたのが私だから良かったけど、他の子だったらセクハラだからね」
そう、耳元で囁く
「まぁ、でも・・・・」
優はさらに続ける(やめてくれ、もう俺のライフは0だ・・・・)
「そんなの、私が許さないけどね・・・・・」
「え・・・・」
俺は優の顔を見る、優の顔が夕日に照らされたように赤くなっている
「じゃぁね!!」
そう言って、優は再び背を向け走り始める
「あっ・・・・」
俺は優に向かって手を伸ばす、すると優は立ち止まり後ろを向いたまま口を開く
「抱きしめてくれて、ありがとう」
そこで優は一旦、間を置き
「うれしかった・・・・・」
小さく、吐き捨てるように言うと耳を赤くした優は再び走り始め、今度は立ち止まることなく去っていった
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
優が去り、俺は一人浜辺に呆然と佇む―――――――時が流れしばらくして、俺は優の照れた顔を思い出し3時間ほど悶絶した
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