第23話 王都Ⅱ 中


 いくつかの小高い山を超えると王都が見えてきた。

町を取り囲むように高い塀で囲われ王都という風格を醸し出していた。


 「おかしいですわね。物流の要所でもある王都の城門がすべて閉められています。こういうことは、今まで一度もなかったのですが・・・・・・」


 「王女殿下がお帰りになられたぞ! 城門を開けろ!!」


 兵士が駆け寄って来る。


 「どういうことですか? 城門を締め切るなんて。誰の指示ですか?」


 「王女殿下、国王様が緊急でお呼びになられています。すぐ、こちらの馬車へ」


 「お父上が? 承知いたしました。ヴァインツィアール卿、また、後でお会いいたしましょう」

 

 ソフィアは、兵士の前なので口調を変えて、馬車に乗り込んで行った。



 「では、お二人はお屋敷に一度おかえり頂いた後は、祝賀会がございますので、兵士がご案内にまいります。」


 

 アルトゥールは、屋敷に戻るとボロボロになった服を着替えた。

ケロベロスの補給パックを交換すると、嬉しそうに体を動かす。


 「まだ、おとなしくしとくんだぞ」


 ケロベロスは、ランプをチカチカさせて悲しそうにしている。


 「ご主人さま、どうどう? にあう~? えへ」


 シェスティンは、髪の毛をアップにまとめて町で買った服にきがえて、くるくる回りながら見せつセクシーポーズを色々つけていた。


 入り口から、兵士が案内に来たので会場へ移動し祝賀会場に入ると、まだ、疎らだが貴族風の参列者がきていた。


 「ところで何の祝賀会なんだ?」


 「ご主人さま、見てみてこれ美味しいそう!」


 「バイキングか、うまそうだな」


 執事が近づいてきて皿とグラスを渡してくれた。


 「おいしい! このウィンナーすごくおいしいですよ。えへへ」


 アルトゥールは、ウィンドウがゆっくりと警告みたいなのを点滅していることに気がついた」


 (なんだろ? 激しく点滅していないから、それほど危険じゃないってことか? お酒のアルコールにでも反応しているのか? バグっていてなんの警告かわからないなぁ。まぁ 大丈夫だろう)


 「ご主人さま・・・・・・」


 シェスティンは、皿を落とすと倒れ込んだ。


 「シェス! 大丈夫か・・・・・・」


 アルトゥールも、急に視界が暗くなり意識がなくなった。





 いく時間が過ぎたであろうか。

アルトゥールは、激しく唸る乾いた音で目を覚ました。


 (なんだ・・・・・・どうしているんだ、おれは・・・・・・腕が・・・・・・)


 腕は太い鎖が巻き付けられ、両足にも鎖が巻きつけられ重りに繋がれていた。

部屋は、薄暗くても松明は十分にあり照らされ、壁は頑丈な石で囲われて入り口には鉄板の扉で塞がれていた。


天井からは、しずくが垂れてアルトゥールの顔にひんやりと当たり、常にジメジメしている。

壁と鉄扉のせいで、さらに圧迫感がましている感じだった。


 目の前には、小柄なオーク・・・・・・小柄で太って目出し帽のようなマスクをかぶった人間が上半身裸になり汗だくで必用にムチを振っていた。


 ムチは、皮であつらえてあり振り下ろされる。

ムチは、しなる音と風を切る音が激しくうなりをあげ何度も何度もアルトゥールの体に打ち付けられていた。

打ち付けられるたびに乾いた音が鳴り響く。


 (ここは、地下かぁ。この状態だと拷問室って感じか。マップデータもケロベロスもいないからよくわからないなぁ。光点が結構あるな)


 アルトゥールは、ウィンドウを広げながら情報に目を通していた。


 「どうだ。ムチの味は、ぜぇぜぇ、おばえ、ムチがぎがねーのか? ぜぇぜぇ その黒いガラダはなんだ? 呪いが? 伝説の竜のガラダなのか?」


 マッスルスーツは脱がされていておらず、ムチの衝撃は傘に雨があたるような感覚でノーダメージだった。


 「早くおめぇをおわらぜて、あの白く美しいエルフのガダラを・・・・・・ぶひゃひゃひゃ・・・・・・柔らかそうなガラダを・・・・・・ハァハァ」


 アルトゥールは、足に鎖を絡めると大きく振り抜いた。

鎖の先についている重りが軽々と飛んでいき、拷問官の顔面に直撃し倒れた。

腕に力を込め引っ張ると、鎖は粘土のように伸び柔らかく切れ落ちた。


 (とりあえず、シェスを探そう。どこかに囚われているはずだ)



 「まぁ 通常なら、拷問官に鍵をもっている・・・・・・男の体を触りまくる趣味はないんだが・・・・・・おっ、あった!あった!」


 拷問官の腰から鍵を見つけ出し奪い取った。

 (まぁ、鍵がなくても力押しでいけるだろうけど)


 部屋を見渡すと、乱雑に服と拳銃、サイレンサー、ナイフなどが置いてあった。

(祝賀会だから、最小限の装備しかしてこなかったなぁ)


 鉄扉にいくつかの鍵を差し込むと、扉に解除さらた音が響いた。


 (扉の外には、人気はなさそうだ)


 そっと扉を開け薄暗い通路にでた。


 (近くに光点が一つあるな。シェスか?)


 いくつかの入り組んだ通路を曲がり、監守が近づいて来たらCQCで可能な限り音を立てず倒して行く。

何度か通路を曲がったところで光点が近づいて来た。

急いで鉄の扉の鍵を外し入った。


 「シェス! 助けに来たぞ!!!」








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