僕の存在価値
悶絶状態から立ち直った俺は、いつも通り素振りを始めた
しばらくして辺りが暗くなり始めた頃、優に晩御飯の時間だと言われ俺は素振りを辞めテントに向かう
テントに入ると田中刑事と黒田刑事を含めた全員が揃っていた
「おっ、来たかクソガキ」
黒田刑事が俺に気付き手を振る
「すみません、お待たせしました・・・」
「そんなのいいから早く飯にするぞ、そこの筋肉バカが暴れだす前に・・・」
黒田刑事が心一を指さす
心一を見ると
「フシュー・・・フシュー・・」
血走った目で、目の前の料理を見つめて震えている(良かった、まだ理性が残っている)
「勇も来たことだし、そろそろ食べましょうか」
優がそう言うと同時に
「イダダグルルギャース!!!!」
心一が吠え、皿に顔を勢いよく突っ込む
「「「うわっ!!」」」
その時に飛び散った料理が俺と田中刑事、黒田刑事の服に飛ぶ
「「「この
服を汚された俺達3人は、
まずい!!————俺達がそう思った時には、俺達の料理は心一の前にテレポートしていた
「「その料理から手を離せ!!」」
そう言うと田中刑事と黒田刑事は拳銃を心一に向ける、俺も刀(鞘付き)を手に取る
「グルルルル・・・・・グガァーーーーー!!」
俺達の敵意に本能的に気付いた心一は俺達に飛び掛かる俺達も応戦し、晩御飯を巡る戦争が始まった
「「「ハァ・・・ハァ・・いただきます・・・」」」
3時間に及ぶ戦争の末、俺たち三人は心一の鎮圧に成功―――――――満身創痍の中晩御飯にありついた
晩御飯を食べ終えた俺は、1人浜辺に向かい設計図について考えていると
「勇さん?」
後ろから声を掛けられ振り向くと
「?あぁ、エンか・・・」
そこにはエンが立っていた
「どうしたんですか?そんな難しそうな顔して?」
「この刀について考えてたんだ」
俺はとっさに嘘をつく
「あぁ、その刀ですか・・・・・勇さん、ちょっとその刀貸してもらっていいですか?」
「?、あぁ・・・」
俺はエンに刀を渡す、するとエンは目から光を出し刀に当てる
「!!?」
俺が驚いていると
『スキャン完了・・・・スキャン完了・・・・』
そう音がしたかと思えばエンは口から紙を吐き出し
「その刀の分析結果です。見てみてください」
そう言って俺に紙を差し出す
「あ、ありがとう・・・」
俺は複雑な表情をしながら差し出された紙を受け取る
その紙には刀の素材や製造時期が書かれていた
「どうですか?何か気になることは書いてありますか?」
「いや、特にこれといったものは無いな・・・」
俺がそう答えると
「そうですか・・・・お役に立てずすみません・・・」
エンが申し訳無さそうに謝る
「いやいや、そんな事無いよ――――わざわざ調べてくれてありがとうな・・・でも、すごいな・・・・そういう所を見るとお前がアンドロイドなんだって改めて思うよ」
俺がそう言うと
「ありがとうございます」
エンは少し表情を緩める
「でも、ネットに接続できない今の私は皆さんのお役に立てないどころか皆さんの足を引っ張ってしまうだけです」
エンはどこか寂しそうに続ける
「・・・・・・なあ、エン」
「何ですか?」
「何で、お前はそんなに自分に自信を持てないんだ?何でそんな自分をさげずむような事を平気で言えるんだ?」
「?どういう事ですか?意味が分かりかねます・・・・私は事実を言っているだけです」
エンは不思議そうな顔で答える
「だから・・・!」
俺はエンの方を向く
「お前は、自分が思ってるよりずっとすごいって事だ」
「私が・・・ですか?」
「あぁ、エン・・・お前は能力的にお前より明らかに劣っている人間の俺達に呆れず付き合ってくれている・・・そして何より、お前はこの世で何一つとして替えの効かない大切な俺達の仲間だ!お前はいるだけでも俺達にとって価値がある!少なくとも俺はそう思っている・・・」
俺がそう言うとエンは
「私はいるだけでも価値がある・・・?私は便利じゃなくてもいい・・・???」
「そうだ・・・・」
エンの質問に対し俺がそう答えるとエンは下を向き、ブツブツと何か言い始める
「エン?」
「私はいるだけで価値がある?ワタシノ存在カチはベンリナアンドロイドジャナイ?ワタシハ?ボクハ?オレハ?ワレハ?ジブンハ?ワカラナイ・・・ ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナアワカラナイワカリタイワカリタイワカリタイワカリタイワカリタイワカリタイワカレナイワカレナイワカレナイワカレナイワカラナイワカラナイワカラナイワカレナイワカラナイワカレナイワカラナイワカラナイ•••••••••••」
「エン?」
俺がエンの肩に手を置いた瞬間
「ワカラナイ!!!!!!」
エンがいきなり叫び取り乱し始める
「エン・・・エン・・・!!」
「う”・・・・あ”・・・わ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”$%“%¥$’%ぁ”ぁ’”’%’ぁ”%$&$$&あ”ぁ”^あぁ$#&#!”ぁ”あ”ぁ”&$!’%$’”%$’”%$’ぁ”ぁ”¥ぁ”ぁ”%$$%&$&%・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
エンが上を向いて声にならない声で叫ぶ
「エ”ン”!!!!」
俺はエンの名前を叫ぶ
「ユウ・・・・サ・・・・ん?」
俺の呼び掛けにエンは何とか正気を取り戻す
「ワ”タ”・・・シ”ノ”・・・ホ”ク”・・ノ”・・・存在価値は何・・・ですか・・・・?いるだけで価値があるというのは私には・・分かりません・・・・私が誰かに求められるには便利なアンドロイドという存在価値が必要なんです・・・誰かの1番になるには・・・誰かに求められるには・・・!」
エンは鬼気迫る表情ですがるように俺に言う
「エン・・・・」
俺は知らなかったエンにとっての便利なアンドロイドという存在価値の重さを・・・エンは生まれてからずっと廃棄という恐怖が付きまとって来た、その中で与えられた便利なアンドロイドという存在価値はエンにとって唯一の自分を保てる物だった・・・・それを俺が否定した・・・・
「ワカラナイ・・・分からない」
「エン・・・」
俺は頭を抱えてしゃがみ込み震えているエンを起こし、こちらを向かせる
「ユ・・・サ・・・」
エンが今にも消えそうなか細い声で俺の名前を呼ぶ
「ごめん・・・エン」
「勇・・さん?」
いきなり俺に謝られ、エンは困惑する
「すまなかった・・・お前にとって便利なアンドロイドという存在価値がどれだけ大事か・・・それを知らずに俺は・・・なぁ、エン・・・」
俺はエンの深い谷のように黒くなっている目をまっすぐ見る
「良ければ、俺の弟にならないか?」
「弟?」
エンが戸惑いながら聞き返す
「あぁ・・・俺はお前から存在価値を奪った・・・だから新しい存在価値として俺の大切な存在・・・『家族』になってくれないか?」
正直言って、自分でもぶっ飛んでいるのは分かっている・・・・でも、こんな状態のエンを放っておけない・・・・
「僕が勇さんの『弟』・・・?」
深い
「あぁ、お前の存在価値は便利なアンドロイドじゃない俺の『弟』だ・・・お前に何かあったら俺が守る、そしてお前も俺を守る・・・それがお前の新しい存在価値だ・・・・だから俺の弟になってくれないか?」
エンの顔が段々明るくなるのが分かる
「勇・・・兄さん・・・・僕のお兄さん・・・」
「そうだ・・・・」
「勇兄さん!!」
エンははじけんばかりの笑顔で俺を呼ぶ
その姿は完全に小学生だ
「何だ?」
「これから宜しくお願いします!」
「兄弟なんだからこれからは敬語じゃなくていいぞ?」
「はい!分かりました!」
そう、敬語で答えるエンの顔は輝きに満ちていた
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