第28話 大聖堂の戦い その4


 カーマインが、剣を構えアルトゥールに駆けよろうとしている。


 「こっちも忘れちゃだめだめだよ!」


 駆け寄ろうとしたが、足元に幾本のクナイが勢いよく突き刺さり、カーマインは足を止めた。


 「うさぎごときがぁ!!」


 シルヴィーは、短刀を引き抜くとカーマインの周りを素早くはしり残像が見えたかと思うと、カーマインに四方からクナイを投げつけた。


 カーマインは、剣を素早く振り回し叩き起こすが数本背中に刺さっていた。

 

 「おかわりなら、いつでもいって・・・・・・ぴょん」


 可愛くポーズをとってウィンクをしてみせた。


 「貴様ぁああぁ」


 怒り狂った顔とかわり、剣に力を込めると剣は漆黒になり黒い靄をまとった。


 「これに切られたやつは、魂まで切られ死後も苦しみつづけろ!」


 カーマインが踏み込むと、黒い剣は素早くシルヴィーの動きを捉え切りつけた。

 シルヴィーは、血しぶきをあげて真っ二つに切られ倒れた。


 「あっはっはっはっ ざまぁみろ。うさぎごときが、後で焼いて食ってやるわ。あははは」


 カーマインの背中にクナイが突き刺さる。

そこには、瓦礫に巻かれたマントが真っ二つに割れていた。


 「ざんねーんでした。忍法身代わりの術だぞ。ニンニン♪」


 人差し指を唇に当てながら、ウィンクして答えた。


 「きっ、貴様ら全員ここで皆殺しだ! 生きて返さんぞ!」


 カーマインは、指笛をならした。

大聖堂の壁が外側から破壊されて粉塵の中からは、巨大な人影が現れた。

巨大な角が生えており、顔は牛、体は、で漆黒の鎧を身にまとっている。


 「ミノタウロスか・・・・・・これは、まずかも・・・・・・」




 カーマインは、ソフィアのほうに駆け寄ると腕を持ち上げ腰に手を回し抱きかかえた。

ソフィアの顔をアルトゥールの方に向けた。


 「どうだ、ど~~~だ。お前を助けに来たやつらが、もがき苦しむ様を鑑賞できる気分は? はっはっはっ。たまらん! たまらんぞ! この気分は! はっはっはっは」


 アルトゥールは、黒山羊のようなバフォメットの攻撃を受け続けていた。

地面に叩きつけられ、振り下ろされるオノを両腕で防御するが、オノはスーツに食い込み、そのたびに全身の骨がきしみ内臓が揺れる。


エルフのシェスティンが、風の精霊をつかって攻撃される間際に、アルトゥールのまわりに、空気の壁をつくっているが、それは、簡単に突き抜けアルトゥールの体に叩き込まれ、徐々にアルトゥールの動きが鈍くなってきていた。


 「ヴァインツィアールよ! なんだ。その無様な格好は、この女を助けに来たんじゃないないのか?」


 そういいながら、カーマインは、ソフィアの体を弄んでいた。


 「ソフィア!!!」


 地面に横たわるアルトゥールは、ソフィアのほうに腕を伸ばしながら叫んだ。

気力を絞って、立ち上がろうとしたが、バフォメットが活きよいよく背中を踏みつけて地面にめり込む。




 エドは、シュティーナと打ち合いを続けていた。

常に、シュティーナが繰り出す打ち込みに対して、受け止めて流すを繰り返す。


 (やはり、いつもの剣の鋭さがない。 こんななまくらな打ち込みを教えた覚えはない。眼光すら消えて生気を感じない。一番気になるのは、あのティアラだ。シュティーナはティアラをつけるはずが、ならば!)


 エドは、シュティーナの斬撃の一瞬の空きをみつけ、剣を大きく横に振りかぶると、一切の乱れのない横一線に剣が振り抜かれティアラが吹き飛び上下に切れ地面に落ちた。

同時に、シュティーナも崩れ落ちそうになりエドが抱きかかえた。



 カーマインが、ソフィアを抱きかかえソフィアの顔に ほほにふれるぐらい近付けた。


 「どーした! どーした! 天下のヴァインツィアールが! ヴァインツィアールの名が泣く~ぞ~。きゃっはっは。女一人助けられないで、惨めじゃないかヴァインツィアール」


 カーマインは、長い舌を伸ばすとソフィアの顔に近付いる。


 「やめろ!!」


 ソフィアの眼光のない瞳から、うっすらと涙が流れた。

カーマインは、さらにソフィアの唇に舌を伸ばして行く。


 アルトゥールは、最後の力を全身に張り巡らせバフォメットの押し付ける足を跳ねどけるとソフィアに手を伸ばし叫びながら駆け寄って行く。


 「ヴァインツィアール殿!! ティアラだ! ティアラで操られている! ティアラをどけるんだ!」


 さらにアルトゥールは、全身に力をいれスーツが膨れ上がり、地面を割りながら速度をあげ、腕に力を込めるとカーマインの顔面に拳を叩き込んだ。

腕のスーツ部分は極限に膨らみ殴られたカーマインのアゴはずれ、前髪をなびかせながら大聖堂の壁まで吹っ飛んで行った。


 アルトゥールは、ティアラを取り握りつぶした。

崩れ落ちるソフィアの腰に手を添えて支えた。

ソフィアに眼光が戻ると、アルトゥールの首に腕を巻き付けると強く抱きしまえた。


 「また、助けられちゃいましたね」


 ソフィアは、涙をこぼしながら、精一杯の絵笑顔を作っていた。


 「君のためなら、何度でも助けてみせるよ」


 ソフィアは、溢れんばかりの涙を流しアルトゥールの胸で泣いた。

アルトゥールは、ソフィアを力強く抱きしめた。


 「おいおい、中は大荒れだな。おれたちにも遊ばせろや」


 大聖堂の入り口からは、大型のオーク、コボルトがぞろぞろと入って来る。

外は、大聖堂を囲む様に、数え切れないほどの目が暗闇に明るくするほど見えた。


 「まずいぞ、まずすぎるぞ! ヴァインツィアール殿すぐに撤退しないとやばい」


 「なにをしている! ヴァインツィアールとソフィアを取り押さえろ! 後は、どうなっても構わん!」


 カーマインが、ズレたアゴで聞き取りにくい声で叫んだ。

視線がソフィアに注がれた。

バフォメット、ミノタウロスは、大きな翼を広げると飛び上がり、オークたちは大聖堂のテーブルや椅子を吹き飛ばしながら走り込んで来る。


  「大丈夫、必ず助けてみせる」

 

 アルトゥールは、ソフィアを抱きしめ優しく言った。


 その直後、大聖堂内では、爆風が飛び交い衝撃と煙、風圧が凄まじく起こり周りが見えなくなった。




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