第五話 身辺警護 その三

 私とアイリーンは国際空港から車で移動し、緑の丘の滞在ホテルへ到着。すぐにチェックインした。


「はい、アイリーン。これがあなたの部屋のカードキーよ」

「ミサキ、ありがとう」

 パスポートをバッグにしまいながらアイリーンがキーを受け取る。


 部屋はもちろん別々だが警護の都合で隣同士。ダブルベッドの部屋なので寝心地は良いはずだ。


「ねぇ、お部屋で少し休憩したら、温泉の大浴場に行ってみない?」

 警護対象と一緒に行動する必要があるため、私から提案してみた。


「わぉ、温泉! でも日本では裸でお風呂に入るんですよね? 他人に裸を見られるなんて恥ずかしいな⋯⋯」

 顔を赤く染めるアイリーン。


 内心、私の方が(胸の大きさで負けて)恥ずかしいわよ‼︎ と叫びたかったが大人だから自制した。


 推定だが彼女は間違いなくDカップはあるだろう。日本人男性が一番好きなおっぱいのサイズだ。


 ま、まぁ、小ぶりなCカップだって可愛いという男性も中にはいる筈だし、そんなに気にしなくてもいいよね!


◆◆◆


 そしてお約束ではあるが、アイリーンと裸のお付き合い。まだ夕方ということもあり、大浴場の利用者は他にいないようだった。


「わぁー広ーい!」

 アイリーンが初めての温泉にはしゃいでいる。大浴場のほかにサウナと露天風呂もある。


「最初にここでお湯を身体にかけるのよ」

 私はアイリーンに声を掛けて一瞬固まった。


 やはり⋯⋯私の推測通り彼女はDカップだった。しかもハリがあるおっぱい⋯⋯。私は敗北感に打ちひしがれる。うぅ、美咲、悲しくなんてないもん!


 その後二人で背中を洗いっこし、露天風呂につかる。こちらは黒茶色の温泉。緑の丘の地下深くに眠る太古の植物成分だとも言われているが、疲労回復等に効果のあるナトリウム炭酸水素塩泉で身体の芯から温まるのだ。


「あ〜いいお湯。はぁ癒されるわ〜」

「ふふふ。アイリーンったらすっかり日本の入浴習慣に適応しているわね」

「はい。私の国ではお風呂に入るよりシャワーを浴びるのが一般的なんです。私は日本文化を勉強したからそれほど違和感なく入れますけど」

「たしかに。普通は抵抗あるかもね」


 私たち二人は温泉とサウナを堪能したのだった。


◆◆◆


 温泉入浴後、近くの焼肉料理店で夕食を食べる。彼女の国でも日本の和牛は有名らしく、美味しそうにお肉をほおばっている。結構会計いきそうだけど、これも任務。後で尾崎一佐にお願いしよう。


 無邪気な彼女を見ていると、まるで自分の妹のようにも感じてくる。絶対に彼女を守らないと⋯⋯。


 ホテルへの帰り道、上空から私たち二人を監視するかのように飛ぶドローンに気づいた私は改めてそう決意した。

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