第5話、お手ってさあ…
「先生、それは・・・」
「ああ、この間採ってきてくれたサンプルから培養したんですよ。
スライム君2号から5号まで4体。
結構知能も高くて便利ですよ。
そうだ、委員長は攻撃型じゃないですから、5号君を護衛につけましょう。
指を出してください。あの、異星人との交流を描いた名作イーターみたいな感じで」
「イーターって、自転車に乗って一緒に空飛んだりするやつですよね。
でも、あれって、最後に少年が喰われちゃいませんでしたっけ・・・」
「大丈夫ですよぉ。体の老廃物なんか食べてくれますから、美容にもいいんですよ。」
「モモちゃん先生に言われたら断れませんから・・・」
おそるおそるスライムに指を伸ばすと、5号君も触手を伸ばしてきた。
一瞬、ピリッと電気みたいな感じが走り、僕らはお互いに相手を認識した。
5号君は僕の指から腕へと這い上がり、全身を確認していた。
「なんか、意外と気持ちいいです」
「そう?一応硬さは私の胸と同じくらいにしてあるから、寂しくなったらプニプニしていいわよ」
「・・・」
もう、前かがみになるしかありません・・・
あっ、5号君・・・そこは・・・ダメだよ・・・
「そういう目的で使ってもいいわよ。でも子供ができたら教えてね。
君の遺伝子を持ったスライム君・・・転移とか使えたら面白いわよね」
・・・あっ、スライム君・・・そこの穴はダメだって・・・
「救出作戦は3日後に決まったから、座標で転移できるようにしておいてね」
「やっぱり僕が行くんですね」
「三番目くらいにリスクが低いんですから、頑張ってね。
一応、計測装置類はすべて停止することになっているんだけど、多分監視衛星とかで覗こうとする国があるでしょうね。
うふっ、楽しみなの。監視衛星の無力化って初めてだから。
物理的に落とすか、電子回路をショートさせるか・・・
そうそう、君はスライム君で変装してちょうだいね。クラスメイトにもばれないようにね。
どうする、一番のおすすめは女の子だけど」
「でも、声でバレますよ」
「あら、ちょっと声帯をいじれば声なんていくらでも変えられるわよ。」
半ば強引に、女の子になることが決まってしまった。
慣れておかないといけないからと、そのまま女装させられる。
体型の補正はスライム君が担当する。
「じゃあ、スライム君1号を調教しにいきましょうか」
「はぁ?」
「だって、君が連れて行くんだよ。
襲われたら困るでしょ」
そうだった。ダニエル作業員の顔が浮かんだ。
「大丈夫。スライム君たちが交渉してくれるし、守ってくれるから」
「でも、大人と子供でしょ。
とても安心なんて・・・」
「それって、とても失礼ですわよ。
私が手を入れたスライム君が、オリジナルに劣るって思っているんですよね」
「いえ、単に大きさの違いにビビってるだけです」
「よーし、結界を解除してください」
「ちょ、ちょっと待ってください。
このスライムは今、国の管理下にあります」
担当者がそう言って拒否してくる。
「あら、これを封印したのは私よ。
封印の設備も私のもの。
サンプルも譲ってあげたし、国ができなかった再封印もしてあげたわ。
どこに国が権利を主張する余地があるの?」
「・・・ともかく、佐藤研究員が戻るまでお待ちください」
「いつ戻るの?」
「明朝には戻るかと・・・」
「国は、生徒の救出よりもスライムの研究を優先するわけね。
残念だけど、このスライムは元の世界に戻すの。
ちょっと佐藤君に電話してくれない。
会議中でも、こちらを最優先して」
「いえ、会議中は電話に出ませんから」
「使えないわね。いいわ、私の端末を使うから。
・・・あら、留守電モード・・・まさか、ここまで使えない男に成り下がっちゃったとは・・・残念だけどここまでかな。
一応、通知だけはしておくわ。
結界を解除してスライムは連れて行くわ。
生徒の救出に必要なの。
そういうことでよろしく」
「これでいいでしょ」
「いいわけないでしょ。どこがいいんですか!」
「あなたは、これで体裁を保てるでしょ。
自分は止めたのですが、妨害にあって阻止できませんでしたって」
「・・・そうですか、では阻止のための行動として、これを使うことになりますが」
そういって男は腰のホルスターから筒状のものを取り出した。
「多用途ランチャー”MR23”です。
今回は暴徒鎮圧用のゴム弾を装填してあります。
”ここは監視されていますから”私もマニュアルどおりの対応をせざるを得ないんですよ。
私も女性の体に傷をつけるのは趣味じゃありませんので、”足を狙います”。
最悪でも、骨折くらいですからご容赦くださいね」
「へえ、気が利くじゃないですか。じゃあ、この娘でお願い。
大丈夫よ、足は丈夫だから」
「その方は?」
「今回の救出作戦の核となる能力者、エーコちゃんよ。
覚えておいてね」
「そうですか。じゃあ、遠慮なく撃たせていただきます。
ご用意はいいですか?」
「こっちは大丈夫よ」
「じゃあ、撃ちます。せーの・・・」
パスッ!
射出にあわせて転移するエーコ(委員長)ちゃん。ゴム弾は正確に足の後ろにあった三角錐を打ち砕く。
「あーなんて事をしてくれるんですか!
結界装置を打ち抜くなんて!
これじゃあ・・・、結界が消滅しちゃったじゃないですか。
ああ、スライムが・・・」
いや・・・あまりにもわざとらしく無いか・・・
「大丈夫よ。私に任せなさい。」
そういうとモモちゃん先生はスライムに掌を向けた。
『マテ!』
犬じゃないんだから・・・
『オテ!』
スライム君1号・・・触手でお手なんかすんなよ・・・
「よし、じゃあ結界が消えちゃって、スライムを野放しにするのは危険だから私が保護するわね」
いや・・・先生、お手させたよね。もう、危険ないよね・・・
「仕方ありません。よろしくお願いします」
なんか・・・どう見ても茶番だった。
そして、救出作戦当日。僕はモモちゃん先生の研究室にいた。
学校の研究室ではなく、プライベートスペース(専用空間)にある研究室だ。
僕に与えられたのは座標だけなので、どこなのかまったく分からない。
少し前に、僕・・・いえ、私はチェリーボーイを卒業しました。
相手はもちろん先生・・・ではなく、少女に擬態したスライムちゃん1号です。
スライムちゃんに私の遺伝子を吸収させて転移系能力を与えるんだって・・・
先生、私の初体験を何だと思っているんですか・・・
射精の直後、私は先生の手によって女の子に作り替えられました。
「先生、何やってるんですか?」
「当然、約束を守らずに監視しているところへのおしおきよ。
本国のメインコンピューターを制御して、監視衛星は太陽への軌道にのったところよ。
で、機器本体のバッテリーを無効化して、UPSや非常用発電機を短絡(ショート)させたところ。
ウィルスを送って、記憶領域の全セクタをエッチな動画で上書きしてるわ。
この作業中はコマンドの入力や機器の操作はできないようにしてるしね。」
「それって、どれくらいあったんですか?」
「民間を入れて10ね。
民間の会社は間違いなく潰れるわよ」
「でも、最初の転移はここからだし、次のロストはむこうからだから、ログに残ることはないんじゃないですか?」
「そうだけど、ルールを守れない人たちには罰が必要でしょ」
「あの・・・私・・・帰りたくないんですけど・・・先生のそばにいちゃダメなんですか?」
そう言ったのは私の初体験の相手・・・村井スイム(スライムちゃん1号)だ。
「私?委員長の傍じゃないの?」
「お・ふ・た・り・の傍です!」
村井ちゃん、顔を真っ赤にしない・・・でも、かっ・・・かわいい・・・
「村井ちゃんは、向こうの管理者が作ったんだからさ、やっぱり返さないとね。
でも、そのあとでどうなるかは私の関与する事ではないよ。」
先生がそう言って頭をなでなですると、村井ちゃんの顔がパッと明るくなった。
そうか・・・あれを吸収して・・・分裂して・・・残せば・・・
村井ちゃん、口に出さないでくれるかな。
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