武器慣らし

  演習が始まると俺達はそれぞれ己の武器の扱いについて練習していた

 

 (バンッ)(ドサッ)

 銃の乾いた音の後に木の上から鳥が落ちる

 「やった!!」

 そう言って優が可愛くガッツポーズをする 

 「よくやったな、お嬢ちゃん!!これで100羽目だ!!」

 黒田刑事が笑いながら優をほめるが微妙に顔が引きつっている


 「これで演習中の御飯は大丈夫ね!」 

 そう言う優の後ろにはありえない数の獣が積み上げられている


 「次はこの動物たちをさばかないとね・・・」

 そう言うと優は黒田刑事からサバイバルナイフを受け取り、獣の山から一羽の鳥を取り出し岩の上に置くと(ダンッ・・・!!!)躊躇なく鳥の頭を切り落とし、目にもとまらぬ速さで山になっている動物たちを次々とさばいていく・・・・(あれだけの動物をさばいているのに返り血をほとんど浴びないのはさすがとしか言いようがない・・・・・・)


 「ふぅ・・・、終わった・・終わった・・!」

 山積みだった獣の山は物の数十分で肉と内臓の山に分けられた

 「すごいな・・・」

 俺は頬に血を少しつけた優に引きつった顔で言う


 「いったい、どこでそんな技術を身に着けたんだ?」

 俺の質問に優は顔を曇らせながら

 「親の影響でね・・・」

 そう答える優の顔を見て何か触れてはいけないもの感じた俺は慌てて話題を変える

 

 「そういえば、心一は何をしてるんだろうな?」

 「そういえばそうね・・・・」

 俺と優が辺りを見回して心一を探していると

 

 (グォガ――――ン!!!)

 大きな音と共に林の木々が吹っ飛び土煙の中から心一が現れる

 「よぉ!勇!優!あっ、これやるよ!」

 土煙の中から現れた心一は俺たちに手を振り近づくとたくさんの木の実を差し出す


 「心一、なんだこれは!?」

 「え?木の実だけど?」


 「そうじゃなくて、これだよ!!」

 俺は吹っ飛ばされて滅茶苦茶になっている木々を指差す

 「どうやったらこんなことになるんだ!?」


 「えっ?普通にこれを使って木を殴ったらこうなっただけだけど・・・」

 心一は手袋を指さしてリスみたいな顔をして答える

 「ハァ・・・・」

 俺は心一あほリスの答えにため息をつく



 「横田 心一!!!!!」

 俺が心一にあきれていると遠くから田中刑事が鬼の形相で走ってくる

 「何だこれは!?」

 田中刑事は林の惨状を指差し怒鳴る


 「えっと、これは」

 「これだけじゃない、島のあちこちに開いている深さ5メートルのクレーター、あれもお前の仕業か!?」

 「はい・・・」

 「上にどう説明すれば・・・・」

 田中刑事が珍しく頭を抱える


 「私は向こうで始末書を書いてくる、お前たちはそのまま訓練を続けていろ・・・ただしこれ以上島を壊すな!!」

 そう言い残し田中刑事は少しふらつきながらどこかに歩いて行った

 

 「その様子だと二人共、自分の武器の扱いに慣れたようだな」

 「「あぁ!

   えぇ!」」 

 黒田刑事の問いかけに対し2人は同時に返事をする


 「勇はどうなんだ?」

 「俺は・・・」

 俺は鞘から刀を抜こうとする、すると

 【エラー、エラー・・・勇さんはまだこの刀を使用できません・・・使用するにはを決めてください】

 そう言って刀は鞘から抜けない―――――――さっきからずっとこの調子だ・・・・


 「何?覚悟って・・・?」

 優が首をかしげる

 「わからない・・・」

 覚悟を決めろと言われても覚悟はもうできている・・・・


 「これじゃぁ訓練にならねぇな・・・どうするか・・・・」

 黒田刑事が頭を掻いて悩んでいると

 「とりあえず、鞘付きのままやればいいんじゃないか?」

 心一がそう言うと

 「確かにそうだな・・・よし、クソガキ――とりあえず、鞘付きのまま素振りでもしててくれ、もしかしたら何かのはずみで鞘が抜けるかもしれない」

 黒田刑事が心一の意見に乗っかる


 「えっ、でも」

 俺が渋っていると

 「いいじゃない!別に何の意味も無いって事は無いだろうし!」

 優もこの意見に乗っかり、押し切られる形で俺は鞘付きのまま訓練をすることになった

 

 

 

 「じきに日が暮れる!武器を片付け食事の準備にかかれ!!!」

 訓練を初めてしばらく経ち、始末書を書き終わりやつれて戻ってきた田中刑事の号令と共に俺たちは武器を片付ける(俺は鞘付きだけど)


 「本来であれば、お前たちが島の木を切り自力で野営地を設営してから食事の時間になるはずだったんだが・・・・・」

 田中刑事がぐちゃぐちゃになった木々を見る


 「・・・島の木が全滅したので念のため用意したテントを使ってもらう」

 そう言うと田中刑事は親指大のカプセルを取り出し地面に投げる



 カプセルは地面についた瞬間にテントに様変わりする

 「ドラゴn・・・・」

 「それ以上言うな・・・・・」

 俺は、何か言いかけた心一の口を塞ぐ


 「食料に関しては・・・大丈夫そうだな・・・」

 田中刑事が山積みの獣肉と木の実を見てぼやく

 

 「それでは各自、食事を作るように!」

 そう言うと田中刑事は黒田刑事と一緒にどこかへ行ってしまった。


 「それじゃあ、晩ごはんを作りましょうか」

 優がそう言うと 

 「よっしゃー!!飯だー!!!!!!!」

 心一が吠え、横にいた俺の耳が壊れる


 「うるさいですよ、心一さん」 

 エンが俺たちの後ろから耳を抑えて現れる

 「エン、お前どこに行ってたんだ?」

 心一がエンに尋ねる

 確かに、訓練中姿が見当たらなかったな


 「どこに行ってたんだ?」 

 改めて俺が尋ねると

 「外部へ通信を試みてたんですよ・・・」 

 エンはなぜか少し不機嫌そうに答える

 「外部へ通信?」


 「島に来てから通信が出来なくなったので、島中を歩き回ってたんですが通信はおろかネットへの接続や他の機能も制限されていました!これじゃあ、人間と何も変わりありません!」

 そう言うとエンは不機嫌そうにそこら辺の岩に腰を下ろす

 

 「まぁ、いいじゃない!私は逆にネットが無くて演習に集中出来て良いと思うわ!」


 優がそう言うとエンは血相を変えて叫び出す

 「良くありませんよ!ネットに繋がらない私なんか何の存在価値も・・・・・」

 エンは言いかけた事を途中で止め、冷静に話し始める


 「すみません、取り乱しました・・・さぁ、晩ごはんを作りましょう」

 「あ、あぁ・・・・そうだな」

 エンの反応に俺たちは若干戸惑いつつも、晩ごはんの準備に始めた



 晩ごはんは終始、誰も喋らずぎこちない雰囲気の中終わり俺達4人はテントの中で眠りについた 




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